スマホ用液晶市場でも中国企業が猛威、天馬がシェア2位に浮上

日本企業はパネルを供給し続けられるのか

天馬微電子がモバイルワールドコングレス2018に展示した6.18インチLTPS

 これまで日本企業が強いといわれていた中小型液晶パネル市場でも、中国企業の躍進が顕著になってきた。調査会社の英IHS Markitの調べによると、2017年のスマートフォン用LTPS(低温ポリシリコン)TFT液晶パネルの出荷シェアで、中国の天馬微電子が第2位に浮上した。前年からシェアを6ポイント上げて17%を獲得し、シェアを4ポイント下げて16%だった韓国のLGディスプレー、同じく1ポイント下げて13%だったシャープを抜き去った。

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 シェア首位は26%だったジャパンディスプレイが守ったものの、主要顧客であるアップルがiPhoneに有機ELを採用したことなどから、16年から10ポイントもシェアを下げた。

シェア上昇の要因は「中国スマホ向け」

 1983年に設立された天馬微電子は中小型液晶パネルの専業メーカーで、LTPSの製造に参入したのは、11年に建設した厦門工場が最初である。この厦門工場は、LTPS液晶の量産に第5.5世代(5.5G)と呼ばれる1300×1500mmのマザーガラスを用いている。これに続き、14年には厦門に6G(1500×1850mm)マザーガラスを採用したLTPS新工場も立ち上げ、供給能力を一気に増やした。

 立ち上げ当初は歩留まりの確保に苦しみ、利益を生むまでにかなりの時間を要したが、その苦労が17年にようやく花開いたといえる。IHS Markitによると、17年のシェア向上は、ファーウェイやシャオミーといった中国のスマホブランド向けに出荷を拡大できたことによる。

天馬の17年は2.5倍の増益に

 先ごろ天馬微電子が発表した17年の業績は、売上高が前年比31%増の140.1億元、営業利益は同2.5倍の8.84億元、純利益は同42%増の8.07億元と、大幅な増収増益だった。厦門5.5G工場で高い歩留まりを維持し、厦門6G工場の寄与によって、スマホ用LTPSの出荷が大きく伸びた。

 これに続き、天馬はLTPSをバックプレーン(背面駆動基板)に用いる有機ELパネルの量産立ち上げにも力を入れている。上海に保有している5.5G有機EL工場では解像度フルHDのパネル量産を開始し、オンセルタッチ技術の統合を徐々に始めた。

 さらに、湖北省武漢に6Gの有機EL工場を立ち上げ、17年4月にはガラスベースのリジッドパネル、およびフィルム基板ベースで折り曲げが可能なフレキシブルパネルともに5.5インチでの点灯に成功。まだ目標の歩留まりには届いていないようだが、フレキシブルパネルの量産立ち上げを鋭意推進中だ。

 これに伴い、17年の設備投資額は73.5億元と前年比で2倍以上に増加した(16年実績は30.3億元)。

台湾企業もシェア向上へ虎視眈々

 IHS Markitによると、17年の携帯電話用パネルの総出荷数(TFT液晶と有機ELを含む)は前年比3%増の20.1億枚、このうちLTPS液晶の出荷数は同21%増の6.2億枚に増加した。話題はアップルがiPhone Xに採用した有機ELに集まっているが、スマホ用の主流はまだまだLTPSを中心とする液晶である。

 天馬微電子に限らず、ここ1~2年でスマホ用LTPSの量産立ち上げが相次いている。台湾のイノラックスは16年半ばに高雄の路竹で、AUOは17年7~9月期に中国・昆山で、それぞれLTPS 6G工場を稼働させた。イノラックスは同工場を共同運営していた親会社の鴻海精密工業(フォックスコン)から300億台湾ドルで完全に買い取ることを決め、これにより「LTPS生産能力の世界シェアを2%から8%に上昇させた」と述べている。

 スマホ市場で天馬をはじめとする中国勢や台湾勢がさらにシェアを伸ばしてくるとなると、そもそも日本企業のシェアが低いスマホ向けに、日本の液晶メーカーがパネルを供給し続けるというビジネスモデル自体に疑問符がついてくる。今後を占う意味でも、18年のスマホ市場がどう動くのかを注意深く見守っていく必要があるだろう。

(津村明宏)

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