銀行が破綻しても庶民の銀行預金は大丈夫

預金保険機構の保険料率引き下げの是非とは

銀行の赤字や再編が話題になっても、庶民の預金は心配ない、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

地域金融機関はゼロ成長とマイナス金利で収益が厳しい

最近、銀行(信用金庫等を含む、以下同様)が苦しいという話を耳にする機会が増えました。ゼロ金利やマイナス金利やゼロ成長で、銀行の本業である「低い金利で預金を集めて高い金利で貸出を行って、金利差(利ざやと呼びます)を稼ぐ」というビジネスがやりにくくなっているからです。

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そのため、銀行は投資信託や保険の販売などで手数料を稼ごうと努力していますが、なかなか本業の不振を補うのは大変で、苦労している銀行も多いのです。

そこで、金融庁や日銀は、地域金融機関の経営に警鐘を鳴らすレポートを次々と発表しています。もちろん、直ちに倒産しそうな金融機関が多いというわけではありませんが、そうした可能性も頭の片隅に入れておこう、といった内容となっています。

そうなると、読者各位も「自分の預金は大丈夫だろうか」と心配になると思います。でも、大丈夫です。預金保険制度というものがあり、庶民の普通の銀行預金は守られているのです。

庶民の預金は銀行が倒産しても大丈夫(初心者向け解説)

銀行が破綻しそうだ、というニュースを聞いて、皆が銀行に預金を引き出しに行き、銀行の金庫が空になり、本当に銀行が破綻してしまうことがあります。銀行の取り付け騒ぎと呼びます。そうなると、本当に危ない銀行はもちろん、本当は危なくない銀行も誤った噂で倒産してしまうかも知れません。

そうした事態を避けるため、様々な工夫や対策が講じられていますが、その一つが預金保険制度です。

「自分の預金している銀行が危ないという噂を聞いても、庶民は焦って預金を引き出す必要はありません。もし本当に銀行が破綻しても、預金保険制度があるので、皆さんの預金は預金保険機構が代わりに払い戻します。落ち着いてください」といって庶民を落ち着かせるための制度です。

銀行に預けてある預金は、一人あたり元本1000万円までと、その利子が保証されています。支店が違っても合計されてしまいますので、1000万円以上の預金がある場合は、複数の銀行に分けて預ければ安心です。

ただし、外貨預金などは保護の対象ではありませんし、投資信託や保険などは銀行で購入したものであっても損失が発生する場合がありますので、あくまでも普通の銀行預金を保護する制度であるということをしっかり認識してください。

「危ない銀行ほど預金保険料が高い」わけではない(チョット専門的です)

銀行が破綻した際に庶民に預金を払い戻してくれるのは、預金保険機構という会社です。庶民から預金を預かっている銀行が預金保険機構の顧客となっていて、「保険料を払いますから、私が倒産したら、私の顧客である預金者に預金を払い戻してあげてください」と頼まれているわけです。

頼まれた同社は、銀行から保険料を集めておき、万が一の時に庶民に支払う資金を貯めておきます。保険料は、預金残高の何%という形で決められています。

銀行の中には、非常に慎重に安全な貸出先だけに融資している銀行もあります。あまり高い金利は得られず、あまり儲からない、ローリスク・ローリターンビジネスをしているわけです。一方で、少しくらいリスクがあっても果敢に貸出を行って高い貸出金利を得ている、ハイリスク・ハイリターンビジネスをしている銀行もあります。

前者としては、「安全運転をしている我々と、危険運転をしている彼らの預金保険料が同じなのはケシカラン」という気持ちでしょうが、預金保険料は全行一律なのです。

それは、銀行のリスクに応じて預金保険料率を違えるとなると、後者の銀行の預金者が「あの銀行は預金保険料が高い。ということは、リスキーなビジネスをしているのだろう。そんな銀行に預金しておくのはやめよう」と考えて逃げてしまうからです。

そうなると、ハイリスク・ハイリターンのビジネスを行っている銀行が次々と倒産してしまうかも知れませんから、そうした事態は避けよう、というわけですね。

預金保険料が引き下げられることに(チョット専門的です)

上記の保険料率は、バブル崩壊後の金融危機の時に大幅に引き上げられ、そのまま高水準で推移してきましたので、預金保険機構には3兆円強の資金が溜まっています。そこで、平成25年度から徐々に保険料率が下がってきています。

これには賛否両論ありそうです。銀行がマイナス金利で苦しいのだから、預金保険料率を引き下げて銀行の決算を下支えしてあげよう、という親心が垣間見えるのですが、今後破綻する銀行が増えるかもしれないならば、今のうちに多額の預金保険料を徴収しておいて、将来の肩代わり損に備えるべきだ、という意見も当然あり得るでしょう。

将来、大規模な銀行破綻が続発して預金保険機構の資金が不足すれば、財政資金を投入せざるを得ない可能性も出てきます。これには二つの問題があります。

第一は、銀行システムを支えるために国民の血税を用いることが適切か、ということです。これについては、金融は経済の血液であるから、心臓を支えるためには他の臓器からの支援は必要だ、ということになるのでしょうが、そうは言っても銀行自身が普段からしっかり預金保険料を支払って預金保険機構の資金量を増やしておくことは必要でしょう。

第二の問題は、政府の支援が必要となった時に政治が安定していないと、財政資金の投入ができないリスクがある、ということです。たとえば、衆議院と参議院で与野党が異なる「ねじれ国会」で支援法案が通らなかったら、金融危機が収束せずに本当に深刻な事態となりかねません。そんなリスクを避けるためなら、預金保険機構に十分な資金を貯めておく必要がありそうです。

本稿は、以上ですが、地銀の苦境については拙稿『もはや崖っぷち? ゼロ成長だと縮んでしまう地銀ビジネスの宿命』をご参照ください。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義


1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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