そのため、ご遺族は「遺品をどう整理し、処分したいか」について、様々な要望を持つことになります。

  • 故人の思いがこもった品物は、単なるごみとして処理せず供養をしてほしい
  • パソコンやスマートフォンの個人情報が漏洩しないような形で処分してほしい
  • もしも高価なものが見つかったら、捨てるのではなくリサイクル店などに買い取ってもらいたい
  • 大量に出る不用物を、ごみとして処分してほしい
  • 家電リサイクル法の対象となる製品を、適切に処分してほしい

ご要望の中には、誰でも引き受けられる業務と、資格や免許がなければ引き受けてはならない業務、深い知識や技術がなければ対応が難しい業務があります。

たとえば、遺品に含まれていた宝石や貴金属などの買取をはじめとする、古物商許可が必要な業務もあります。不用なものをごみとして処分して欲しいというご要望に応えるには、一般廃棄物収集運搬業の許可を受けるか、許可を受けている業者との連携をすることが必要です。

さらに、悪臭が立ち込めている現場や、虫がわいている現場などもありますので、特殊清掃の知識や技術が必要となる場合もあります。このように、遺品整理士資格を取得しただけでは、ビジネスを成立させるのが難しいことが、ご理解いただけるでしょう。

信頼できる遺品整理業者の見分け方

遺品整理をプロに依頼したいと考える場合は、次のような点を確認し、信頼できる業者かどうかを見極めましょう。

1.遺品整理に必要となる他の業者に依頼する作業内容と依頼先を具体的に説明してくれるか

廃棄することを決めた不用物の収集運搬を依頼する業者や、デジタル遺品の処理を依頼する業者、特殊清掃業者などに作業を依頼するかどうか、なぜ自社で作業をせず他の業者に依頼する必要があるのか、などをわかりやすく説明してくれるかどうか確認しましょう。

2.契約を急がせないか

遺品整理を依頼するご遺族は、死別の哀しみを抱え、普段とは違う心身の状態におかれています。そのような状態のご遺族に、むやみに契約を急がせる業者よりも、余裕を与えてくれる業者のほうが安心です。

3.遺品は単なる「ごみ」ではないと認識しているかどうか

ご遺族が、自らの手で遺品を整理できない理由の1つに、心理面での問題があります。もしも遺品を「ごみであり、捨ててもいいもの」とご遺族が思っているなら、ごみ袋に遺品を片っ端から放り込んで、家庭ごみとして出しても構わないはずです。

そのような扱いをせず、遺品整理業者の手を借りようとするご遺族の心に寄り添うことができる業者かどうかが、大きなポイントです。

まとめ

遺品整理は「もの」と「心」の両面にかかわる業務です。遺品整理業務を適正に行うだけでなく、ご遺族がグリーフケアをはじめどのようなサポートを必要としているかを理解し、さまざまな業種と連携してサービスを提供できる遺品整理業者が増えることや、他業種から遺品整理についての知識と理解のある人が生まれることも、今後ますます重要になるでしょう。

河野 陽炎