お子さんの小学校入学を機に、家を持とう、マンションを買おうと考えるご家庭も少なくないと思います。親が子どもに残してやれる最大のプレゼントは教育と考えると、お子さんの進学や将来的な設計も考えて場所選びをしたいものですね。今回はそんなお父さん、お母さんのために、家さがしのヒントをご紹介しましょう。

区域外就学と越境のちがい

子どもはできれば荒れていない、環境の良い小学校に通わせたいと思うのが親心というもの。昔はそんな親心から、「越境させて良い小学校に通わせる」という方法もあったようです。

越境というのは、学区外に住んでいる家庭が学区内の親戚の家などに住所を移して住んでいる形を取り、通学資格を得るという方法です。これははっきり言って不正です。もし、教育委員会や学校に越境がわかってしまえば、通学許可を取り消され転校しなければならなくなります。

文部科学省も認めている方法として、区域外就学という制度があります。これは、「一定の手続を経て、関係市町村教育委員会間の協議が整えば、他の市町村等の学校にも就学することができる」というものです。

たとえば、「両親二人ともA区の職場に働いており、災害の際など緊急の際に親の近くにいたほうが安心なので、子どももA区の小学校に通わせたい」などと申請して、A区とB区が話し合い許可が出るという方法です。

入学の優先順位としては、まず学区内に住んでいる家庭が優先となりますから、希望の小学校に空きがあれば可能ということで、元々人気の小学校だったりすると申請しても通らない場合が多いです。

都心回帰で夜間人口が増えている千代田区、中央区、そしてハイレベルな教育環境の文京区などにある窪町小学校などの名門と言われる公立小学校では、近隣の区からこの区域外就学で通ってきている子どもが多くいました。

しかし、今は希望する区の学区内に家さがしをして、小学校入学を機に転居してくるご家庭が増えているようで、その分区域外就学は厳しくなってきています。

千代田区、中央区というと新築の何億円とする高級マンションばかりと思いがちですが、積極的に家さがしをしてみると、少し頑張って調べれば手が届く中古の良質なマンションを見つけることができます。

そこまでして通わせたいと思わせる都心の名門公立小学校の魅力、それはいったいなんなのでしょうか?

名門公立小学校のチカラ

1980年代に都立高校が学校群制度になり、人気の高校に優秀な生徒が集まらないような仕組みに変えられるまでは、東大合格者数は日比谷、西、戸山といった都立高校が上位を占めていました。

戦後、学校制度が変わってからその頃まで、東京でエリートコースといえば、番町小→麹町中→日比谷高→東大と言われていました。

番町小も麹町中も千代田区の公立の学校なのですが、この時既に名門というブランドイメージが出来上がっており、皆さんのご両親世代で東京で育った方なら、「番町、麹町、日比谷、東大」をよくご存じだと思います。

学校群制度になり、都立日比谷も西も戸山も東大合格者数の上位から姿を消しました。かわって私立の中高一貫校、いわゆる御三家(開成、武蔵、麻布)、などから東大合格者を輩出するようになり、中学受験の人気が高まりました。

しかしその中でも、番町小をはじめとする千代田区や中央区、文京区の公立小学校は秘かに人気を集めています。その理由はなんでしょう?噂も含めて、以下のような話が良く聞かれます。

  • 設備や環境が良く、先生も良く、落ち着いて勉強できる。
  • 小規模な学校が多いから、先生の目がよく届く。
  • 同じような家庭環境の子が多く、教育方針が近いので安心して付き合える。
  • 大手町の官庁の官舎が多い学区なので、教育熱心な家庭が多い。
  • 都心で塾にも通いやすく、どの方面にも通学しやすいので、私立の中学受験をする子が多い。
  • 学校も中学受験に理解があり、受験で休むことに先生が嫌な顔をしたりしない。かえって応援してくれる。
  • 万が一、中学受験に失敗しても、公立中学も評判が良いから不安なく行かせられる。

この噂について、実際に千代田区の小、中学校にお子さんを通わせているお母さんに聞いてみると、

  • 評判の良いベテランの先生が確かに多い。
  • 中学受験に失敗しても、麹町中や神田一橋中に進学して、都立トップ高にリベンジしたという知り合いが結構いる。中学受験に失敗した後のショックは少なくて済むかもしれない。
  • 中学受験する生徒が少ない学校だと、受験で学校を休みづらかったりするけれど、うちの子の小学校は先生も「受験する子は皆頑張れよ」と言ってくれ、受験しない子たちも応援してくれる。
  • 中学受験しない子が教育熱心でないというわけではなく、おじいちゃんもお父さんも番町→麹町→日比谷→東大だったからと同じように進学するという家庭もあり、かえって教育方針がしっかりしていて尊敬を集めていたりする。

と、あながち噂は間違ってはいないようです。

「千代田区だから乱暴な子がいないとか、先生が皆良い先生とは限らない。どこでもある問題は、千代田区でも起きるんだと思う」とも。

そして、「うちの自宅は外神田地区のマンションで神田祭のお膝元なんだけれど、地域の江戸っ子のおじいちゃんやおばあちゃん達がしっかりにらみを利かせてくれているから、あまり悪い子はいない」と、お話してくれました。

ここに入れたら絶対安心とは言えないのはわかっていても、少しでもリスクを避けてやりたいと思うのが親心です。そういう親にとっては、千代田区は魅力的な場所に映りますね。

番外編:千代田区の公立小・中学校

それでは、その千代田区を例にとって公立の小・中学校を見てみましょう。千代田区の中学校は2つ、そして中高一貫校が1つあり、小学校は8つあります。8つあった小学校が3つの中学・中高一貫校になるということは、かなりの数が中学受験で抜けていることがわかります。

中学校

2つの中学校は麹町中学校と神田一橋中学校です。神田一橋中学校は統廃合で新しい名前になりましたが、一橋中、今川中、錬成中という3つの中学校が元になっており、麹町中と同じく歴史のある中学校です。

中学校は通学区域を設けず、「学びたい学校・学ばせたい学校」を選択できる学校選択制度を実施していますので、千代田区のどこかに住めば選択できるということです。

ただ、最近校舎を建て替えた麹町中学校に人気が集まっていて、希望しても行けない場合があるのが現状のようです。

中等教育学校

公立の中高一貫校が設立されはじめた2000年代半ば、千代田区ではもともとあった都立九段高校と区立九段中学を一緒にして千代田区立九段中等教育学校を開校しました。

公立中高一貫校は公立でありながら私立と同じように6年間一貫して教育をし、部活や行事活動に励みながら大学受験に向けての体制を整えていけるということで、どこも大変な人気です。

その中で、九段中等教育学校は千代田区立ということで、入学者の半分を都内全域から、そして残りの半分は区内から募集しているのです。

そのため受検倍率は都内枠9.8倍に対して、区内枠は1.8倍と大変入りやすく、それも千代田区に小学校で転居する大きなメリットかもしれませんね。

小学校

小学校は次の8つの小学校です。学校名と学区の住所を一部だけご紹介します。

  • 麹町小学校 霞が関1~3、永田町1,2、平河町1,2、麹町1~4、一番町など
  • 九段小学校 三番町、四番町(1・2・3・8・11)、九段南2~4、九段北3.4
  • 番町小学校 麹町5,6、紀尾井町、二番町の一部、四番町の一部など
  • 富士見小学校 北の丸公園、九段南1、九段北1,2、富士見1,2など
  • お茶の水小学校 一ツ橋1,2、神田神保町1~3、猿楽町1,2、神田駿河台の一部など
  • 千代田小学校  神田美土代町、内神田1~3、神田司町の一部、神田須田町の一部など
  • 昌平小学校 外神田、神田淡路町、神田小川町の一部など
  • 和泉小学校 神田和泉町、岩本町、神田佐久間町など

※学区の住所は一部です。詳細は千代田区教育委員会のHPでご確認ください。

まとめ

いかがでしたか?千代田区を例にとってご紹介しましたが、都心の名門公立小学校の魅力、ご理解いただけましたか?中学受験もしやすく、またそのまま上の公立中学、中等教育学校へ進学できることも大きな魅力であり、小学校で千代田区に転居しようというご家庭が増えているのも納得な気がします。

都立トップ高の進学実績が回復しつつありますから、あえて中学受験をせずに、環境の良い公立小→中と進学して都立トップ高へ、というコースも人気が出そうです。これからお子さんの教育を考えつつ家さがしをしようとお考えのご家庭は、ぜひ都心の名門公立小学校のあるエリアも視野に入れつつ、良い物件をさがしていただけたらと思います。

マンションジャーナル