1-3月期の米企業決算が本格的にスタートしています。昨年末に成立した減税法案の恩恵もあり米企業業績は20%超の増益となる見通しで、株価も大きく上昇することが期待されています。ただし、マーケットではシリア情勢、ロシア疑惑、米中貿易戦争の3つのリスクが警戒されており、好決算でも冴えない株価となる恐れがありそうです。

1-3月期は20%超の増益へ、減税効果で軒並み上方修正に

米調査会社ファクトセットによると、S&P500構成銘柄の10-12月期の利益は4月6日現在で前年同月比+17.1%となる見通しです。

ただ、予想は低めに見積もられる傾向にあり、過去5年を平均してみると実際の業績は当該期末の見通しよりも3.0%ほど高くなっています。たとえば、10-12月期の12月末の見通しは+11.0%でしたが、最終的には+15.0%へと上振れています。3月末の見通しは+17.2%でしたので1-3月期の最終的な利益は+20.2%(=17.2%+3.0%)と+20%超が期待できそうです。

1-3月期の決算は相次いで上方修正されているという点でやや異例です。通常、決算期に入ると業績予想は下方修正される傾向にあり、たとえば、S&P500構成銘柄の1株当たりの純利益(EPS)は過去5年平均で3.9%、10年では5.5%、15年では4.1%、そろぞれ下方修正されています。

ところが、今回は12月末から3月末にかけて5.4%上方修正されています。昨年末に成立した減税法案の影響で企業業績が見直されたことが異例の上方修正につながったと考えられています。

期待通りの数字となれば、増益は7四半期連続となり、2四半期連続で2桁増益を達成することになります。また、2010年7-9月期(34.0%)以来の高い伸びとなります。

セクター別ではエネルギーがけん引、原油高が追い風

セクター別では11セクターすべてで増益が見込まれており、うち7セクターで2桁増益となる見通しです。

エネルギーが+78.1%と増益率で他を大きく引き離しています。素材(+40.7%)、情報技術(+22.0%)、金融(+19.8%)が続いており、この4業種が平均(+17.1%)を上回る見通しです。

2018年1-3月期の原油価格は62.89ドル(1バレル当たり、以下同)と前年同期の51.78ドルを21.5%上回ったことがエネルギー企業の増益に大きく寄与したようです。

ただ、平均を下回るとはいえ、通信(+16.6%)、資本財(+13.1%)、公益(11.9%)の3業種でも2桁増益が見込まれています。また、ヘルスケア(+9.7%)、生活必需品(+8.0%)、不動産(+6.8%)、一般消費財(6.2%)と続いており、最終的にはすべての業種で2桁増益に届く可能性もありそうです。

1年後の予想株価は16.2%上昇、割高感は否めず下振れを警戒か

1年後のS&P500の予想株価は3094.05と、5日の終値2662.84から16.2%上昇が見込まれています。

気になるのは予想の正確性ですが、過去5年の予想値と1年後の株価を比べると予想値が実際の株価を0.2%下回っています。わずかに過小評価していますが、ここ5年に限ればかなり正確な予想だったといえそうです。

ただし、過去10年では11.6%、過去15年では10.5%、それぞれ過大評価していますので、長期的にみると予想値はやや割り引いて考えるほうがよいのかもしれません。

また、S&P500の12カ月先予想株価収益率(PER)は16.5と、5年平均の16.1をやや上回っています。また、10年平均の14.3を大きく上回っており、割高感があることは否めないところです。

セクター別ではヘルスケア(+18.8)、情報技術(+18.2%)、エネルギー(+18.0)が上位3業種となっています。一方、公益は+4.8%と最も予想株価の値上がり率が小さくなっています。

好決算に潜む3つの落とし穴

2017年10-12月期決算は+15.0%の増益となりましたが、1-3月のS&P500は-1.2%と2015年7-9月期以来のマイナスとなりました。

フェイスブックの個人情報流出問題や自動運転車の実験中の死亡事故で、ハイテク企業への規制強化の可能性が意識されたことも影響したと考えられますが、現在のマーケットはシリア情勢、モラー特別検察官解任、米中貿易戦争の3つの火種を抱えていることも株価を抑制しているようです。

トランプ大統領は13日、シリアの化学兵器施設への攻撃開始を明らかにしました。同大統領は米軍が提案している以上の大規模な報復措置を求めているほか、シリアのみではなく、その後ろ盾であるロシアとイランにも制裁を加えることを検討している模様です。

一方でロシアとイランは今回の空爆を激しく非難しています。

これとは別に、9日にはイスラエルとみられるシリア空軍基地への攻撃でアサド政権を支援するイラン兵が死亡し、シリアを舞台に米国の同盟国であるイスラエルとイランとの間での緊張感も高まっています。

今回の空爆でシリアのアサド政権が揺らぐとは考えづらい中、米・イスラエルとロシア・イラン・シリアとの間の対立が深まっており、シリア情勢は内戦の終結に向かうどころかますます混迷が深まっているようです。

また、米国内ではトランプ氏がロシア疑惑を捜査しているモラー特別検察官を解任するのではないかとの観測が強まっています。

9日には自身の顧問弁護であるマイケル・コーエン氏の事務所が家宅捜索され、トランプ氏と性的関係を持ったと主張している元アダルト女優にコーエン氏が支払ったとされる口止め料に関する記録を押収したようです。

トランプ氏はモラー氏の捜査がロシアの干渉疑惑からトランプ氏の私生活に及んでいることに激怒しており、モラー特別検察官の解任を検討中と伝えられています。加えて、セッションズ司法長官とモラー氏を特別検察官に任命したローゼンスタイン副司法長官の双方を解任するとの観測も広まっています。

コーエン氏がトランプ大統領のために行った仕事や、ロシアの買い手が絡んだ不動産取引などの活動においても、税金詐欺や租税回避、資金洗浄など犯罪のパターンが見られるかどうかも調査しているようです。

3月にはトランプ氏の一族が経営するトランプ・オーガニゼーションにも捜査が及んでおり、トランプ包囲網が狭まっていることにトランプ氏が危機感を募らせていることを匂わせています。

3つ目の米中貿易戦争では、報復関税の落としどころに注目が集まっています。双方が報復関税を発表していますが、まだ実施を決定したわけではありません。米中ともに本音は報復合戦を避けたいところですので、対話による解決の道の残されています。

とはいえ、対中強硬路線は11月の中間選挙へ向けてのプロパガンダとの見方もありますので、トランプ政権が簡単に譲歩するとも考えづらく、交渉の行方が注目されています。

このように、シリア情勢、ロシア疑惑、米中貿易戦争といった政治的なリスクが警戒されており、好決算にもかかわらず株式市場が反応薄となる恐れもありそうです。

LIMO編集部