人生でもっとも高いお買い物と言われる「住宅購入」。その中でも特に都心部では中古マンションの人気が急上昇中です。

しかし、ただでさえ高い買い物な上に、個人同士が売買取引をする「中古マンション」の取引はトラブルが怖いところ。今回は、中古マンション取引のプロが、書籍などではなかなかわからない「現場」で実際に起こりがちなトラブルと対処法をまとめて紹介します!

そして、それと同時に中古マンションを購入するなら知っておきたい注意点についてしっかりと押さえておけば、おのずと満足のいく中古マンション購入ができると思います。

中古マンション購入の注意点

最初に、中古マンション購入の流れについて押さえておきましょう。

中古マンションの購入はいくつかのステップに分かれます。

1:内覧(見学)

気になったマンションを実際に見に行くステップです。ここでは、内覧時に気をつけたいポイントをご紹介します。

2:購入申し込み、事前審査

気に入った物件に出会ったら、ついに購入の申し込みをします。ここから急にドタバタとしてきますので、必ず事前に購入申込書で確認するポイントを押さえましょう。

中古マンションの値引き交渉は、購入申込書を売主に提出して行います。

少しでもお得に中古マンションを購入できるよう、この点は気をつけておきましょう。

3:売買契約

物件の申し込みをして、売主と価格やスケジュールの合意が取れるといよいよ売買契約に進みます。

4:ローンの本審査

売買契約締結後、ローンの本審査に進みます。期日が決まってますので、素早く正確な動きが求められます。

5:決済

審査手続きが終わると、物件代金を売主に支払い「決済」が待っています。大きなお金が動くので、最後まで気が抜けません。

6:引き渡し

取引も終わり、お部屋を自由に使えるようになっても、まだ気が抜けません。最後のチェックを行いましょう。

7:その他

購入ステップ以外に、絶対に注意したいNGポイントをご紹介します。

1:内覧(見学)

1-1:不動産業界の闇「囲い込み」に騙されてはいけない

Aの不動産屋に内覧の申し込みをしたが、「すでに成約済みです」と断られた。一方、Bの不動産屋に同じ物件の問い合わせをしたところ「すぐにご紹介できます。」と言われた。

これ、実はAの不動産屋が被害者なのです。

売却物件を預かっているB不動産屋が、他の不動産屋に自分達の物件を紹介するのを「嘘をついて拒む」ことを囲い込みと言います。

これは、Bの不動産屋が自分達でお客さんを連れてきた方が、買主からも売主からも仲介手数料が貰えて「一度で二度おいしい」からです。

こんな時に下手に「囲い込みをするな!」と真っ向から言ってもトラブルの元なので避けましょう。

1-2:内覧時に絶対にしてはいけない2つのタブー

① 自分勝手なスケジュール計画はNG!

内覧のスケジュールを立てる際、誰だって自分の都合の良いスケジュールで組みたいと思います。美容室の予約や、飲食店の予約、お店に予約を入れる際は誰でも自分のスケジュールが最優先ですよね。もちろん、お店もあなたのスケジュールに合わせようと必死になります。また、当日急な都合によるドタキャン、遅刻はよくあること。

で・す・が!中古マンションの内覧予約の時は少し事情が違います。

確かに予約をする窓口は不動産業者ですが、物件の持ち主は個人の方です。

内覧の予約を1つ取るにしても、1.売主、2.売主側の不動産屋さん、3,買主側の不動産屋さん、4.買主のあなた、と4人も登場人物がいます。4人のスケジュールが合って初めて内覧が出来るという非常に手間のかかる仕組みになっています。

その為、必ずしも予約時間通りに内覧が出来る訳ではない上に、ドタキャンや遅刻はご法度です。

もし、ドタキャンや遅刻をしてしまった場合、たくさんの方に迷惑がかかる上に、売主の心象を悪くしてしまいます。

もしも、その物件があなたにとって非常に素敵な物件だったら。。。と考えるとやはり、スケジュールはしっかりと守ることが必須と言えます。

② 売主や売却の担当者に失礼な態度を取らない!

他人に失礼な態度を取らないなんて、一般常識として当たり前のことですね。特に、中古マンションの取引の際はさらに注意をする必要があります。なぜなら、非常に高額な取引の上に、個人と個人の取引だからです。もし、あなたの理想の物件に出会えても、売主に嫌われてしまっては非常に交渉が難しくなります。

私が過去に合った実際の事例をご紹介しますと、、、

  • 内覧の際に、この物件の間取りが気にくわない、汚れている、眺望が悪いなど物件の文句を言う
  • 売主に「いくらで買ったの?」「いくらまでなら安くしてくれるの?」「売却の理由は?」などを直接質問する
  • 売主側の不動産会社に「この物件、本当はいくらだと思う?」などと聞く

などなど、にわかには信じ難いことがありました。

また、悪気がなくとも安易にその場で「少し日当たりが悪いね」などの感想を安易に発言することもおすすめしません。

内覧の感想は、外に出てからゆっくりしましょう!

1-3:内覧時に絶対しておくべき4つのポイント

① 写真撮影を必ず行う!

後になって、物件のことを思い返そうと思っても人間の記憶力はあまりあてになりません。
内覧の際はあまり印象がよくなくても、色々な物件を見てるうちに「あの物件、よく考えたら良かったかも」ということがよくあります。

そんな時の為に、内覧の際は「なるべく多くの写真や動画を撮る」ことを強くおすすめしています。

特に、動画がおすすめです。写真を何枚とっても、写っている範囲が限定的ですので、あとで見ても確認したかった部分が写ってなかったりします。

また、忘れがちなのが「天井」、「眺望」、「玄関」、「収納」などです。

全体の雰囲気を把握する為も、売主の許可を得た上で積極的に撮影をしましょう。

② 設備の内容をよく確認する!

内覧の際は、部屋の間取り、開放感、眺望など大きな視点に目が行きがちです。

いざ家に帰って物件を真剣に検討する際に、「あれ、あそこの設備ってどうなってたっけ?」という自体がよくあります。

ガスコンロはIHか?何口のコンロか?お風呂に広さは?床暖房は付いていたか?エアコンはいつ頃のものか?などなど、細かいことでもつぶさに確認をしてメモを取りましょう。

売主の都合もあるので、必要に応じて何回も内覧をするということが難しいからです。

特に、「造り付けの家具」、「エアコン」、「照明」、「カーテン」などは、引き渡しの際に残していくかどうかなど話題になりやすいですが、記憶が曖昧でなかなか判断に迷うところです。

③必要箇所は必ず採寸する!

後になって「あれ、うちの家具ってあの部屋に入るかな?」ということもよくある話です。前述しましたが、気軽に何度も内覧するというのは現実的ではありません。下記の内容は必ず内覧の際に採寸をしておくことをおすすめします

  • 冷蔵庫を置くスペース
  • 洗濯機を置くスペース
  • 寝室(ベッドを置くスペース)
  • リビング(ソファーやテーブルを置くスペース)
  • カーテンの寸法

これらを採寸して置くと、現場に何度も足を運ぶこともありません。

④売主さんにヒアリングする!

内覧は非常に貴重な機会です。現場の雰囲気を確認したり、保存状態や設備の確認、採寸など内覧しなければ出来ません。さらに重要な要素として「売主」と直接会話が出来る数少ない機会だからです。

不動産屋さんは不動産のプロですが、その物件については売主より詳しい人はいません。売主とお話が出来る機会があれば必ず下記の内容を確認しましょう。

  • 普段の買い物はどこでしているか
  • 交通事情はどんな感じか
  • 近所の人たちはどんな人がいるか
  • 近所づきあいはどんな感じか
  • 住んでいて気になる点はないか
  • 次のお引越しのスケジュールなどはすでに決まっているか
  • 学区はどうなっているか
  • 近所の保育園などの競争率はどうか
  • 周辺の飲食店などの事情はどうか
  • そのマンションのメリットはどんなところか

などなど、実際に住んでいる人しか知らない情報がたくさんあります。お部屋の中の確認が一通り済んだら、是非売主へのヒアリングを行ってください。

2:購入申し込み、事前審査

2-1:知らなかったでは済まされない3つの罠

購入申し込み前後では一気にスケジュールが進みます。その際に、後で知って後悔しても遅いたくさんのポイントがあります。そのポイントを事前に知っておくことで、中古マンション購入の失敗を回避しましょう!

①物件の購入権は早いもの勝ち!

フリーマーケットやネットオークションをご想像ください。コンビニやスーパーに並んでいる商品と違って、中古マンションは全て「一点もの」です。

買い逃してしまったら同じものは1つとしてありません。また、その物件を買えるかどうかは「いかに高い価格で、いかに早く申し込みをするか」にかかっています。

高額な取引ですので、即断即決は難しいのが現実ですが、「良い物件ほど無くなるのが極端に早い」というのも現実です。せっかくの良い物件を買い逃してしまうと、また沢山の内覧をしなければいけません。事前に覚悟を決めておきましょう。

②ネット銀行の事前審査は使えない!

中古マンション購入の特徴は「ローンを使う」ことです。高額の取引になるので、売主も「この人はこの物件を買いたいと言ってくれてるけど、どんな人かも知らないし、本当にお金が払えるのであろうか?スムーズな取引が出来るのか?」と不安になってしまいます。そこで、客観的に支払い能力の安全性を証明する手段として「ローンの事前審査の通過証明書」を提出する必要が出てきます。

しかし、銀行によってこの事前審査の信ぴょう性に格差があります。端的に言えば「ネット銀行の事前審査は証明性が低いので使えない」というのが業界の常識です。ネット上から気軽に申し込みが出来るのがネット銀行のメリットですが、一方で申請が手軽すぎる故に源泉徴収などを提出する必要がなく、自己申告の内容だけで審査がされます。そのため、「ネット銀行の事前審査に通ったが、いざ本審査を受けたら落ちてしまった」ということがよくあります。

ですので、購入申し込みの際に使用する事前審査は「都市銀行、もしくは地方銀行、信託銀行」などの信ぴょう性の高い事前審査を使用することがマストになります。ちなみに、購入申し込みの着順は「申し込みの提出&事前審査の通過」がセットになって初めて決められます。つまり、申し込みをいくら早くしても事前審査に時間がかかってしまうと他の方に横取りされてしまうのです。

*ごく稀に現金一括での購入をされる方もいますが、その際は預金通帳の残高のコピーなどを提出することがほとんどです。

➂事前審査の内容がそのまま契約書に反映される!

契約書を締結する際に、書面上にどこに金融機関でいくらのローンを組む予定なのかが盛り込まれます。特に、「ローン特約」は書面に記入された金融機関の内容が前提になります。

*ローン特約とは買主を守るための特約です。売買契約締結後に、使用予定のローン審査に落ちてしまった場合、売買契約を白紙撤回することが出来るという特約です。

ですので、使用する予定のない金融機関の事前審査を、スピードを優先するあまりに安易に受けてはいけません。売買契約書にその金融機関を記載することになり、せっかくのローン特約を有効活用することが出来なくなってしまうので要注意です。

3-2:運命の物件に出会う前に必ずしておきたい3つのポイント

通常ですと、まずは良い物件を探して、見つかったらローンなどを色々と準備しようと皆さん考えがちです。ですが、物件を買い逃さないためには、実は「先にローンの準備」をしっかり行う必要があります。

①ローンの内容を事前に確定しておこう

ローンと一言で言っても沢山の選択肢があります。どこの銀行で借りるのか、何年で組むのか、変動金利固定金利、生命保険、火災保険などなど。これらが決まっていないと、事前審査の手続きどころか、「どこに金融機関に出そうかな」というレベルで後手に回ってしまいます。良い物件は沢山の購入候補者とのスピード勝負になります。事前に下記のポイントを確定しておきましょう。

  • 早めに確定したいローンの内容
  • どこの金融機関のローンを使用するのか
  • 何年返済のプランで組むのか
  • 変動金利、期間固定、全期間固定などプランはどうするか
  • 頭金はいくら入れるのか
  • ペアローンは使用するのか
  • ペアローンを使用する場合、それぞれ幾らずつ借り入れするのか

②資料の準備を事前にしておこう

事前審査、本審査には一部、自分で取得しなければいけない資料があります。特に、紛失していたり、再取得をする必要があるもの、役所に行かなければいけないものにご注意ください。共働きの方などは仕事の合間を縫って役所に行くなどは非常に大変です。下記の内容をチェックしましょう。

事前審査に必要な書類

  • 身分証明→大抵の方は免許証になります。住所は最新の住所に更新できているか、免許証がない場合はパスポートや住基カードなどをご準備ください。
  • 保険証→会社から発行されます。持っていない方は非常に稀かと思いますが、常に持ち歩くようにしましょう。
  • 源泉徴収票→直近2年分が必要になります。提出はコピーで済みますが、紛失してしまっている方は事前に会社に再発行を依頼しましょう。また、直近転職している方などは前職に再発行依頼をする必要がありますので、予想以上に時間がかかります。
  • 確定申告書→確定申告をしている方は、直近3年分の提出が必要になります。また、概要だけでなく、全ページの提出がマストになります。手元にない場合は税務署に問い合わせをすることで再入手が可能です。

本審査に必要な書類

  • 住民票→直近のお引越しをして、移転手続きをしていない方は要注意です。
  • 印鑑証明書→そもそも印鑑証明書の手続きをしていない方を多く見かけます。住民票の移転と共に、最新の住所での登録をしましょう。
  • 課税証明書→所得税の金額を証明する資料ですが、同時に年収額も記載されているため、収入額の証明になります。住民票、印鑑証明書と共に役所で取得することができます。
  • 納税証明書→確定申告をされた納税金額を本当に支払ったかの証明(確定申告した方のみ)

③事前の事前をしておこう

多くの方は、ご自身が本当に気に入った物件に出会い、「よし買おう!」と思った時に「初めて」事前審査を出します。つまり「ぶっつけ本番」をしようとするのです。ただでさえ高額の買い物で慎重になっているはずなのに、何故か皆さん同じことをします。

ぶっつけ本番をするとこんなトラブルが待っています…!

  • 過去に100円だけ滞納していたクレジットカードのせいで不合格
  • 予想外の追加資料請求で何度も銀行や役所に行くはめにあった
  • 手続きになれずに審査結果が伸び伸び、物件は他の買い手に
  • 自分で思っていたよりも借り入れ可能金額が低く、予算見直しでお部屋も探し直し

理想の物件に出会う前に、自分の予算感にあった別の物件でまずは一回「テスト事前審査」をしておくと、必要書類がわかったり、自分の予算感がわかるので安心して物件探しに集中できます。

3:売買契約

3-1:急に焦らない為に!売買契約で重要な4つのデッドライン

売買契約書とは、高額でリスキーな取引を、安全円滑に行う為に取引の約束事を事前に取りまとめたものです。

様々な取り決めが盛り込まれている契約書ですが、特に大事で、トラブルの元になりやすいのが「デッドライン」です。契約書に盛り込まれる4つのデッドラインを必ず、契約日前に確認しましょう。契約日当日、フタを開けたらびっくり!とならない為に!

① ローン取得期日(融資承認取得期日)

この日までに、必ず本審査の通過をしてくださいという期日です。売主の立場で考えると、売買契約後、速やかに審査を勧めてもらって、なるべく早く、決済日を確定したいと思います。逆に、いつまで経っても買主が審査手続きを行わず、最後まで取引が完了するかどうかいつまでもわからないと非常に不安になります。ですので、買主がサボらないように審査通過のデッドラインを定めます。

一般的には売買契約日から約2週間後に設定されます。この期日に間に合わない場合、違約金の支払いなどを請求される可能性がありますので、絶対にご確認ください。

②ローン特約期日(融資利用の特約に基づく契約解除期日)

ローン特約の権利をいつまでなら行使できるかを定めたものです。買主がローンに落ちた場合、ローン特約を使うかどうか早めに決断してもらわなければ、それだけ売却活動が遅れますので、売主のリスクになります。

一般的にはローン取得期日の2~3日後に設定されます。

➂手付け解除期日

いつまでなら手付金を放棄することにより、契約解除を行えるかを定めた日時です。
手付金とは先に売主に支払う前払い金のようなものです。

この前払い金を放棄して、売主に譲渡することにより買主都合による契約のキャンセルを行うことができます。

一般的にローン特約期日と同日もしくは次の日などに設定されます。

④残代金支払い期日

物件価格残金支払いの締切日のことです。この日までに必ず代金を払ってくださいねという締切日です。

一般的には売買契約日から1.5ヶ月ほどです。あくまで締切日ですので、代金の支払いはこれよりも前倒しが可能です。一方で、買主のローンの手続きや、売主の退去手続きなどかなりドタバタしまうので現場ではこの期日の日に決済を行うことが多いです。

決済日の調整は、買主も売主も互いのスケジュールを合わせるのに様々な要因が絡んでくるので、かなりトラブルになりやすいポイントです。売主と直接お話が出来る売買契約の際に必ず仮置きの決済日の確認をしておきましょう。

3-2:売買契約時に必ず確認するべき3つのポイント

大切な売買契約時によくある現場あるあるをご紹介します。こちらのポイントを必ず事前に確認しましょう!

① 契約日が思ったより早くて焦った

購入申し込みから、契約まで最短で1週間です。大きな買い物ですので、多くの人が「そんなに早く契約を結ぶなんて聞いてない!」と焦ってしまいます。また、ローンの選定なども確定してないかたも多いので、事前の心の準備が必要です。

② 手付金の準備をしよう

契約時に売買代金の5%を前払金として売主に支払う必要があります。3000万円の物件でも150万円と、日常ではなかなか使わない金額を「現金で」準備する必要があります。特に注意したいのは、「ATMの引き出し上限」です。一般的にATMでは1日に50万円までしか引き出しをすることが出来ません。

ですので、大金を準備する為には「窓口で直接」引き出しをする必要があります。売買契約は土日に行うことが多いので、平日に銀行にいくことが難しい人は複数日に分けてATMで引き出す必要がありますので注意しましょう。手付金を準備出来ないと契約自体が流れてしまいます。また、後日振込などの対応もしてくれないことがほとんどなので要注意です。

③資料の事前チェックしよう

契約日当日に、契約内容を確認しても後の祭り。先に契約内容の確認をして、問題があれば訂正の依頼をしましょう。主に確認する内容は以下のポイントです。

  • 物件価格や手付金の価格に誤りはないか
  • ローン取得期日、ローン特約期日、手付け解除期日、決済期日は想定通りか
  • 引き渡しする設備の内容は想定通りか

この三つを確認しておけば基本的にはokです。

4:ローンの本審査

4-1:本審査にありがちな3つの失敗

ローンが借りられるかどうか、最後の審査に入ります。事前審査などと違い、競合はいないものの、審査期日が決まっています。したがって、早急な対応をする必要があります。そんな時に限って、よくある失敗をご紹介します。

① そもそもどこの金融機関で借りるか借入先もプランも決まってない

理想の物件に出会ってから駆け足で来てしまったため、何も決まっていないという方がよくいます。もちろん、とりあえず受けてみた事前審査の借入先でそのまま借入するのが一番シンプルです。ですが、他にも使ってみたい金融機関などがある場合、早目に動く必要があります。ローン取得期日が決まっていますので、ゆっくり選んでいる暇はありません。

②本審査時に提出するための資料が足りない

本審査の審査をスタートさせる為には必要書類が出揃っていることが重要です。つまり1つでも資料の漏れがあると、その分、審査期間がのびてしまいます。

特にありがちな事例はこちら

  • 印鑑登録証明をしていなかった
  • 印鑑証明を出すための印鑑カード
  • 住民票などが旧住所のままだった
  • 役所に資料を取りにいく暇がない
  • 資料の発行日が古すぎて取り直しになった
  • 転職したばかりで直近の給与明細が必要になった
  • 転職したばかりで前職から給与明細が必要になった
  • 最新の健康診断表が無く、病院に行かなければ行けなくなった
  • 記入ミス、記入漏れがあり、再提出することになった

*確定申告している方

  • 確定申告の全ページが見当たらない(明細ページなどを紛失した)
  • 確定申告に税務署からの受領印がなかった

➂審査結果に時間がかかる

審査資料の申し込みをすればあとは待つだけ。ですが、ここでも予想外のトラブルが。

  • 審査担当者が処理を忘れていて1週間放置された
  • 金融機関が混みすぎていて、審査に時間がかかった
  • GW、年末年始など大型連休で審査が大幅にのびた
  • 申し込み書類を郵送したところ、記入漏れなどによる住所不明で書類が戻って来た

などなど、不可抗力のトラブルが盛りだくさん。

少しでもおかしいなと思ったら、担当者に電話してみましょう。特にネット銀行は郵送による資料のやりとりがメインのため、郵便トラブルや書類不備などで平気で1週間伸びたりします。また、非常に人気があるため、そもそも順番待ちで審査に非常に時間がかかるため、スケジュールの兼ね合いとで要注意です。

4-2:先に知っておきたい6つのポイント

知らなかった!ではすまないマストの知識を説明します。

① 金融機関によって、いきなり本審査からは受けさせてもらえない

売買契約後に、事前審査を飛ばして、直接本審査を受けようとされる方がいます。もちろん金融機関によっては可能ですが、事前審査がマストの銀行も多いです。

売買契約後から事前審査と本審査を受けようとするとスケジュール的に無理になってきます。後から後悔が内容に、使用する可能性のある金融機関は事前に確認をしておきましょう。

②ローンの契約条件を後から変更しようとすると再審査になる

例えば、返済年数を35年から30年にしたり、変動金利から固定金利にしたりなど返済条件を変更しようとすると「再審査」となります。再審査になった場合さらに1週間ほど審査期間が伸びますので、ご注意ください。

➂団体信用生命保険がなんのことかよくわかってなかった

略して「団信(だんしん)」と呼ばれるものです。簡単に言うと、買主が完済前に死亡した場合、残金を清算する生命保険です。特にフラット35を利用する場合は加入が任意になるので、事前に加入するかどうか確認しておきましょう。

④火災保険のことをよくわかってなかった

自宅の購入に火災保険はつきものです。ですがこんなポイントが不明ではないですか?

  • どこの火災保険がおすすめなの?
  • どのタイミングで申し込めばいいの?
  • どこで申し込めばいいの?
  • 不動産屋が紹介してくれるんじゃないの?
  • いくらくらいが、相場なの?

などなどです。

結論としては、火災保険は完全に任意のものなので、どこからでもいつでも加入が可能です。
大抵は、住宅ローンの申し込み時に一緒に加入されることが多いようです。

⑤住所移転手続きを必ず行おう

住民票の移動を行う場合、一般的には「引越しをしてから住民票を移動」させます。しかし、売買の時だけ「住民票を移動させてから引越し」をします。

理由は「登録免許税」が安くなるからです。自身が住む目的の不動産の取得の場合、登録免許税の軽減措置が受けられます。その際に、自身が住むことを証明する為に、不動産の住所と住民票の住所を同じにするのです。

万が一何かしらの理由で、移転手続きが出来ないときは、事前に銀行か不動産屋の担当者に相談しましょう。

⑥ローン契約の為に平日を空ける必要がある

本審査通過後に、いつからいくらを、何年返済で借りますよという内容の契約を金融機関と結びます。このローン契約手続きも、基本的には金融機関の窓口で行う必要があります。金融機関の窓口で行うということは、基本的に平日の日中になります。一部、土曜日も対応してくれる窓口もありますが、案件が土曜に集中する為、早めの予約などを心がけましょう。

5:決済

5-1:事前に知っておきたい決済事情3つのポイント

いよいよ取引の大詰め、残金のお支払いです。

決済をするにあたって事前に必ず認識しておきたい3つのポイント

①決済日は気軽に変えられない

決済は大金の振込を行う必要がある為、銀行で行います。その為「平日の午前中」がマストになります。さらに、買主と売主の都合が合致した日時にする為、非常にスケジュール調整が難しくなります。また、ローン契約の段階で決済日の指定をする必要があるので、後々の日程変更は基本的に出来ません。

とはいえ、急な出張や急病など不可抗力は免れません。そんな時は代理人を立てた決済なども可能なケースがありますので、すぐに担当者にご相談してみてください。

②口座の現金が足りなかった

決済日では売主に「物件価格-手付金」の金額を支払います。その際に「手付金の金額よりも大きな金額を頭金にする人」は要注意です。

なぜかと言いますと、融資の金額があなたの口座に振り込まれる際に「保証料+事務手数料」が天引きされた状態で振込まれるからです。ですので、決済日にはこの「保証料+事務手数料」分の金額を口座に予め入れておく必要があります。

決済日には下記の支払いが発生します。

  • 物件価格残代金
  • 清算金
  • 仲介手数料
  • 司法書士費用(実費含む)
  • 金融機関保証料+事務手数料

これらの金額を足し合わせた金額を賄えるように事前に確認をしましょう。

③印鑑を忘れた

こちらも初歩的ですが意外とよくある話です。決済日には「実印」と「銀行印」の両方が必要です。

うっかり忘れてしまうと売主はもとより、相手方の仲介業者、司法書士、銀行の担当を待たせてしまうことになるので、必ず忘れないようにしましょう。

6:引き渡し

6-1:中古マンション購入する為に事前に覚悟すべき3つの心得

決済を終え、鍵を受け取り、いよいよお部屋を自由に使えるようになります。一息つけるかと思うところですが、油断大敵、最後のチェックが必要です。そもそも、中古マンションの取引における「覚悟」しておかなければいけない「大前提」を説明します。

① 新築分譲と中古分譲の違いを理解する

新築と中古の取引では、同じ不動産の購入でも前提条件が大きく異なります。最大の違いは取引相手が「ディベロッパー(業者)」か「個人の売主」かということです。

新築は家電量販店で新品の家電を購入するのに似ています。説明資料も充実していて、何かトラブルがあっても手厚く保証してくれます。

一方、中古の場合はフリーマーケットをご想像ください。売主は基本的に個人の方です。あくまでユーズドなので、傷や汚れなど使用感があるかわりに「新築よりもディスカウント」で購入することが出来ます。もちろん、新築ほど手厚い保証は受けられません。

また、相手が個人の方の場合、退去のスケジュールなど売主の個人の都合も考慮して取引が行われます。

特に、引き渡し後の保証に関しては必要最低限どの範囲を除いて、売主は責任を負わない形になります。

②現況有姿という考えを理解する

中古マンションの取引をしていると、非常によく聞くワードが「現況有姿」です。言い換えると、「現況のままの状態で、特に足しも引きもしない状態でのお引き渡しをします」という意味合いです。

中古の家電などと違って、非常に規模の大きな商品になります。その為、付属の設備も含めて、どうしても売主も全ての傷や汚れ、故障などを把握している訳ではありません。また、買主も短い内覧時間だけで全てをチェックすることも不可能なのが現場の実際です。

買主からすれば、事前の説明がなかった傷、汚れ、故障、その他不具合に関しては売主様に負担して頂きたいところです。ですが、あくまでユーズド品の取引になりますので、後ほど軽微の不具合などが見つかっても、ご了承くださいというのが基本的な考え方です。

売主は常識の範囲内での退去及び清掃を行い、修理屋や改修、業者によるプロの清掃などはしない状態でお引き渡しを行います。その代わり、改修やプロのクリーニング費用分は考慮された物件価格での取引が出来るということです。

③保証内容を理解する

とはいえ、何も保証が無いとなると、購入する側も安心して購入することが出来ません。
中古マンションの売買では主に2つの保証がつくことがほとんどです。

1. 瑕疵の保証

いわゆる「瑕疵担保責任 (かしたんぽせきにん)」と言われるものです。瑕疵とは、探そうと思っても通常の範囲では発見することが難しい欠陥のことを言います。例えば、構造上の問題、排水給水管の問題、雨漏りなどです。こちらは、一般的には引き渡しのタイミングから、売主が個人の場合は3ヶ月、業者の場合は2年間は保証をしてもらえます。

2. 設備の保証

キッチン、浴室、トイレ、給湯など主要な設備についての保証です。一般的に、引き渡しのタイミングから、売主が個人の場合は1週間、業者の場合は3ヶ月~1年間は保証をしてもらえます。事前に故障や不具合の報告がなかったものが対象になります。また、あまりにも軽微のものは経年劣化の範囲になりますので、請求をすることは出来ません。

保証してもらえる範囲と、保証してもらえない範囲をしっかりと理解しましょう。

6-2:引き渡し時のあるある事例

お引き渡しの前後で、非常によく相談されるあるある事例を紹介します。こんなトラブルがよく起こりがちなので、事前に注意しましょう!

  • 売主の残置物がまだ残っていた
  • 残してくれると言っていたものが残ってなかった
  • 思ったよりも傷や汚れが多かった
  • 不具合を発見したがすでに保証期間を過ぎていた
  • 不具合があった時に、売主に確認してもらう前に勝手に修理したら保証してもらえなかった
  • 急いで入居したが、クリーニングを入れればよかった
  • 入居したはいいが、ガスの開栓手配をしていなかった
  • 賃貸契約の解除1ヶ月前マストで家賃が勿体無かった
  • 売主宛ての郵便物が届いたけどどうしたらいいかわからない

7:その他

7-1:注意したいNG物件のポイント

物件を選ぶ上で、ここのポイントは確実確認しておきたいポイントです。下記の条件でフィルタをかけるだけで、物件選びの安全性がグンとアップします!

  • 築年数:1983年より前の築年のマンションは旧耐震の可能性があります。
  • 土地の権利形態:土地に対してどのような形態の権利を持つことができるかという項目です。ここが「借地」など所有権以外になっている場合は要注意!
  • 管理形態:マンションの管理をどのような体制でしているかという項目です。「自主管理」など全部委託以外になっている場合は要注意!
  • 総戸数:マンション内に世帯数がいくつ入っているかという項目です。この数が20以下の場合は要注意!管理費や修繕積立金が高い可能性あり!
  • 管理費と修繕積立金:毎月支払うものですので、ランニングコストとして高過ぎないか要チェックです!
  • 一時金:備考欄などに、一時金という項目があったら要注意!近い将来、大規模修繕などの為に、数十万円の集金があります!
  • 既存不適格:建設当時は合法の物件でも、そのエリアの規制が改変されて、結果的に不適格になってしまった物件のことです。担当に確認してみましょう。
  • 事故:その物件で何かしらの事故があった場合、必ず説明をする義務があります。賃貸と比べると非常に稀ですが、念のため確認しましょう。
  • エレベーター:古い物件にはエレベーターが無い物件が実は多いんです。1~2階の物件であればまだ良いですが、事前に要チェックです!
  • 行政区域:ほんの数メートルの違いで、行政区域が変わってしまうことがあります。行政区域の区分によっては目の前にある保育園や学校に通わせられなかったりします。こちらも事前に要チェックです!
  • 住宅ローン減税:減税対象になる物件は、現在から25年以内に建築されていて、面積が50㎡以上のものです。必ずチェックしましょう!
  • フラット35:1983年以降の物件がフラット35の対象物件です。その他、長期修繕計画があるかどうかなども要確認ですので、フラットを使う予定の場合は必ずチェックしましょう!

7-2:贈与税について

親族からの資金援助を予定している方は要注意!国の税制度で、一定の金額以内の場合は贈与税が免除される仕組みがあります。一方、一定金額を超えた金額に関しては、贈与税が発生しますので、こちらの仕組みを要チェックしましょう!

7-3:突然の転勤

「物件の売買契約をした直後に、転勤が決定し、泣く泣く手付金解除になった」という事例は実は珍しい話ではありません。もしも真剣に購入を考えている場合は、真剣に自宅の購入を考えているので、直近の転勤の可能性はあるかどうかを確認してみた方が良いかもしれません。

7-4:諸費用のシミュレーション

思ったよりも、購入に関わる出費が多かった!そんなことにならない為に、中古マンション購入に関わる諸費用は必ず事前にチェックしましょう!中古マンション購入に関わる諸費用の内訳は、主に手付金、仲介手数料、司法書士費用、ローン保証料などです。事前に現金を準備しておきましょう!

特に、その中でも多くの割合を占める「仲介手数料」は要注意です。なんと物件価格の3%もかかります!5000万円の物件だとしても150万円もかかってしまいます。

8:それでも魅力的な中古マンションの魅力

さて、ここまで沢山のトラブル事例や注意ポイントをご紹介させて頂きました。なかには、「中古マンション取引が怖くなった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?ですが、ご安心ください。こういったトラブルを未然に防ぎ、沢山の中古マンションのメリットをお客様が享受できる為に我々プロの仲介業者がいるのです。

最後に、中古マンション取引の魅力的なポイントをお伝えします。

① 値段が安い

兎にも角にも、近年の新築分譲マンションと比べて、圧倒的にリーズナブルです。全く同じようなスペックでも1000万円ほどの開きがあるのがざらです。

②資産価値の下落が少ない

いわゆる「新築プレミアム」と言われる、入居して中古になった瞬間に評価金額が一気に下がる新築と比べて、今後の評価額の下落がゆるやかです。

➂物件数が多く、選択肢が多い

新築マンションは分譲予定のものが限られていますが、中古マンションの選択肢は無限です。腰を据えてお探し頂ければきっと理想の物件に巡り会えます。

④立地が良い物件が多い

当然ですが、土地は駅から近い立地からうまっていきます。ゆえに、新築分譲で徒歩1分の大型マンションなどが現れるのは非常に稀です。不動産は立地が8割なので、非常に大きなメリットと言えます。

⑤ すでに完成している実物を見てから決められる

新築は工事中の段階で、モデルルームを見てから購入を決めなければいけません。
眺望や、実際に住んでみての売主の感想などを確認してから購入できるのが中古の魅力ですね。

⑥リフォーム・リノベーションで自分の好みに変えやすい

ある程度古くて、少し昭和の雰囲気が漂うマンションだとしても、リフォーム・リノベーションでお得に自分らしくリフレッシュできることも魅力的です。新築のピカピカのマンションもいいですが、自分らしい自宅づくりも魅力的ですね。

トラブルあるあるのまとめ

数多くの中古マンション売買を経験したプロの、現場の視点から見た生々しい事例と注意点をお届けしました。

自分にはこんなこと起こるわけない!と決めつけずに、事前のチェックと覚悟と準備をすることで、一生に一度の買い物をよりスムーズに幸せなものにすることができます!それでも「不安になってしまった!」という方は是非、直接お声がけください。

マンションジャーナル