現在、宇宙空間には数多くの人工衛星が存在しています。宇宙から地球を観察し、そのデータを地上に送る役割を担っている人工衛星は「宇宙の目」と呼ばれることもあります。

さまざまな用途に利用されている人工衛星のデータですが、近年ではビジネス・経済活動への活用も始まっています。ここでは、まず「人工衛星がやっていること」をざっくりつかんだ後で、ビジネス面への応用の現状を見ていきます。

従来の「宇宙の目」の活用法

地球全体を見渡すことができる人工衛星は、地形や気象情報、さらには海水温度など、地球上のあらゆる情報を観測しています。代表的なものが、気象予報で使用される映像などですが、これら地上からでは測ることのできないデータが加工され、多様な形で地上で活かされています。

さらに、人工衛星の活用が不可欠となっているのは、「災害時の情報提供」です。地上での災害に直接の影響を受けない人工衛星は、災害時に「いま何が起こっているのか」を発信することができます。地震や津波などの被害状況を観測したデータは、防災のためのシミュレーションにも利用されています。

このように、人工衛星の「宇宙の目」によって、われわれは生活の面でも、安全の面でも、さまざまな恩恵を受けているのです。

「経済活動」の分析に使う

また、技術の進歩によって、人工衛星の観測精度自体も年々向上しています。さらに観測データを提供するサービスも充実してきているとのこと。実際、人工衛星のデータ活用を行う市場は、技術的にも法的にも整ってきて、より活発になっています。

その中で新たに進められている取り組みが、「経済活動の分析」です。人工衛星のデータと経済活動とは一見無関係にも思えますが、いま世界では熱い注目を集めているようなのです。

たとえば、人工衛星がスーパーマーケットの駐車場の映像を撮影すると、「どの時間帯に車が多いのか」という情報が得られ、そのデータを売上の予測にも利用できます。またアメリカでは、広大なトウモロコシ畑を人工衛星で観測することで、畑での作物の成長状況の把握や収穫量の予測に活かす事例もあがっています。世界ではほかにも、石油の貯蔵施設を宇宙から観測して、蓄えられている石油の量を確度高く推定する取り組みや、澱んだ水の溜まったプールを見つけ出し、伝染病の原因となる蚊の発生するリスクを予想するプロジェクトなども進んでいます。

日本での活用事例は?

こうした技術力では一歩、先んじているイメージのある日本ですが、人工衛星のデータ活用が進んでいる世界各国から見ると、実は日本はまだ発展途上とのこと。しかし、ロボットなどの開発力・技術力に優れた日本ならではの活用方法の一例として、農業が盛んな北海道を中心に、人工衛星の農業利用が進められています。

たとえば、GPS機能を搭載した農業用トラクターの位置を人工衛星が把握し、さらに走行経路を表示することで、トラクターを効率よく運用できます。将来的に無人トラクターを取り入れた新しい農業を実現するため、GPS機能の精度が高い日本の人工衛星も打ち上げられています。

人工衛星がもたらす貴重なデータは、あらゆる分野で活用されていて、私たちのこれからの生活にも大きく関わってきます。地上を見渡す「宇宙の目」から、今まで以上に目が離せません。

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