どう考えても自分は正しいことを言っているのに、妻もしくは夫、また子どもさえも納得してくれない。それどころか嫌なムードが漂ったり、ケンカになってしてしまう…。身に覚えはありませんか。自分の「正論」がなぜ家族に理解してもらえないのか、その理由と心に響く伝え方をご紹介します。

「自分のもの」だと思うからケンカになる

夫婦の場合、結婚して毎日一緒に生活をするようになると、慣れが出てきますよね。家族になったのですから、慣れが出るのは当然のこと。家庭が落ち着く場所になるためにも、相手に慣れることは必要です。

一方で、慣れに甘えが加わると家族を「自分のもの」と勘違いしてしまいます。これは夫婦間でも、親子間でも同じですが、相手を「自分のもの」と捉えると相手の人間性を尊重しにくくなります。相手の気持ちや事情を考えないどころか、聞くことさえせずに、自分の話や都合ばかりを押し付けてしまう。それでは相手も反発しますよね。

新たに家族になったわけですから、距離の取り方を間違えるのはよくあること。本物の家族になるまでには、こういった間違いや衝突も起こることでしょう。

大切なのは「家族は自分のものではない」ことに気付き、相手を尊重する意識を持つこと。「相手の考えや気持ち」に配慮して話を進めることを頭に入れておきましょう。「親しき仲にも礼儀あり」とよく言われますが、これは意識しなければできないのです。

「聞く耳」を持ってもらうために

家族に正論を伝えるときは、「いかに自分が正しいかを伝える」ことよりも、「相手に聞く耳を持ってもらう」ことに力を入れましょう。聞く耳がなければ、いくらアレコレ話をしたところで馬耳東風状態ですよね。逆に聞く耳さえ持ってもらえば、理解してもらいやすくなるでしょう。

ここでは聞く耳を持ってもらう方法についてご紹介します。

(1)相手を傷付けることを念頭に話を進める

正論を言う側が知っておきたいのは、「正論を言われた相手は傷付く」ということです。正論を言われたということは、「あなたは間違っている」と言われたのと同じこと。間違いを指摘されれば、誰しも多かれ少なかれ傷付きますよね。

傷付くと、脳の中は理性よりも感情が優位になります。「間違っていると指摘されて恥ずかしい」「自分の考えが否定されて悲しい」「自分の気持ちを分かってもらえなくてイライラする」といった気持ちで、頭の中はいっぱいに。傷付いた後で正論を言われても、頭にまで入ってきません。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉がありますが、正しいことをいうときほど、上から目線では話さない方が良いでしょう。相手の心の傷を気遣い、謙虚な姿勢で話を進めましょう。

(2)結果より、過程の話を聞く

謙虚な態度で相手の前に出たら、まずは「間違っている結果」には触れず、「実際に起こったこと、相手の状況や体調、相手の感情や考えたことなど、結果に至るまでの過程」について聞いてみましょう。

たとえばあなたが男性で、仕事で疲れて帰ってきたら床はオモチャで溢れ、机の上は食べ残しで汚れていました。この場合「片付いていないという結果」を責めるのではなく、「今日は子どもたちはどんな様子だった?」と聞いたり、顔色が優れないようなら「体調悪い?」と聞いたりしてみましょう。

相手は自分の考えや気持ちを話し、聞いてもらうことで安心します。あなたも相手の話を聞けば状況がよく分かり、どのような言葉で、どのように話を進めれば相手に伝わりやすくなるかがわかるでしょう。また、「正しさ」は人や状況によって異なります。時には「自分の方の答えが正しいわけではなかった」と気付かされることもあるでしょう。

(3)「既に頑張っている前提」で相手を労う

正論を話すということは、「間違いを正してほしい」「もっと頑張ってほしい」と相手に求めることになります。けれども多くの場合、相手は既に頑張っている状態。そこで正論を言われてしまうと、「自分の頑張りでは足りないと言われた」気分になったり、「これ以上頑張れない」と感じたりするものです。

まずは「既に頑張っている前提」で、相手の頑張りを労いましょう。今の状況を認められることで、先に進もうという意欲も湧くものです。

(4)感情と理性はセットで話す

人間には感情と理性があります。片方だけで話をしては、正論も伝わりません。「感情」のみで話しても、論理性を欠いて話がまとまりませんよね。時に感情が暴走し、ケンカになることもあるので理性は必要です。

一方で「理性」だけで話をしても、心に響きにくいですし、良い答えが出にくくなります。人間は感情の生き物ですから、感情なしで結論を求めるのは難しいのです。話をする時には、感情と理性のバランスを考えて話すと正論も伝わりやすくなります。

すぐに答えは出さなくていい

さて、あなたが正論を言ったとしても、自分の正論が相手の正論とは限りません。人の数だけ正論はありますし、夫婦や親子とはいえ他人ですから、すぐに答えが出ないことは多いのです。時間をかけて話し合ったり、試行錯誤したり、時には相手に委ねてみたりして、日々生活をしながらお互いの良い方向を模索していきましょう。

宮野 茉莉子