高成長が続くベトナムは今年1番の注目の国〜消費面でも新たな段階に

今月ベトナム・ホーチミンを再訪し、とある会議に出席してきました。高い成長を続けるアジアの中でも、積極的に対外開放政策と工業化を進めるベトナムへの注目度は、一段と高まっていることを肌で感じました。

世界トップクラスのGDP成長率が続くのはなぜか

ベトナムの2018年1-3月期のGDP統計では、実質GDP成長率は+7.4%(前年同期比)です。これは、前四半期の2017年10-12月の同+7.7%には届きませんでしたが、3期連続で7%を超えており、昨年の年率+6.4%と比べても高い成長率です。

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世界的に見ても+7%を超える成長率に達している国は少なく、ベトナムの高成長ぶりがうかがえます。ベトナムは、今年1番の注目の国といっても過言ではないと、筆者は考えています。

ベトナムの高成長の最大の要因は、「チャイナ・プラス1」の最有力地としてベトナムが注目され、工業化が進んでいることです。

1990年代の中国は、改革開放政策の下、膨大な労働人口と安い人件費を利点に世界中の製造業の製造拠点として成長し、「世界の工場」といわれる地位に登りつめました。しかし、高成長を果たす一方で、中国国内の賃金水準は上昇し、低コストというメリットは薄れてきました。

また、生産拠点化する中で、食品衛生リスクや知的財産の(中国への)流出リスク、人民元の為替リスクが顕在化し、米国が知的財産権の侵害を理由にスーパー301条を発動するなど、中国に偏った製造拠点集約もリスクと認識されるようになってきました。

そこで、近年では、製造拠点を、中国からカンボジアやタイ、ベトナム、ミャンマーなどのASEAN諸国へ移転させる分散の動きが進みつつあります。

この「チャイナ・プラス1」の動きの中、ベトナムは、積極的に対外開放的な政策を打ってきています。

一つは、市場開放です。外国人の株式保有には制限がありますが、これを徐々にではありますが緩和してきました。また外国人の不動産保有も、制限を緩和してきました。これにより、ベトナムへの外国からの投資は継続的に増加しています。

もう一つは、国有財産の売却です。日本でも、鉄鋼や重工業、ビール製造、鉄道や郵便といった事業は、もともと国家の事業として始まりましたが、それを順次、民営化してきたことは皆さんの記憶にもあると思います。ベトナムも、国家債務の圧縮という理由ではありますが、こうした国有事業の売却を進めています。

投資家にとっては、これは大きな投資機会であり、日本や韓国からの投資が期待されています。

中間層の拡大と消費の質的変化

忘れてはならないのは、この国が、まだまだ若いということです。ベトナム戦争の終結は1975年です。戦争により国土は荒廃し、他のアセアン各国には開発に出遅れる結果となりましたが、戦争終結後には、第二次大戦後の日本と同様にベビーブームが起こりました。

その結果、日本の団塊の世代のように人口が一気に増えました。そしてその世代がこれから、30歳代になっていきます。ベトナムの人口ピラミッドは、現在釣鐘型で、労働人口が相対的に多く、平均年齢が30歳というのも頷けます。

所得も着実に増加しています。ホーチミン市やハノイ市などの大都市圏では、一人当たりGDPは2012年に3,500米ドルを超えてきており、共働き世帯では、農村地域の世帯の5倍以上の可処分所得があるとも言われています。

こうして拡大している中間層は、まだ30代以下の世代であり、今後の消費をリードすることが予想されます。実際、消費には、これまでとは異なる質的な変化が見られ、白モノ家電や車・バイクなどの消費のみならず、女性ではファッションやコスメ、男性もIT製品やファッション・嗜好品などに拡大しています。

インフレ率も2018年3月では前年同月比+2.7%と、低位安定しており、消費の下支え効果も見えます。3月の小売売上高は前年同月比+9.3%と2月の同+13.2%からは鈍化したものの、良好な水準が継続しています。

オンライン消費の広まりで消費の拡大ペースも加速へ

一方で、小売業は、まだまだ零細個人商店が多いために、供給側が追いついていないという側面もあります。

ただ、たとえば、街の市場に代わり生鮮品やIT製品に特化してスーパーマーケットを展開するチェーンストアが台頭したり、あるジュエリーの小売業者はこの5年で二桁成長を遂げ、ベトナム全土で独自のリテール店舗を構えるまでになるなど、消費の多様化・効率化の要請の中、小売業にも変化が見られます。

また、30代以下の世代では、67%が「ネットで買い物をしたことがある」※と回答した調査結果もあり、オンラインでの消費はベトナム人消費者に根付き始めています。品目では、ファッション、台所用品、化粧品、IT製品などの購入を中心に拡大を続けています。

オンラインでの消費は、都市部の居住者によって引っ張られた消費を、地方や農村部に拡大することにも繋がっています。

ベトナムの都市化率は他のアセアン諸国に比べてもまだ低く、ベトナムの消費額の過半はまだ地方や農村部に居住する人たちが支えています。オンラインでの消費機会は、そうした人たちが消費する機会を提供することとなり、消費の拡大ペースが早まることが期待されています。

筆者は、ホーチミンで現地企業の経営者などからの鼻息の荒いプレゼンを聞いていて、政府の規制緩和政策や対外開放政策による工業化という面からのみならず、消費の面からも、ベトナムの成長は次の段階に入って来ていると確信しました。

※「VECITA (Vietnam E Commerce and Information Technology Agency)」統計より抜粋

Nippon Wealth Limited 長谷川 建一

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。