最近では在宅ワークを始める人も増えてきましたよね。とはいえ、在宅ワークにはまだ偏見もあるようです。日本では「仕事=会社で働く」という考え方が主流で、まだまだ在宅ワークは軽く見られがちなところがあります。

ライターを始めて7年の筆者も、様々な反応を受けてきました。時に気持ちが弱くなる時もありましたが、その中でもアイデンティティーを確立してきた道のりをご紹介します。

周囲の理解を得るのが難しい

出産を機に退職し、夫の転勤についていった筆者は、長男の生後9カ月でライターの仕事を始めました。いつかやりたいと思っていた仕事でしたし、子どもを持ちながら転勤族となった当時、環境的にもライターを始めるのがベストだと思っていたのです。

ところが夫には、「世の中になくてもいいような仕事をわざわざしなくてもいいだろう」と止められました。彼の口から出てくるのは、「そんな仕事」「いらない仕事」という偏見のある言葉。筆者としては、一番好きなことであり、やりたい仕事です。元々夫とは価値観も性格も正反対でしたが、その言葉に傷付き、また驚きもしました。

それでも諦めることは考えていませんでした。出産で「人の命は尊い」ことを身をもって実感し、「人間の一生は長いように思えて短い。好きなことだけをしていても足りないくらいだ。自分を100%活かすのが人生であり、子どもにもそうしてほしいから、まずは親である自分から始めよう」と心に決めていたからです。「周囲から止められて諦めるくらいなら、最初から続かないだろう」という思いもありました。

「人は人、自分は自分」という言葉がありますが、夫婦であっても価値観は異なるものです。今の段階では何を言っても彼の心には響かないから、まずはコツコツ仕事をしようと思い、7年が経ちました。以前よりは夫も、在宅ワークに理解を高めてきたように思います。休日になると、筆者の仕事中は子どもを見てくれるようにもなりました。

その時代の価値観より、自分の価値観

さて、冒頭の夫の発言を「ひどい言葉だ」と非難するのは簡単なことです。筆者は彼の言葉は世間の本音でもあると捉えました。夫は保守的な性格で、「普通が一番」という価値観の持ち主。会社員と公務員の両親のもとで育った夫は、普段会話をしていてもごく一般的な価値観を持ち合わせているように感じます。

事実、夫だけではなく、周囲からも様々な言葉をかけられました。「何それ?」「稼げないでしょう? いくら稼いでるの?」「ふーん、楽そうだね」「よくやるよね」などなど。会社員時代はこれらの発言をされたり、収入を直接聞かれることもありませんでした。その分、軽く見られているように感じてしまいます。

周囲の価値観を変えようとは、筆者は思いません。「その時代の価値観」というものがあり、たとえば第一次産業が主流だった時代は家で仕事をするのが普通でしたが、今では会社で仕事をするのが普通です。また以前は女性の専業主婦が当たり前でしたが、今では共働きが多くなりつつありますよね。

時代の価値観の威力は強いもので、その時代の価値観のもとで生まれ育ってきた人にとって、価値観を変えることは容易ではありません。なぜなら価値観を変えることは、その人の生き方をも揺るがしかねないからです。そう簡単には価値観を変えることはできないのです。

時代の価値観に対して個人ができることは、自分の価値観を持ち、行動することでしょう。「時代の価値観は常に移り行く」という性質を持ちますが、自分なら揺るがない価値観を持つこともできます。自分の価値観で行動し続けると、次第に周囲から「それもアリなのかもしれない」と少しずつ受け入れられるようになることでしょう。

在宅ワークこそ仕事の話を家族にしよう

さて、会社に勤めていれば会社で仕事をすれば良いですが、在宅ワークは家が仕事場になります。「在宅ワーク=家で仕事をするから楽」という価値観とも、付き合っていかなければなりません。実際は家での仕事はオンとオフの境目を分けけづらく、睡眠時間を削ったり、自分の時間がゼロということになりやすいのです。

また、「子どもを見ながら仕事ができる」とも思われやすい面もあるのですが、筆者の場合は子どもを見ながら文章の構成を考えたり、執筆したり、誤字脱字などのチェックをするのは無理です。

仕事内容は記事を書く以外にも、調べ物したり、本を読んだり、メールの返信などもあります。またGWなど、土日祝日も休みというわけにはいきません。こういった仕事内容、仕事にかかる時間などの話は、話さなければ家族も分からないので、在宅ワークの人ほど家族に詳しく話しておきましょう。

やりがいで力が湧いてくる

自分の価値観を持っていても、出産の際に仕事が減るときなどは、弱気になることもありました。その時期を支えてもらったのが、筆者の場合は記事に書かれるコメントです。文章で子育て支援をしたいと思っている筆者にとって、記事を読んで少しでも気が楽になる方がいらっしゃると嬉しく、力が湧いてきます。

仕事をしていれば様々なことがあるものですが、助けてくれるのも仕事である、ということも少なくありません。周囲に様々なことを言われても、弱気になっても、結局は毎日目の前にある仕事に実直に向かうことが一番だと思います。

宮野 茉莉子