隠れ貧困、という言葉を知っていますか。収入が少ないというわけではないのに、どういうわけか貯金ができずに、何かちょっとしたことですぐに家計が破綻してしまいかねない状況であることを言います。今回は、平均以上の収入をもらいながら、貯金が2人合わせても0円という隠れ貧困カップルが直面する課題についてご紹介したいと思います。

収入があるのになぜ貯められないのかという葛藤

今回の隠れ貧困カップルは2人とも、それぞれそれなりに知名度のある会社で働いており、同世代よりも高い水準の収入を得ていました。それにもかかわらず、なぜ貯金残高が0円だったのでしょうか。

まず気になるのがその支出です。2人で暮らす家は、大きな駅から歩いて7分ほどの距離にあり、相場以上の家賃。その駅には駅直通の大きなショッピングモールがあって便利なだけでなく、2人が出会った場所としての思い入れがあり、ここをどうしても離れたくなかったと言います。

最近では再開発も進んで利便性が向上しており、都内へのアクセスのよさもあって人気が高まっている街でした。2人の気持ちはわかりますが、相場よりも2~3万円も高い家賃は2人の家計を明らかに圧迫していました。

また、電気代やガス代、水道料金も平均より高く、家電製品が多いのも特徴です。まず、2人が好きなコーヒーがいつでも楽しめるようにと、2つのコーヒーマシンがありました。また、暖房器具もエアコンとは別に2つの部屋においてあり、テレビも2台。確かに快適に生活できる環境ではありますが、家具・家電が多いとその分大きい部屋を借りなければなりません。

彼らの収入を考えるときっと何かを我慢する必要があったのでしょう、最寄り駅が譲れないのであれば徒歩10分、15分圏内にするだけで家賃は大きく変わります。家電も少し贅沢すぎるように思われます。収入が少ないわけではないために、かえって生活水準が上がってしまい、「何かを我慢する」という感覚が抜け落ちてしまったようです。

金銭感覚が一致しすぎることも問題か

この2人、実は2人ともお金がかかわる問題に対して非常におおらかです。言い方を変えれば、お金に対してそれほど執着しません。ケチという言葉と正反対にあるのです。共通の趣味にはお金をかけていますし、国内旅行も「マイカーだから新幹線よりも安い」と毎月のように出かけていました。

金銭感覚が合わない人と付き合うと苦労する、とはよく言われることですが、金銭感覚が一致しすぎても別の意味で苦労することがあります。お互いに節約を知らず、あればあるだけ使ってしまうというのは、そのときは楽しいですが、年齢が上がってから後悔することも多いのです。

2人のうち、どちらかが手綱を締めることができる人であればこうはならなかったでしょう。毎月お互いに12万円を超える金額を同棲費用として拠出していたのですが、それも家賃、公共料金、通信費、食費に消えており、時には足りなくなる月も。残った場合はお互いのお小遣いとして利用していたようですが、2人とも貯金には無頓着で、貯金について話をしたこともないとのことでした。

結婚や引っ越しという「当たり前」のことができない