2018年5月9日に行われた、ソフトバンクグループ株式会社2018年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役会長 兼 社長 孫正義 氏

Yahoo! Japan 広告収入

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孫正義氏(以下、孫):次に、もう1つの日本の中核的企業の1つがYahoo! JAPANです。数日前にYahoo! Japanの川邊(健太郎)くんが決算発表をしておりますが、先行投資をします。先行投資をしまして、ショッピングの顧客を増やす。そういうことを今やろうとしておりますが、基本的に戦略的方向は正しいと思っております。

また、従来のメインの事業であります広告事業は、コンスタントに順調に伸ばしています。

Yahoo! Japan ショッピング事業 取扱高

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また、ショッピングも顧客獲得のために先行投資をしております。その結果、それまで横ばいであったYahoo! ショッピングが、急激にこの3年間で、日本でもっとも伸びている大きなスケールのショッピングサイトになっている。

先行投資は、決して無駄な投資ではないと我々は思っているわけであります。実際に、結果がこういうかたちで現れてきている。

Yahoo! Japan ショッピング広告収入

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また、ショッピングにおける広告収入も、結果どんどん伸びているということであります。

Yahoo! Japan Yahoo! プレミアム 会員ID数

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Yahoo! プレミアム。AmazonにはAmazonプレミアムがありますけども、Yahoo! プレミアムはYahoo! JapanがAmazonよりも先に初めたんじゃないかと思うんですけども。このYahoo! プレミアムの顧客数もどんどん伸びてきて、とくに最近はソフトバンクモバイルとの連携を深め、高めることによって、Yahoo! プレミアムの顧客数が一気に伸び始めています。

Sprint サマリー

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さて、冒頭で申しましたようにSprintは、Tモバイルと合併をすることになったわけですが。聞いてみると、Sprintは創業以来119年経った会社なんです。日本では、もともと名前の馴染みは薄かったかもしれませんけども、なんと119年の歴史があって。

実は今回の営業利益は……この119年のSprintの歴史の中で、いちばん大きな利益を営業利益を出したのが、今年だそうです。

ということは、119年もそんなに儲かってなかったのかと(笑)。こう捉えることもできますが。

とにかく119年の歴史の中で、過去最大の営業利益を出したのは、マルセロは「マサ、ぜひこれを言っておいてくれ。がんばったんだ、俺たちは」と盛んに言っておりましたので、彼からの伝言として、ここは1つ強調しておきたいと思います。

また過去11年間の中で、最終利益が黒字になったのは11年ぶりでEBITDAも最高になりました。

Sprint OPEX(サービス売上原価+販管費)

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なぜかと言うとOPEX……費用をコンスタントにマルセロ体制になって下げることができた。

Sprint 調整後EBITDA

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とくに、EBITDAが倍増した結果、営業利益が3,000億円近くになった。日本円で2,900億円、ドルで言うと2,7ビリオンドル。これは、Sprint119年の歴史で過去最高と。

Sprint 営業利益

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ご覧のように、ほんの2年前までは赤字だったんですよね。赤字がずっと続いてたんです。11年間も赤字だったんです。

そういう状況の中から、過去119年で最高の営業利益というのは、「Sprintはお荷物だ。(その)お荷物の会社がTモバイルと合併して、お荷物がいなくなってよかったね」と思われている方がたくさんいると思いますが、実はSprint単独でもそれなりにがんばってたんだということを、ぜひ再認識していただきたいと思います。

Sprint 純利益

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税引後の利益でも実は黒字です。(グラフで)薄く書いてあるところはトランプ税制による一次的な部分ですから、これは我々も差し引いて考えようと。

でも、安定的な本来の税引後の最終利益としても、ちゃんと黒字化したんだと。「1円でもいいから黒字にしよう」というのを、我々の合言葉としてやってたわけですが、最終利益でも黒字になっている。

Sprint 調整後フリーキャッシュフロー

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フリーキャッシュフローは2年連続して黒字ということで、1,000億円のフリーキャッシュフローの黒字。しかも2年連続。この(グラフの)角度を見ていただけば、着実にソフトバンクグループになって、マルセロ体制になって好転したとお分かりいただけると思います。

Sprint 平均ダウンロード速度 増減率

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しかも経費を下げただけじゃなくて、ちゃんとネットワークも改善した。ちゃんと顧客の獲得も増やしたということであります。

Sprint 018年度 見通し

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ということで、Sprintは着実に改善し、EBITDAやキャッシュも見通しとしても十分いける状況になった。

Sprint投資の実績(円による借入)

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「Sprintに投資して、損をしたんではないか?」と見られている人が、これまたたくさんいますが。ソフトバンクがSprintを買収しました。買収したときのドルで言うと、確か7ドルだった気がします。

(2018年5月9日)現在5ドルぐらいだから、ドルで見ると「買ったときよりも損した」と。こう見てる方が、たくさんいると思います。それは1つの事実です。でも実際は、ソフトバンクが親会社として円で借入をして、円でドルに転換して買収したわけです。

ですから我々の借入は円なんです。円の借入を返さなきゃいけない。円で我々が資本も入れたわけです。ソフトバンクが持っているお金は、円で持ってたわけです。

円換算で見ますと、我々が2兆円で買い物をした。現在2兆2,000億円になっているということは、借入が同じ額であったとしても、我々の株式価値の部分は、実は(取得原価の)3,800億円が(現在は)5,300億円に増えたということで、1,500億円ぐらい儲かってる。

これは合併後の合併シナジーが出る前の状況で、こういう状況です。合併シナジーが何兆円分か出てると我々は思っております。

今回、我々は「売り払った」わけじゃなくて「合併をした」ということですから、合併後の株式を持っています。持っている27パーセントの株式価値が、合併後のシナジーでこれから増えると、我々は思っております。

ですから、この我々にとってエクイティ部分、株式部分の5,300億円が、倍増あるいは何倍増になると私は信じているから、株はまだ売らない。Sprintの株は手放さないというのは、そういう背景です。

でもとりあえず、途中経過の状況ですが、決して損してる状況ではないということを、みなさんに1つご理解いただきたいと思います。

合併に合意

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さて、この2社が合併を発表しました。

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合併発表の直後の写真がこちらです。「(本当に)上場会社の社長2人が並んだ写真か?」と、なんかロックバンドの結成式かなにかのような、そういう見方で笑ってる人がたくさんいますが(笑)。まさにそんな感じの2人です。型破りの2人です。

この型破りの2人が手を結んで、そしてこの2社がこれから大競争を仕掛けていく。大競争を仕掛けていくということは、アメリカの国民・ユーザーにとっても、その大競争の結果、より価格が安くなる。あるいは、より5Gのネットワーク競争が高まって、アメリカの国民にとっては、大いにプラスではないかと思うわけであります。

取引概要

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さて、合併の結果がどういうかたちかというのは、すでに報道されていると思います。ソフトバンクの持株比率は27パーセントになります。そして、我々の取締役派遣の数は4名の枠を持つ。来年(2019年)の前半に合併の正式完了見込みだと、我々は今思っています。

経済持分

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この株主構成は、こういうかたちになります。

途中で何ヶ月か前……半年ぐらい前に交渉が破談しました。そのときにソフトバンクの取締役会としては、熱い議論をしたわけですが。「我々の経営権を手放すべきではない。せめて対等の権利を持つべきだ」ということで、喧々諤々とやって、我々としては先方にもそのことを伝えて……結果、破談になったわけです。

その後、今回やっぱりもう一度交渉して、テーブルについて、いろんな条件を交渉して、合意したわけです。

何を妥協したのかというと、「せめて、経営権を対等に持ちたい」ということを妥協したわけです。妥協するということは、ある意味恥ずかしいですよね。

「孫はあれほど経営権にこだわった。『これからも持ち続けるんだ』と胸を張って言ってたのに、たった半年やそこらで、まだ舌の根も乾かぬうちに、突然変異した。やっぱりアイツは信用の置けない奴だ」と。

こういう評価をいろいろされていると思いますが、それはそれで恥ずかしい思いも、私はあえてわかった上で飲み込む。一時的な恥、一時的な退却というのは、それは長い意味での勝利、大きな意味での勝ちを取れるのであれば、一時退却は恥ずべきことではないと、私は思っています。「また言い訳を言ってる」と言われる人はいると思いますが。

とにかく解説はさておき、結果はこういうことであり、私はあえて非難を受けてもかまわない。これは正しい判断だと思っております。

それはなぜかと言うと、冒頭に申し上げた群戦略の部分が非常に大きい。大きな根本的戦略は、群戦略だということであります。その大きな戦略の組織論からすると、これは正しい判断を今回したと思っているわけです。

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じゃあ、どんなシナジーだとか貢献があるのかということであります。この合併が何を意味するのか。4つありますが、大競争の中で、まずネットワーク競争があります。

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5Gのネットワーク競争が、これからアメリカで行われます。この5Gの競争は、アメリカが世界の中でも最も重要な、先進的で大きな市場ですけども。この次世代のネットワークが、やもすると遅れがちである。日本や韓国、あるいは中国に比べてでも、アメリカのネットワークは遅れがちである。それでいいのかということです。

5Gの特徴

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それに対して、今IoTが一気に始まろうとしているわけです。IoTが始まると、つなぐべき端末が、人間が「しゃべるため」「インターネットに接続するため」の端末の数から、IoTでさまざまなデバイスが、みんな通信をし始める時代に変わるわけですから。一気につながるべき機器数が、爆発的に増えるわけです。

爆発的に増えるときに、4GのLTEのネットワークでは、それをさばけないところまでくるわけです。ですから、5Gのネットワークに1日も早く転換することは、たいへん重要なことであります。

さらに(重要なのは)スピード、ネットワークのキャパシティ、そしてレスポンスタイムです。ディレイ、レイテンシです。レスポンスタイムが一気に早まらなければいけないということです。(影響するのは)例えば自動運転とか、いろいろありますね。レスポンスタイムが遅いと、いろんな問題がこれから発生し得るわけです。

ですから、そういう意味で、この5GのネットワークはIoT時代に欠かすことができない、AI時代に欠かすことができないものになってくるわけですが。

5Gの可能性

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その競争を一気に、この合併後の新会社がリードしていく。スマートシティ、自動運転。さまざまな機器に、IoTとしてリードしていく。

初の全米5Gネットワークを構築

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それをリードするためにふさわしい、電波の周波数。これを2社合わせると、全米でも最も強い電波の組み合わせを持っている。5Gの時代になったときに、一番力を発揮する電波が2.5ギガヘルツ帯になります。この2.5ギガヘルツ帯を一番たくさん持っているのが、Sprintであります。それと、T-Mobileが持っているローバンド、それからミリバンドです。

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この部分を足すと、最強の組み合わせができる。したがって、最強の5Gのネットワークを作れるのは、この会社であるということであります。

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また、統合シナジーもどんどんと出てくる。したがって、5Gの時代にアメリカで最もリーダーシップを発揮するのがこの新会社であり、アメリカが通信のインフラとしての世界のリーダーシップを取り戻すのは、この合併によってもたらされるということであります。

統合によるシナジー

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さて、次にシナジー効果です。シナジー効果は先ほど何兆円と言いましたが、約5兆円弱のシナジー効果がある。この2社による合併後のシナジー効果が、約5兆円弱ある。ネットワーク、セールス、そしてバックオフィス。

足して、現在の資産の売上、そしてEBITDAの利益マージン。40パーセントぐらいのものが、50パーセントを超えるところまでいく。

統合会社

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さらに、売上も急激に増えていく。場合によっては、アメリカでナンバーワンの会社になることも不可能ではないというところが見えてきた。

フリーキャッシュフロー(統合会社)

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フリーキャッシュフローも、一気に増えている。先ほど言いましたように、Sprintはやっとフリーキャッシュフローでプラスになったばかり。合併後の会社も、すぐはフリーキャッシュフローは小さいです。しかし、合併後のシナジーによって、フリーキャッシュフローが一気に高まってくる。

小さい会社でも、ネットワークは全米に持たなきゃいけないんです。SprintはSprintで、他の3社に比較して負けないだけのネットワークを持たなきゃいけないんです。T-MobileはT-Mobileで持たなきゃいけないんです。それぞれが別個に持たなきゃいけないのに比べて、新会社は足して1つの、より強力なネットワークを持てばいいわけです。

ですから、当然ネットワークの投資に対する経営効率は、大雑把に言うと倍よくなっていく。ですから、当然フリーキャッシュフローは一気によくなる。固定費の効率もよくなるだけではなくて、設備投資に対する効率も一気によくなるということで、フリーキャッシュフローは高まる。

だから、我々が今回、合併後の会社を27パーセント持つのを、すぐには売りたくないというのは、このアップサイドが期待できるから売りたくない。今(2018年5月9日時点)の株価で計算しても、実は損ではなくてプラスだけど、持ってることによってアップサイドが大いに期待できると、我々は思っているということであります。

大競争戦略の構築

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次に、大競争ですが、我々はナンバーワンを目指しています。ナンバーワンを目指すのに、今までSprintがいくら虚勢を張ったとしても、AT&Tやベライゾンを抜くのは戦略的にも構造的にも、100回飛び跳ねても難しいのが、今までの状況だったわけです。

しかし、今回合併することによって(戦えるようになる)。さらにそこで値段を高いまま、あるいは高くするということでは、国民に対する貢献は小さいわけですが。我々は合併することによって、さらに価格も大競争を仕掛けていくことによって、マーケットシェアを増やせる。1位を狙うということです。

高付加価値の商品も出しながら、さらに価格でも勝負していく。決して安心する、安住するのではなくて。これから競争は、このベライゾンやAT&Tだけではなくて、ケーブルカンパニーのコムキャストもワイヤレスの通信に入ってきます。さらに、チャーターも……同じコムキャストと競争しているケーブルの、アメリカで2位の会社ですけれども。こちらも、ワイヤレスの世界に競争で参入してきました。

ですから、今まで4社あったのが、5社、6社、7社と競争相手の数は増えるわけですけども、AT&Tやベライゾンに負けない規模の会社を作ることによって、さらにネットワーク競争を仕掛け、さらに価格競争を仕掛ける。

大競争戦略の源泉

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その価格競争を仕掛ける経営的な源泉としては、規模の経済とネットワークのキャパシティ。これがあるから、価格競争を仕掛けられる。

関連領域

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マーケットシェア1位を狙いに行くところを背景として、決して虚勢を張ってるわけではなくて、構造的にそういうことができるようになるということで、ワイヤレス・ブロードバンド・ビデオと、競争の範囲を広げていく。

5G早期展開

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アメリカへの貢献としては、5Gの早期展開ということで、雇用を300万人ぐらい(見込んでいます)。5Gの直接的な建設、あるいはその他で300万人ぐらい出るし、5G競争が各社が行えば、55兆円ぐらいの経済効果があるという試算もなされています。

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また、その雇用をさらに加速するために、いろんなものがある。ということで、T-Mobileとスプリントの合併は、大いに意味のあることである。我々にとって、売り抜けるとか逃げるとかいうことではなくて、より大きな結果を出すための戦略的な意思決定であると。

一方、もともと我々が狙ってたのは、T-Mobileを買収して、我々が完全コントロールを取って、我々がそのためにプレミアムを30パーセントや40パーセントを払う覚悟で、当初は交渉していたわけです。今回は、向こうからプレミアムをもらう側です。

ですから、経営のコントロール権、意思決定権という意味では向こうに譲ったかたちになってますが、その分我々は、プレミアムを30パーセントも40パーセントも余計に払う側から、プレミアムを受け取る側になったわけです。

ですから、経済的な面で行くと、それはそれで悪いものではない。群戦略の中の一環としては、一部譲って一部取る。トータルで見ると、誤差の範囲だ。そういうことです、言いたかったのは。

Armベース チップ出荷数

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次に、armです。armも、大きなお金をかけて買収をしました。あまり言いたくないんですけども、いろんな弊害もあるかもしれませんが。

armはみなさん全員がポケットに持ってるであろうスマホ、あるいは携帯電話のチップのマーケットシェアが、世界でほぼ100パーセントの会社です。

重要な製品あるいはサービスの中で、世界マーケットシェアが100パーセントの会社って、みなさんは何社思いつきますか? 塩でも砂糖でもチョコレートでも、水でもいいから、何か重要ななくてはならないものを、世界市場の約100パーセントのマーケットシェアを持っている会社で、どれほど収益を稼げるか?

しかも、それが伸び続けている業界であると。それであれば、1社で世界中の塩を独占しているということになったら、相当巨大な価値を持つ会社になります。

それが、しかもくだらない小さな製品とか商品とかサービスではなくて、もうなくてはならないほど重要な製品になったスマホだとか携帯のチップの、ほぼ100パーセントのシェアを持っている。そのarmが、ソフトバンクの傘下に入ったと。どれほど私がそれを戦略的に重要であり、その意味を喜んでいるかということですが。(チップ出荷)数も着実に伸びてきて、年率20パーセント伸びています。200億個出荷しているわけです。

世界中の人口の数が70億人ですから、世界中すべての人が、1年間で3個のarmを買ったことになるんです。みなさん、そういう意識ありますか? ないでしょう? 「私はこの1年間で、armを3個も買ったっけ?」と。なんか、イメージがわかないでしょう? たった1年間で世界中の人々を平均して3個ということは、先進国の人は5個くらい買っているわけです。

みなさん、先進国の日本人として、「1年間で俺はarmを5個買ったか?」と。赤ちゃんとかお年寄りを含めて、世界70億人です。そういうことを考えると、いかにarmの存在が大きいかということであります。

arm 売上高

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売上も8パーセント伸びています。

arm 仮想SIMカード

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さらに重要なのは……例えば、みなさんのスマホの中に、SIMカードがありますね? SIMカードが全員入っているわけですけれども、IoTにおいて、SIMカードがあって。このSIMカードが、けっこうでかいわけです。そして、さらにコントロールするためのマイクロプロセッサが別個あってと。今までだと2個チップが必要だったんです。通信するためのIoTデバイスは、最低2個チップが必要だと。その最低2個チップが必要だったのを、ニコイチにして、1個にまとめたと。

ここに薄く、四角くげじげじ(iSIM)が出ていますけれども、これがいわゆるarmのマイクロプロセッサです。マイクロプロセッサのarmのチップの中にSIMのチップが、iSIMということで内蔵されたと。ワンチップ化されて、armのコアの中に入れてしまったと。

ということは、IoTのチップの中でも世界中の8割か9割、すでにarmのマーケットシェアがあるわけですけれども。そのIoTのチップは、これからSIMが、armのSIM……つまりソフトバンクのSIM、つまりSprint/T-MobileのSIMが、自動的に内蔵されることを意味するわけです。

そうすると、人間がネットワークにつながるだけではなくて、モノがネットワークにつながると。モノがつながるネットワークの数は、1兆個くらいになると。

つまり、1兆回線がIoTでネットワークにつながる。1兆回線に、armのSIMが入っている。つまり、ソフトバンク、Sprint/T-MobileのSIMが、自動的に入っていると。これが戦略的に何を意味するのか? 賢い人はすぐわかる、賢くない人も少しずつわかるということであります。

arm Project Trillium

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ということで、我々は「Project Trillium」と。Trilliumとは、1兆という意味です。IoTのチップが1兆個になると。この1兆個のIoTのチップに、AIの機能を実装可能にする。機械学習、AIの機能をチップレベルにまで実装可能にするのが、「Project Trillium」であります。それを全部、通信でつなぐと。iSIMで通信でつなぐというのが、この「Project Trillium」です。しかも、自動的にどんどん賢くなる。

今から30年たつと、このarmを中心として、「ソフトバンクはやっぱり賢かったんだ」と。30年経つと、おそらくみなさんも身にしみて、理解を深めていただける……? 「身にしみて」というと、ちょっと日本語が違う。日本語の表現を間違えました。じわじわと……? まあいいですね、もう(笑)。

(会場笑)

孫:とにかく、30年経つと、おもしろい世界がやってくるということを申し上げたいと思います。

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1兆個のarmのチップがAI化し、iSIMで自動的につながり、我々のクラウドにつながると。さまざまな製品にどんどん乗り始めました。

arm 2018年度見通し

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そのために、今armは先行投資をして、エンジニアの数を一気に増やしています。ソフトバンクの傘下に入って、上場を取りやめて、今プライベート化しています。このプライベート化した会社に、今一気にエンジニアの数を増やしています。

それは、自信があるからです。armは今から5年後、あるいは7年後に、そのくらいの時期にもう一度上場させます。そのもう一度再上場させるときは、armは生まれ変わったほどに、高収益を稼ぐ会社になると。armは生まれ変わったほどに、その役割が一気に広くなり深くなるということが、我々の戦略であります。そのための先行投資をしています。

Alibabaグループ 売上高

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Alibabaです。もうご存じのとおり、まだまだ伸び続けています。売上が58パーセント伸びて。

Alibabaグループ 純利益(税引後)

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純利益が44パーセント伸びて。

Alibabaグループ フリーキャッシュフロー

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フリーキャッシュフローも44パーセント伸びていますが、絶対額を見てください。Alibabaのフリーキャッシュフローは、もはや1兆7,000億円。しかも、一気に伸びているということであります。

どれほどの会社が、この1兆7,000億円というフリーキャッシュフローを出し、しかもこれくらいの勢いで伸びているかと。私がAlibabaの株をあまり早く手放したくないというのは、こういう意味であります。

Softbank Vision Fund

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さて、そろそろ話をまとめたいと思いますが。

ソフトバンクのVision Fund、非常にうまくいっています。三十数社になりました。この三十数社のうち、いくつか例を出して、解説をしたいと思います。全部解説すると、それこそ3時間、4時間かかりますので、代表的なものをいくつかだけ、今日は解説をしたいと思いますが。

WeWork 売上高

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WeWorkは、急激に伸びています。我々はVision Fundの中でも、この会社が中核的な会社になると思っています。年平均の成長率が、129パーセントであります。

Paytm 総取引高

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Paytm、これも急激に伸びています。

OYO 宿泊数

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また、OYO、これがまた急激に伸びています。非常に期待している会社です。

Auto1 総売上高

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Auto1、これも伸びています。

Compass 取扱高

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Compass、こちらも伸びています。

Improbable

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Improbableも伸びています。ということで、Vision Fundの会社は、一つひとつ挙げればきりがないんですが、ものすごい勢いで伸びています。

我々のソフトバンクの18年間の、私自身が自分の時間の3パーセントぐらいを使って投資をしてきたわけですけれども、アリババその他ですね。

IRRが44パーセントでしたね、この18年間。11ビリオンを投資して、200ビリオンぐらいリターンがあったので、44パーセントのIRR、利益が毎年複利で伸びていったということになりますが。

少なくともVision Fundは、まだ最終クローズしてませんから、正式な数字は公開できませんけれども。今までの私自身のIRRの実績に、実はこの1年間は、それを上回る規模の収益率、年間換算のIRRでいきますと、それを上回るペースで今推移してます。

少しよすぎるぐらいの結果が出てますので、そのよすぎるのが毎年続けられるとは思ってませんけれども。少なくとも、今までの我々の実績に匹敵するぐらいのペースを、今後も期待できるのではないかというぐらいの手応えを感じていると。非常に、Vision Fundをやってよかったと思っています。

ライドシェア

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とくにこれから大きくなっていくのが、ライドシェアの部分ですね。Uber、Didi、Grab、Olaと。このライドシェアというのは、自動車産業のこれから業界地図を丸ごと塗り替えてしまうというぐらい、大きなインパクトを与えると私は思ってます。

その部分で、世界中の圧倒的大きな規模が我々のグループが持っているというかたちになります。

GMV

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売上・取扱にして、すでに7兆円ぐらいの取扱金額になっています。お客さんが払った運賃で、すでに7兆円規模です。

これ、みんな未上場です、我々のグループの傘下に、今はあるわけですけれども。しかもそれが、年率平均100パーセントぐらい伸びている。もう恐ろしい勢いで伸び続けていると。みんな近い将来上場することになると思いますが、たいへん期待をしていると。

その分野の業界全体で、我々が筆頭株主であるということであります。

乗車回数/日

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1日当たりの乗車回数という意味でいいますと、すでに1日当たり3,500万回を超えていると。しかも、年率倍々ゲームで伸びていると。もはや、世界の圧倒的最大の半公共的な交通機関になったと。

我々が、世界で圧倒的最大の交通機関になったというぐらいの状況ではないかと、思うわけであります。

MOU調印(2018年3月27日)

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さらにサウジアラビアの皇太子と(2018年)3月末、世界最大のソーラー発電のプロジェクト、200ギガワットについての覚書調印をさせていただきました。これは、世界最大の規模になります。

これから、太陽光発電……「200ギガワット」というと、原発に直すと、ピーク時の発電の量は原発200基分相当。日本で原発30基ですね、存在しているのは。今はほとんど稼働してませんが。それの200基相当分ぐらいを、サウジアラビア1ヶ国でピーク時の発電量を持つということが、どれほど大きなインパクトを与えるかということであります。

我々としては、非常に重要なプロジェクトになると思っています。こちらもVision Fundの投資先の1つになります。

群戦略

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ということで、我々の「群戦略」というのは、従来の日本、あるいは韓国にあるような財閥モデルと似て非なるもので。

あくまでもブランドを統一せずに、あくまでも51パーセント以上の持株比率にこだわらず、むしろ20~30パーセントぐらいをスイートスポットとして、しかもそれぞれ全部分野ごとに世界ナンバーワンの会社ばかりを集めていると。

それが、我々の「群戦略」であります。

従って、より喜んで各社がシナジーを出し合うというのが「群戦略」であります。この「群戦略」は、冒頭で言いましたように、こういうのを戦略的に意図的に、組織論として設計し、それを実践し始めているのは我々1社だけだと。世界で初の会社だと。まったく新しい組織体系を私は発明したんだと、実は思っています。

それを、正しいモデルだとみなすのか、間違ったモデルだとみなすのかは、歴史のみがこれから証明するんだろうと思います。

私は300年経ったら、「あれは正しいモデルだったね」とおそらく思っていただけると思うし、このモデルを正しいと思い、これを真似するという組織も現れてくると思います。それはそれで、いいだろうと思いますね。

少なくとも、我々がそれをやり始めた1社目の会社であり、しかも10兆円規模のVision Fundをつくり、それをさらにこれから拡大していこうということで、狙っているわけであります。

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我々は、この方向で突き進んでいくと。なぜならば、我々は30年でピークを迎えようとしているグループではなくて、300年成長し続けて、「情報革命で人々に幸せを」という理念のもとに走り続けると。こういう組織でありたいと思うからであります。

以上が、私の説明でございます。ありがとうございました。

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