スルガ銀行がシェアハウス融資問題に関する社内調査結果を発表

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズ社の経営破綻に端を発した、いわゆる“シェアハウス融資問題”(参考:『スルガ銀行の株価暴落!「かぼちゃの馬車」投資トラブルの波紋』)が重大局面を迎えました。

このシェアハウス投資に関して個人向けに多額の融資を実施していたスルガ銀行は15日、決算発表の記者会見で社長自らが社内調査の結果を発表。それによると、同行の相当数に上る行員が融資審査書類の改ざんを認識していたこと、融資残高を伸ばしたい営業部門が審査部門に恫喝など圧力をかけていたこと等が明るみになりました。

なお、一連のシェアハウス投資にかかわるスルガ銀行の融資金額は、顧客1,258人に対して約2,035億円となっています。単純計算では1人当たり約1億6,200万円を融資したことになりますが、これは通常融資とは言い難いという印象は否めません。

一貫して否定していた不正融資への関与を事実上認める

さらに、記者会見で社長は、企業法務に詳しい弁護士を中心とした第三者委員会の調査に全面協力をすることも表明しています。

それまで一貫して否定していた不正融資を、経営トップの社長自らが認めたことで、今後はスルガ銀行に対する金融庁の対応が焦点となるでしょう。第三者委員会の調査結果次第では、業務停止命令を含む大規模な業務改善命令は避けられないと予想されます。

なお、社内調査の結果発表を受けて、翌16日のスルガ銀行の株価は一時▲14%安(前日比)に迫る暴落となり、終値も▲10%超安で引けました。

この1週間のスルガ銀行の株価推移

ところで、スルガ銀行ってご存じでしたか?

ところで、今回の不正融資問題で厳しい批判の矢面に立たせられたスルガ銀行をご存じでしたか?

静岡県と神奈川県以外の方にとっては、“名前だけは聞いたことがある”、“今回の不正融資で初めて聞いた”という人が多いかもしれません。まずはスルガ銀行について簡単に説明しましょう。

スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を構える地方銀行です。国内133店舗(注:インターネット支店11店舗含む)のうち、静岡県に66店舗、神奈川県に39店舗を有する、まさしく社名通り“スルガ(駿河)”地域を基盤としています。

東京都内に6店舗を有していますが、その他の道府県には各々1店舗あるかどうかですから、見たことや聞いたこともない人がいても不思議ではありません。

預金・貸出残高で見れば地方銀行では中位に過ぎない

さて、地方銀行としての規模はどうでしょうか。

銀行の規模を測定する指標については議論がありますが、最も一般的な指標である預金残高は約4兆円(平成28年3月期、以下同)、貸出残高は約3兆1,000億円程度となっており、これは地方銀行64行(注:第二地銀を含まず)のうち概ね中位にランク付けされます。

ちなみに、最大手の横浜銀行が属するコンコルディア・フィナンシャルグループの預金残高は約14兆9,000億円、貸出残高は約11兆7,500億円ですから、同じ地方銀行でもその規模の違いが明らかです。

少なくとも、規模を見る限りでは、特筆すべき地方銀行ではないように思われます。

特筆すべきは地方銀行では群を抜く高い収益性

一方、収益性はどうでしょうか?

実は、結論から言うと、スルガ銀行はその収益性の高さで注目を集めてきました。実際、株式市場において、メガバンクを含めた銀行株の中でもスルガ銀行株は、その高収益性から注目銘柄として目を向けられてきたのです。

銀行の収益性を表す指標にも様々な議論がありますが、代表的な指標である総資産業務純利益率を見ると、スルガ銀行は何と堂々の第1位です。しかも、スルガ銀行の1.42%は、第2位の南日本銀行の0.59%や、最大手の横浜銀行(コンコルディアFG)の0.52%と比べても、一段別格の高収益であることがわかります。

さらに、経常利益額(平成28年3月期)は544億円で第5位にランクされています。ちなみに、第1位は横浜銀行(コンコルディアFG統合前)の1,084億円ですから、スルガ銀行の収益性の高さが確認できると言えましょう。

スルガ銀行の高収益性はどこからくるのか

では、スルガ銀行の高収益体質はどこから生まれてくるのでしょうか。各行の有価証券報告書には限られた情報しか開示されていませんが、スルガ銀行が有価証券やデリバティブで大きな運用益を上げた形跡はありません。

また、海外事業も非常に小さいことを勘案すると、国内での貸出業務、とりわけ、個人向け融資で高い利ザヤ収益を上げていたのではないかと推察されます。

シェアハウス融資問題は特異な例外事案? それとも氷山の一角?

ただ、個人向け融資が相対的に高い利ザヤを稼げるのは他行も同じであり、スルガ銀行に限ったことではありません。そうだとすると、今回の問題で明らかになったように、過大・過剰な融資実施により収益を上げていた可能性は残ります。

その過大融資の一部が深刻な問題として炙り出されたとすれば、今後も同じような返済困難(銀行側から見れば回収困難)に陥る事案が続出する懸念は拭えません。

今回のシェアハウス問題が極めて特異な例外事案だったのか、それとも、氷山の一角だったのか、今後明らかになるでしょう。また、同じようなことが、他の地方銀行に起きる可能性も否めません。当面は、このスルガ銀行の実態調査から目が離せそうにありません。

LIMO編集部