5月8日、サントリービールが新たなノンアルコールビール商品「オールフリー オールタイム」を発表し、議論を呼んでいます。というのも、それが「職場でも気兼ねなく飲める」ことをコンセプトにつくられた、ペットボトル入りの透明なノンアルコールビールテイスト飲料だからです。

パッケージには「ランチに」「会議中に」「スポーツの後に」といった文字が並んでいますが、その賛否は大きく分かれているようです。

仕事中にビールなんて……

「ノンアルコール飲料を仕事中に飲んでも良いか否か」という議論は、ノンアルコールビール飲料が発売され始めた2011年ごろから続いています。

昨年にはネット掲示板「発言小町」上で、「職場で休憩時間中にノンアルコールビールを飲んだら会社を休まされた」と怒り気味の女性の書き込みに対して、「勤務中に飲むなんて非常識」「『飲みたい気分』を我慢できずノンアルコールビールを飲んでしまう感覚が恐ろしい」などの批判が殺到するといったこともありました。

先日のサントリーの発表を受け、Twitter上では「仕事中にまでノンアルコールビールを飲みたいとは思わない」「そうまでして飲みたい時点でアルコール依存症予備軍では?」といった否定的な意見が多く見られます。アルコールの有無ではなく、「勤務中にアルコール飲料に準じたものを飲む」という就業態度を問題視する人も多いようです。

ビールではなく「無糖炭酸」として

対して、「アルコールが入っていないんだから好きなものを飲んでいい」といった賛成の声もあります。また、サントリーではノンアルコールビール専用自販機が設置されているそうで、開発担当者は「クライアントとの打ち合わせで出すことで雰囲気が和やかになるほか、業務の合間に飲んでリフレッシュできる」と話しているといいます。

今回の透明なビールテイスト飲料の発売背景には、近年の「ビール市場の縮小」があると考えられます。ビールの出荷量は年々減少し、その歯止めとして期待されてきた第3のビールも伸び悩み始めています。一方で、ノンアルコールビールの出荷量はここ数年で急増しています。

こうした傾向と、近年の無糖炭酸飲料の人気を鑑み、ノンアルコールビールを「ビールの代わり」としてではなく、「無糖炭酸飲料」の一つとして市場を広げる狙いがあるようです。

問題はアルコールの有無ではない?

確かに、ノンアルコールビールは法律上でも「酒類」ではなく「清涼飲料水」として扱われるものの、コンビニやスーパーでは酒類コーナーに置かれています。また、商品カテゴリーに「ビール」とある以上、無糖炭酸飲料として見なされることも難しいでしょう。

加えて、「勤務中にノンアルコール飲料を飲んでも良いか否か」という問題の本質が、アルコールの有無ではなく、就業態度やモラルにあるのなら、いくらノンアルコール飲料を工夫したとしても、意味がないようにも思われます。

透明なノンアルコールビールの発売は来月からとのこと。今後の動向に注目したいところです。

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