スマートフォンや電子機器で楽しむゲームは世界中で大人気ですが、それは自分自身がプレーする「娯楽」としてのみではありません。

現在では複数プレーヤーによる対戦型コンピューターゲームは「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」とも呼ばれて、「スポーツ競技」の一つとして地位を築いています。その人気や競技人口は年々拡大していて、サッカーやバスケットボールなどのメジャースポーツにも匹敵するほどです。

任天堂やソニーといった企業が本社を構え、ゲーム産業では世界トップクラスとも言える日本ですが、eスポーツに関しては「後進国」と呼ばれてしまっています。eスポーツにおいて、世界と日本のどこに違いがあるのでしょうか?

優勝賞金なんと10億円以上!

eスポーツが注目されている理由は、その競技人口と集客力にあります。統計によっても異なりますが、現在推定されているコンピューターゲームの競技人口は7000万人とも1億3000万人とも言われています。野球の競技人口は3500万人と推定されていますから、eスポーツはその2倍から3倍超ということになります。

さらに、動画配信サイトでの「ゲーム実況」などが有名になり、ゲームを「見て楽しむ」人が増えてきて、観客の増加も見込めています。

そして何より驚愕なのが、eスポーツの大会での優勝賞金です。最大規模の大会にもなると優勝賞金は10億円以上、賞金総額20億円以上と言われています。すでに娯楽としてのゲームの域を越えて、経済の面でも世界中の注目を集めています。

オリンピックへの導入も

さまざまなメジャースポーツに引けを取らない人気となってきたeスポーツ。国際オリンピック委員会(IOC)は、2024年開催のパリオリンピックで、eスポーツを競技種目に導入することを検討しています。近い将来、ゲームがオリンピック種目になる日が来るかもしれません。

実際に2018年に開催されるIOC公認のアジア競技大会(アジア大会)では、eスポーツが競技として導入されることが決定しています。中国では普通大学にeスポーツの専門学部を設立したり、韓国では政府がeスポーツを文化として奨励していたり、アジア諸国ではすでに「スポーツ」として広く受け入れられています。そのような背景もあり、アジア大会での導入を試みたのではないでしょうか。

アジア各国とも違う日本の捉え方

近隣のアジア諸国でも認められてきているeスポーツですが、日本はあまり浸透していません。その証拠に、日本オリンピック委員会(JOC)は今月16日に「eスポーツをスポーツとして認めるべきではない」という考えを示しました。

最近は日本でもプロゲーマーが正式に認められたり、バラバラだったeスポーツの推進団体を統合した「日本eスポーツ連合」が発足したりしています。一方で国内では「汗水流して努力しているアスリートと同じとは思えない」「ゲーム依存の問題が深刻になるだけ」「ゲームをスポーツと扱うなんて問題外」など、否定的な意見も多く寄せられています。

日本では、柔道や剣道など武道の伝統があり、「武道とスポーツは違う」という言い方がされることも多くあります。ただ「相撲道」「野球道」という言葉もあるように、スポーツにも「道」という感覚を求めるところもあります。もともと「娯楽」から入ったゲームは、こうした感覚とは多少なじまない点があるのかもしれませんね。

拡大続く市場から置いてけぼり!?

日本人が持つスポーツ観とeスポーツとの相性はあまり良くないかもしれませんが、記事冒頭でもお話ししたように、世界では1つの「スポーツ」として無視できないコンテンツになっています。

eスポーツの市場規模は年々大きくなっていて、今年には約9億5000万ドル(約1050億円)、2020年には約14億ドル(約1550億円)にも上ると予想されています。このままでは日本は拡大を続けるeスポーツ市場に乗り遅れてしまうかもしれないのがちょっと心配です。

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