人生100年時代のセカンドキャリアは、副業解禁の流れに乗って探そう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

中高年社員の副業は、会社も推進したい?

政府が副業を後押しする時代になりました。厚生労働省が今年1月に従来の方針を変更し、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、モデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、「原則的に副業を認めるべきだ」としたのです。

若手や中堅社員の副業は、一部企業を除いては社内の抵抗が強いでしょうから、容易ではなさそうですが、中高年社員に関しては、会社側も積極的に推進するかもしれません。部長、役員の候補は別として、先が見えてきた中高年は、ということでしょうが。

「副業推奨と中高年給与の引き下げをセットで断行する」という企業もあるかもしれません。中高年社員には、高い給料を払えないので、せいぜい副業を奨励して生活を自主防衛してもらおう、というわけですね。窓際族には「会社に来なくて良いから副業に勤しんでほしい」と思うかもしれません(笑)。

そして何より、副業が成功して、セカンドキャリアを見つけてほしい、と思っているでしょう。会社は家族ですから、社員が幸せな定年後を迎えることを祈るのは、会社として自然なことです。しかし、それだけではありません。

人生100年時代ですから、定年延長や定年後再雇用では限界があります。70歳まで雇うとすると、「昔の部下にお仕えする高齢社員」が大量に発生し、仕える側も使う側も困難な問題に直面しそうです。加えて、定年延長の場合には、年功序列で割高になった賃金を払い続けることになりかねませんから、70歳まで雇うのは企業にとって辛いです。

そこで企業としては、副業が成功して、定年後はセカンドキャリアに進んでほしい、と考えるのは自然なことです。場合によっては、定年を待たずに直ちにセカンドキャリアに進んでほしい、というケースもありそうですが(笑)。

サラリーマンにも副業をするメリットあり

サラリーマンにとって副業は、収入源となるばかりではありません。活躍のチャンスが乏しく、先が見えている会社でじっと定年を待っているよりは、新しい活躍の場を見つけるチャンスに挑戦して見ることは素晴らしいことですね。いきなり転職ではなく、副業であればリスクは小さいので、トライしやすいでしょうから、まずトライしてみてから考える、ということが望ましいわけですね。

たとえば経理部の人が中小企業の経理を手伝ってみる、営業部の人が他社の営業を手伝ってみるといったことが考えられます。特に優れた知識やノウハウはなくても、労働力不足ですから、働き口は比較的容易に見つかるでしょう。そして、働きながら周囲の人々に溶け込んでいければ、定年後はそのまま転職すれば良いわけです。社風が合わなければ、別の会社の経理や営業を手伝ってみましょう。いつかは自分に合った会社が見つかるでしょう。

いきなり定年後の転職では、社風の合わない会社であった場合のリスクが大きいですが、副業であれば、別の会社でも働いてみる、といったことが可能です。副業をしながら少しずつ社風に慣れて行く、といったことも可能でしょう。いきなり違う水に放り込まれるより「助走期間」があったほうが順応しやすいでしょう。

起業の準備としても意味がある

老後の起業という選択肢もあるでしょう。大きな資金を必要とする起業は危険ですが、借金をせずに起業できるのであれば、悪くないと思います。その際、必要なのはノウハウです。たとえば夫婦で喫茶店を営みたいという場合、実際に副業で喫茶店に勤めてみて、様々なノウハウを吸収してからのほうが遥かに安全です。

サラリーマンなら誰でも「マニュアル」の重要性を知っているはずです。あれは、過去の先輩たちが数多くの失敗をしたことに基づいて作られた「失敗は成功の源」の実例なのです。したがって、喫茶店に勤めてマニュアルを習得することで、過去の先輩たちが犯した失敗を自分は免れることができるわけです。

老後は物書きになりたい、という夢があるならば、ブログを作りましょう。ブログの人気が出れば、広告を掲載して広告料を稼ぐことも可能でしょうし、著名ブロガーになれば講演や出版の話も舞い込んでくるでしょう。

生活費を稼げるほどの物書きになるのは大変ですが、小遣い稼ぎとボケ防止を兼ねて老後に物書きをするのは悪くないでしょう。知的で刺激的な上に、もしかしたら大ヒットするかもしれない、という夢が持てるだけでも、素晴らしい老後になりそうですね。

さて、社内で活躍する場が乏しい人が、セカンドキャリアで活躍することは、会社にとってもサラリーマン本人にとっても素晴らしいことですが、日本経済にとっても素晴らしいことです。少子高齢化で乏しくなっていく人的資源を有効に活用していける、ということですから。大いに期待しましょう。

海外関係の経験のある方は、顧問として中小企業で働くといった選択肢もあるかも知れません。「サイエスト」という会社なども検討されてはいかがでしょうか。社長の名前が筆者と似ているのが偶然か否かは、読者のご想像にお任せいたしますが(笑)。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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塚崎 公義