離乳食が始まってから多くの親が直面する、子どもの食にまつわる悩み。特によく聞こえてくるのが、「ご飯をちゃんと食べてくれない」というママたちの声です。

もともと食にあまり関心がない子もいれば、食べることは好きだけど偏食が激しい子、あるとき急に好き嫌いが始まった子など、ママを困らせる原因はさまざま。そんなときは無理にでも食べさせたほうがいいのか、3人のママに聞いたエピソードから考えてみましょう。

食べることが嫌いなAくんの場合

「Aは、離乳食のときから食べることがあまり好きではないようでした。母乳と混合のときは良かったのですが…幼児食に移行してからも、2~3口食べたらおしまい。体の線も細いし、栄養が足りないんじゃないかと毎日心配で。ちぎりパンみたいな腕の赤ちゃんがうらやましくて、周囲に『細いね』と言われるたびにストレスを感じていました」

あまりに食べてくれないので、Aくんママは次第にご飯の時間が苦痛になっていったそうです。当時、どのように日々を乗り切っていたのでしょうか。

「あまり言いたくないんですが…とにかくカロリーを摂取してほしくて、アイスやチョコを積極的に食べさせていた時期もありました。ダメなのは分かっていたけれど、私自身の気持ちが追いつめられていたんですね。食べないことに対して、よく怒っていました」

ご飯よりもおやつの量が増えていくことに、焦りや罪悪感もあったそうです。「食べなさい!」と怒ることも増え、ますます食事を楽しめなくなるという悪循環。

しかし、Aくんママの悩みは、ささいなことがきっかけで突破口が開けたといいます。

「ある日ソースを別添えにして出したら、珍しくパクパク食べてくれたんですよ。“ちょんちょん”とディップして食べるのが、楽しかったみたいで。息子は食べることが嫌いなわけではなく、単に興味が持てなかったんですよね。早く遊びたい気持ちが強かっただけ。ソースをつけることで、遊び感覚で食べられたんだと感じました。それから毎日“ちょんちょん”作戦を実行。マヨネーズや味噌など、あえて横に添えて出しました。しつけも量もと欲張らず、食べてくれることを優先して多少の遊び食べには目をつぶりました」

Aくんはちょうど大人のマネをして何でもやりたがる時期で、自分でソースをつけたことに満足感を得たそうです。

偏食が激しいBちゃんの場合

「うちは納豆ご飯しか食べてくれませんでしたよ。どんなに頑張っておかずを作っても、ほとんど食べてくれません。私の料理が嫌いなのかな?と、何度も落ち込みました」

Bちゃんママによると、量的にはしっかり食べるのに作ったおかずは食べてくれない。何も食べてくれないより、もっと気持ちがツラかったとか。見た目をかわいくしても、食べやすく工夫してもダメ。得意だったはずの料理にも、自信が持てなくなったそうです。

そんなBちゃんママを救ったのは、ご主人の言葉でした。

「最初は教科書通りの栄養バランスが取れていないと、ものすごく不安になっていました。でも、あるとき主人が言ってくれたんです。『俺は昔から、トマトや人参が嫌いだ。今でも絶対に食べない。でもこんなに大きくなったし、毎年の健康診断も問題ない。いずれ食べるようになるかもしれないし』と。『これなら食べる!という切り札があるだけ良いかもね』とも言ってくれました。頑張って食べさせないことにしたら、料理の手間も私の気持ちもラクになりました。だって納豆ご飯だけでいいんですから」

そんなBちゃんも、幼稚園に入ってから色々と食べるようになったそうです。さまざまなおかずが入ったお弁当を、完食する日も増えてきました。まだ偏食の傾向はあるものの、食べないものは「あ、これは好みじゃなかったんだな」とママも割り切れるようになったようです。

突然好き嫌いが始まったCくんの場合

「なんでも食べてくれる子だったのに、1歳半ごろ急に白いものしか食べなくなりました。口にするものは、豆腐・うどん・白米・白身魚のみ。野菜を食べさせようと炊き込みご飯やチャーハンにしてもダメ。それまで食に関する悩みがなかっただけに、どう対応すればいいのか分かりませんでした」

急に好き嫌いが激しくなったという話も、多くのママから聞く悩みのひとつ。Cくんママは、身近なプロに相談したそうです。

「保育園で先生に相談したら『一時期のものだと思うし、本当にお腹が空いていたら食べるはずだから。保育園の給食は何でも食べてるみたいだしね。中途半端に野菜を隠そうとするんじゃなくて、いっそ思い切って野菜炒めだけをドーンと出してみたら?』と言われました。目からウロコでしたが、それもそうだな…と大笑いしたのを覚えています。“子どもが食べてくれそう”という条件と、“栄養バランスが良い”という条件の両方を満たすって難しいですよね」

Cくんママは、子どもに食べてもらうための料理をやめて、毎日自分が食べたいと思うものを作ることに。おいしそうに食べるママの姿を見て、自然とCくんも同じものを欲しがるようになったそうです。

ご飯は楽しく食べるのがベスト

3人の話を聞いていると、無理に食べさせようと頑張るとママの気持ちに余裕がなくなっていくことが多いのではないかと感じました。最後の保育士さんのアドバイスにあったように「お腹が空いたら食べる」、まさにそうなのかもしれませんね。もし子どもがご飯を食べてくれず悩んでいる方がいるなら、今回のエピソードで少しでも心が軽くなってくれればと願います。

桜井 まどか