民泊新法に先立ちAirbnbの登録物件が大幅減

6月15日から施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)に先立ち、4日、米エアビーアンドビーが新法に登録していない物件をサイトから削除したとの発表がありました。

その数は、今春に約6万2,000件だったものが、約1万3,800件と8割もの急減少。民泊の主な利用者は外国人旅行客だといわれていますが、2013年以降、訪日関連のビザを緩和したおかげで日本への外国人旅行客は増え続け、今年も年間3,000万人を見込んでいました。

しかし、今回の民泊新法はこの勢いに水を差してしまうことになりそうです。2020年の東京オリンピックを控え、訪日外国人数を増やし続けることはできるのでしょうか?

民泊新法ができた本当の理由

これまでエアビーに掲載されていた物件は、そのほとんどが経済特区や旅館業法などの許可を得ていない、いわゆるグレーな民泊でした。

この法的にグレーな民泊が増えたことによって、各地でその利用者と近隣住民との間で騒音やゴミ出しなどのトラブルが報告されるようになります。しかし、増え続ける訪日外国人を受け入れるためのホテル供給が追いつかず、増え続ける需要と、利用者と家主を手軽にマッチングできるエアビーの出現とが相まって、ここまで急速に民泊が増えてきたわけです。

そこで政府は、各地でのトラブル報告やホテル業界に配慮する形で、平成28年より国家戦略特区内の許可制により合法的に民泊ができるようにしました。しかし、許可手続きの煩雑さや2泊3日以上の利用客しか受け入れることができないという規制をしたために、特区民泊はほとんど普及していきませんでした。

一方、旅館業法で規定する簡易宿泊所の許可は、住宅地では適用できません。このように、いずれも制度的にハードルが高いという理由で、グレーな民泊がなくならなかったわけです。

上限180日の規制が訪日外国人の増加に水を差す恐れあり

そこで、日本全国の空き家を民泊に転用できる合法的なルールとして民泊新法ができたわけですが、なんと年間180日という上限が設けられてしまいました。この上限はホテル業界や近隣住民に配慮した内容だと思いますが、これでは民泊が事業として成り立ちません。

仮に民泊新法により、半年間は年利回り15%で運用ができたとしても、年間185日は普通に入居者を募集して一般の賃貸入居者を獲得する必要があります。しかし、半年間限定の賃貸入居者を探すことは極めて困難で、実質的に物件を1年間フル稼働させることはできないでしょう。もし、民泊だけの運用だけなら年間利回りは半減します。

こうなると、これまでグレーな民泊運用をしてきた大家さんには、事業としてほとんどメリットがありません。そのため、最近では民泊を廃業する動きが広がってきているのです。

したがって、これまでグレーな民泊運用をしてきた大家さんの新法届出は少なく、結果的にエアビーの掲載物件は8割も減少してしまいました。

不動産投資家にとって、儲からないなら民泊運用をする理由はありません。全国各地に空室が増え続けるなかで、訪日外国人の増加は空室解消の起爆剤となりえるところでしたが、中途半端な民泊の規制緩和ではこの問題はどんどん先送りされるばかりでしょう。

老婆心ながら2020年の東京オリンピックを控え、訪日外国人数が減ってしまいやしないか?インバウンドの勢いを消してしまうのではないか?と心配せずにはいられません。

実は自治体の裁量次第で365日無休で民泊はできる!?

訪日外国人を観光などでどんどん受け入れて経済を活性化していきたい、でもトラブルを引き起こす可能性のある民泊は年間180日まで、というのは、その思惑と行動がかみ合っていない状態と言わざるを得ません。

しかし、この民泊新法には実は裏技があるのです。

その裏技とはズバリ「自治体の裁量次第でその上限日数を変更できる」という点です。具体的には都道府県や政令指定都市などが、地域の実情に応じて条例でその日数を制限することができます。つまり、日数を減らすだけでなく条例で日数を増やすことも可能なのです。

しかし現状は、180日の上限をさらに減らす方向での規制ばかりで、日数を増やす方向での議論はなされていません。外国人観光客は増やしたいけど、近隣とのトラブルや犯罪の温床になることだけは避けたい。だから、上限日数を減らす方向で条例を制定する。

日本が真の観光立国になるためには、さらなる国民の理解と自治体の規制緩和が求められるわけですが、一方通行な規制ばかりでは、今後さらに外国人観光客を呼び込み、今以上に地域活性化させることは難しいし、全国で増え続ける空き家の問題も解決しないでしょう。

「民泊の通年運用を認めてもっと訪日外国人を受け入れ、地域経済を活性化させる!」という気概のある地方自治体は現れるのでしょうか? それとも規制を強めるばかりなのか? 日本人の気質を考えると、全面解禁にはまだまだ相当な時間がかかりそうな気がしてなりません。

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浦田 健