続く地方の人口減少、全国ワーストは秋田県

政府が地方創生に向けた取り組みを進めています。課題の一つが、地方の人口減少です。

総務省統計局が2018年4月13日に発表した「人口統計(2017年10月現在)」によると、都道府県別で人口が増加したのは東京都、埼玉県、沖縄県、愛知県、千葉県、神奈川県、福岡県の7都県となっており、その他の40道府県は人口が減少しました。

人口減少率が1%を超えたのは、秋田県(-1.40%)、青森県(-1.16%)など5県。中でも秋田県では、2018年4月1日時点の県内人口が99万9636人と、100万人を割り込みました。

ちなみに、人口動向の変動要因は、出生・死亡による「自然増減」と転入・転出による「社会増減」があります。若者が進学や就職を機に流出してしまう「社会減少」が多いのが地方の県の特徴です。

内閣府の調査によれば、秋田県では1970年代以降1990年代末まで毎年数千人単位で社会減少が続きました。これに伴って、1990年代半ばには自然増加がなくなり、自然減少に転じています。

その後、2005年以降は年間10,000人以上のペースで人口が減少。国立社会保障・人口問題研究所では、秋田県の人口は今後も減少が続き、2045年には約60万人まで減ると推計しています。

若い世代で地方移住への関心が高まる

総務省の人口推計によれば、秋田県は、65歳以上人口および75歳以上人口の割合(高齢化率)も全国一(35.6%,19.3%)となっています。逆に、15歳未満人口の割合が最も高い(高齢化率がもっとも低い)のは沖縄県(17.1%)です。

実は全国47都道府県のうち、出生数と死亡数による差で自然増加となっている県は沖縄県だけです。人口が増加した7都県でも、他の6都県は自然減少・社会増加です。つまり沖縄県以外は、転入・転出による「社会増加」が多いため人口が増えているのです。

秋田県のみならず、どの自治体でも高齢化と人口減には危機感を持ってさまざまな施策に取り組んでいます。子育て支援、若者の地元での就職支援などのほか、地元への移住の促進などにも力を入れています。最近では、東京、大阪などの大都市圏で、移住に関する相談会やセミナーなどを開催する自治体も増えています。

これらにより、若年層の関心も高まっているようです。地方移住を希望する都市住民と全国の地方自治体のマッチングを行うNPO法人ふるさと回帰支援センターによれば、相談者の半数が20~30代の人だそうです。

地方には意外なポテンシャルを持つ都市がある

地方移住に関して、大きな課題になるのが、Iターン、Uターンするのはいいが、仕事があるのかという点でしょう。ふるさと回帰支援センターの調査では、移住先選択の条件として、「就労の場があること」を挙げる相談者が60.8%となっています。

同センターが2018年2月28日に発表した「2017年の移住相談の傾向、ならびに移住希望地域ランキング」では、1位・長野県、2位・山梨県、3位・静岡県となっています。同センターは「首都圏から近く、移住先としての認知度の高い3県は安定的な人気を保っている」としています。

このデータだけでは「やはり、大都市圏に近くなければだめなのか」と感じがちですが、興味深い調査データもあります。2017年7月に野村総合研究所が発表した「成長可能性都市ランキング」です。

同調査は、都市圏の人口規模などを考慮して選定した国内100都市を対象に、今後の成長性を左右する「産業創発力」の現状や将来のポテンシャルを分析したものです。都道府県レベルから一歩進み、都市の持つ成長可能性について、数値を用いて可視化している点に大きな特徴があります。

その中でも注目すべきは、「ポテンシャルランキング」です。「ローカルハブになるポテンシャルを有した“成長可能性都市”」と定義されているように、これまでの実績だけでなく、今後の“伸びしろ”が大きい都市というわけです。

結果は、1位・福岡市、2位・鹿児島市、3位・つくば市、4位・松山市、5位・久留米市などとなっています。同調査では12種類のさまざまな視点でランキングを作成、いずれかのランキングでトップ10に入る都市は合計40都市と多彩です。

一方で、今回算出した12のランキングで目立ったのが九州の都市の強さです。特に福岡市は全てのランキングで10位以内に入るなどその強さが際立っています。

上山 光一