職場での厳しい叱責や、暴言、無視などの職場いじめが問題視され、「パワハラ」という言葉が広く認識されるようになりました。ですが、実際には、「パワハラとは何なのか。」「パワハラを受けたらどうしたらいいのか。」「パワハラをしない為に気を付けることは何があるのか。」など、詳細を知らずに悩みを抱えて働いている人が多くいるようです。

この記事では、パワハラを受けない、しないために知っておくべきことをご紹介します。

目次

1. そもそもパワハラとは何か?
2. パワハラの定義と6類型を知ろう
3. これってパワハラ?パワハラを受けたらどうしたらいい?
4.パワハラにあたる具体的な行為とは?
5. 部下にパワハラといわれないために知っておくべきポイント
6. 必見!パワハラ予防の7つの取り組み
7. パワハラが起きない職場づくりのためにできること
8. おわりに

そもそもパワハラとは何か?

パワハラとは、正式には「パワーハラスメント」といいます。「パワー」は、権力や権威、「ハラスメント」は、嫌がらせやいじめを意味します。直訳すると、「権力によるいじめ」となります。

実は、パワハラという言葉は、英語ではなく日本で生まれた言葉です。2000年ごろから、日本でも男性から女性による「セクハラ」が社会問題として問題視されてきましたが、女性だけでなく男性も、職場での不当ないじめや嫌がらせにより苦しんでいる実態が浮かび上がってきました。職場いじめを苦にしての自殺や過労死が、社会問題としてクローズアップされ始め、「ブラック企業」という言葉が、広く認識されるようになると、パワハラに対する社会の関心も高まってきたようです。

厚生労働省でもパワハラに対する定義を定め、パワハラ防止のための啓発が行なわれています。ですが、昨今ではパワハラ被害は増加しており、パワハラを苦にしての退職や心身の障害、自殺など痛ましいニュ―スが後を絶ちません。パワハラを受けないために気を付けること、また万一パワハラを受けた時の対処法を労働者は身につける必要があるでしょう。また、気が付かないうちにパワハラをしてしまい、誰かを追い詰めてしまわないように、何がパワハラにあたるのかを知っておくことも大切なことでしょう。

パワハラの定義と6類型を知ろう

厚生労働省によると、パワハラは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。更に、厚生労働省では、パワハラをその特徴に応じて6類型に分類しています。

  • 身体的な攻撃暴行や傷害など、身体に対する攻撃
  • 精神的な攻撃脅迫や名誉棄損、侮辱的な言葉を浴びせる
  • 人間関係からの切り離し隔離して仕事をさせたり、無視をする
  • 過大な要求業務上明らかに不要なことに時間をかけさせたり、業務遂行が不可能なことを強制すること
  • 過小な要求能力や経験からかけ離れた、程度の低い仕事につかせたり、仕事を与えないこと。
  • 個の侵害プライベートに必要以上に立ち入ること

上記の定義と6類型を通して、パワハラを考える時に大切なポイントは、「職場内の優位性」と「業務の適正な範囲」という部分だと考えます。

職場内の優位性とは、単なる上司と部下の関係だけでなく、先輩と後輩の関係や正社員と非正規社員の関係なども含まれます。反対に、単なる同僚のように、職場内での優位性が認められない場合は、パワハラとして認定されない可能性があります。

また、新人社員への指導やミスをした社員への注意など、業務の適正な範囲と認められれば、パワハラとはいえません。職場内のパワハラを考える時は、「職場内の優位性」「業務の適正な範囲」というポイントに注目すると良いでしょう。

これってパワハラ?パワハラを受けたらどうしたらいい?

職場で、「これって、パワハラ?」と思うことが起こったらどうしたらいいのでしょう。上司に相談したくても、その上司がパワハラの加害者張本人かもしれません。また、同僚に相談したところ、職場内で噂になってしまう等、逆に不利益を被ってしまうことも考えられます。

パワハラを受けたと認識した時、まず最初にやるべきことは、パワハラの定義、6類型に鑑みて、自分が受けた行為がパワハラに該当するのか、該当するとしたら、6類型のうちのどのタイプなのかを把握しましょう。

自分が受けた行為が、パワハラに間違いないと確信したら、次にすべきことは、詳細な記録を残すことです。記録を残す場合は、いつ、どこで、誰が、何を、どうしたという5W1Hを意識して残すようにしましょう。

音声データなど、第三者が確認しても信ぴょう性の高い方法で記録することがおすすめです。職場内に、コンプライアンス窓口がある場合は、相談しましょう。また、人事担当の部署でも相談に応じてくれるでしょう。

パワハラを受けたら一人で悩まずに、味方を見つけて一緒に解決方法を探っていくことも大切です。職場内での解決が難しい場合は、外部の相談機関に相談してみましょう。全国の労働局・労働相談所にある総合労働相談コーナーでは、無料でパワハラ相談に応じてくれます。企業名や、名前を匿名にしても相談も可能です。

パワハラにあたる具体的な行為とは?

厚生労働省は、パワハラを6類型に分類していますが、それぞれ具体的にはどのような行為が当てはまるのでしょうか。具体的な行為について、以下を参考にしてみましょう。

普段、何気なくしている部下や後輩への行為が、実はパワハラかもしれません。逆に、上司や部下から日常的にされていることが実は、パワハラであったと気づくこともあるかもしれません。

身体的な攻撃の具体例

  • 足で蹴られたり、殴られる
  • 書類や、ファイルなど物を投げつけられる
  • 襟や胸倉をつかまれる

精神的な攻撃の具体例

  • 同僚や、他の社員のいる前で、見せしめのように叱責される
  • 本人や、家族、恋人などを侮辱する言葉を投げかける
  • 「役立たず」「給料泥棒」などの暴言を浴びせる

人間関係からの切り離しの具体例

  • 挨拶をしても無視をされる
  • 他の社員に接触したり協力を依頼することを禁止される

過大な要求の具体例

  • 終業間際に膨大な量の仕事を毎回押し付けられる
  • 一人では明らかに不可能な量の仕事を押し付けられる

過小な要求の具体例

  • 営業職なのに事務職や倉庫作業などを強制される
  • 掃除や草むしりなどの仕事しか与えられない

個の侵害の具体例

  • 携帯電話を覗き見られる
  • 終業後や休日の予定を根掘り葉掘り聞かれる


実際には、6類型のうちの一つだけに当てはまるというより、幾つかタイプが複合されているパワハラのパターンが多いようです。例えば、新入社員であるにも関わらず、やったことのない仕事を丸投げされ、責任を問われたかと思えば、ある時は、1人だけ会議の日程が知らされていなかった、など、過大な要求から過小な要求まで、さまざまなパターンがあります。

また、殴られながら、「無能」「役立たず」など、身体的な攻撃と精神的な攻撃を同時に受けるというパターンもあります。

部下にパワハラといわれないために知っておくべきポイント

部下への指導のつもりが、熱が入りすぎて、「パワハラ」と訴えられてしまった。という事例はたくさんあります。パワハラのつもりはなくても、相手がパワハラを受けたと感じ、それが、訴えられれば社内の雰囲気や志気にも関わってきます。

パワハラ被害を訴えられたために、その対応で自分の仕事や職場自体の仕事が遅れてしまう、会社に被害がでてしまうということも考えられます。部下にパワハラと思われないためのポイントは、まずは厚生労働省の示す、パワハラの定義をしっかりと押さえ、どんな行為がパワハラにあたるのかを具体的にイメージすることが重要だと考えます。自分の行為は上司という立場を利用していないか、業務の適正な範囲を超えたことではないか、を常に意識して部下への指導に当たることが大切です。

部下と日常的にコミュニケーションを取ることは、パワハラの予防に効果的といわれています。ですが、行き過ぎたコミュニケーションを取らないように気を付けましょう。あまり親しくないうちから、部下のプライベートや、休日にまで関心を寄せすぎると、パワハラの6類型の一つ、個の侵害と受け取られる可能性もあります。飲み会など、終業後の集まりを嫌う人も増えてきています。強制的に参加を促すことも避けた方が無難でしょう。

必見!パワハラ予防の7つの取り組み

パワハラの予防には、会社全体が一丸となって取り組むことが大切です。ポータルサイト「あかるい職場応援団」では、職場でできるパワハラ予防とパワハラ起こった時の解決策としての7つの取り組みを紹介しています。

トップのメッセージ

会社のトップが、パワハラはあってはいけないことだということを明確に示す態度が大切です。組織として、「パワハラをなくそう。」という意識が統一されて要らば、万一パワハラが起こった時も相談しやすく、解決に向けてスムーズに動ける体制を整えることができるでしょう。

ルールを決める

労使一体でパワハラ防止に取り組むために、明確なルールを持つことは大切です。誰にでもわかりやすい具体的なルール作りをしましょう。

社内アンケートなどで実態を把握する

全従業員を対象とした偏りのないアンケートを取ることが大切です。アンケートと同時に相談窓口の紹介、産業医によるヒアリングを設けるとより効果的です。

教育をする

社に研修などで、パワハラについて取り上げる機会を持ちましょう。

社内での周知・啓蒙

トップのメッセージや、決められたルールは、全従業員が分かりやすいように周知を徹底しましょう。

相談や解決の場を提供する

相談窓口では、秘密保持の原則や相談者が不利益にならないようにあらかじめ対応マニュアルを決めておきましょう。

再発防止のための取り組み

上記の予防策を定期的に見直すことが、再発防止に繋がります。

パワハラが起きない職場づくりのためにできること

パワハラが起きない職場づくりには、職場全員のパワハラを起こさないという高い意識が大切です。ですが、あまり難しく考えずに日常的な会話や、接し方を工夫するだけで、パワハラの起きない快適な職場を作ることができます。

一方的に話題を投げかけ、独りよがりな内容の話をしたいだけして会話を終わらせてしまう方もいるかもしれません。会話は、一方的に投げかけるのではなく相互に投げ合うキャッチボールのようなものが理想的です。話すことより聞くことの方が難しいともいわれますが、会話が上手くいかないという人は、まずは、相手の話を聞くことを大切にするとよいでしょう。

人間ですから当然好き嫌いはあります。また、接しやすい人と、接しにくいと感じる人がいても仕方のないことです。ですが、職場に自分の感情を持ち込んでは、パワハラに繋がりかねません。苦手だと思う部下にも、仕事で必要なことはきちんと伝え、適切な指導をすることが求められます。

苦手と思っていても話してみると意外と接しやすかったということも実は良くあることです。初めから苦手意識を持たずに、会話を始めてみることも大切な努力でしょう。特に、上司の方から積極的にコミュニケーションをとっている職場では、パワハラは起きにくいようです。

おわりに

パワハラは、厚生労働省によりしっかり定義されており、具体的な内容を把握しておけば、予防が可能なものです。労働者が生き生きと働き続けるためには、パワハラは起きてはいけないことです。職場でのコミュニケーション不足はパワハラのリスクになりかねません。会話や接し方を変えるだけで、パワハラの起きない職場を作ることは可能です。積極的にコミュニケーションをとり、パワハラのないあかるい職場を作りましょう。

LIMO編集部