「遠距離介護」という言葉、聞いたことありませんか? これは、遠方に住む高齢となった両親の自立した生活のために、子どもができる限りのサポートをしてあげることです。

「年老いた両親のもとで暮らしたい」と思っていても、家庭の事情や仕事の関係で、なかなかそれが叶わない、という人も多いでしょう。両親が元気なうちはいいけれど、どちらか一方、もしくは両方が体調を崩してしまったとき、遠くに住む子どもたちはいったいどのような手助けをしてあげられるのでしょう。

老老介護の実態と原因

高齢化がどんどん進み、また核家族が当たり前となっている現代の社会問題のひとつが「介護」に関することです。

中でも増加中なのが「老老介護」。老老介護とは、65歳以上の人間が、同じく65歳以上の人間を介護することを指します。介護の度合いにもよりますが、やはり介護度が高くなればなるほど、介護する側の肉体的、精神的負担は増加してしまいます。介護する側が疲弊して、最終的に共倒れになってしまった、というケースも少なくありません。

子どもが近くに住んでいれば、何かあったらすぐに飛んでいけるのですが、遠方に住んでいる場合、なかなかすぐに駆けつけるのが難しい場合もあります。

また、何かあったときに親が援助を求めてくれればいいのですが、「遠くに住んでいる子どもに迷惑かけたくないから」と、黙っている場合も多々あります。中には老老介護に直面した親が「自分たちでなんとかする、人さまには迷惑をかけない」と言って、我慢に我慢を重ねて、結局子どもたちが気付いたときには悲惨な状態に…ということも。

実の親の介護に手が回らない!?

また、子どもが親元へと駆けつけて援助できない、という場合もあります。遠方に嫁いだのでなかなか家を長期間あけられない、仕事を持っているから長期の休みが取れない、などがその理由。中には、「舅もしくは姑の介護をしているので、実の親の介護まで手が回らない」という人もいるのです。

介護する側は女性の方が望ましい―。誰に言われたわけでもないのに、そんな風に考えている人は多いはず。しかし、これにはそれ相応の理由があるのも事実です。女性の方が家事に慣れている、子育ての経験から人の世話をしたことがある、気遣いができる、など。

そのため、介護を娘に頼みたくても頼めない、娘がいない、などという人は、息子の奥さんを頼るというケースもままあります。その結果、実の親が、義理の親の介護をしている娘に遠慮してしまっている…という何とも切ないケースが発生してしまうのです。

このように、さまざまな要因で老老介護が発生してしまいます。老老介護は、親が遠方に住んでいてなおかつ近くに頼れる親戚がいない、という方にとっては決して他人事ではない問題になっているといえるでしょう。

遠距離介護をスムーズに進めるために

親の年老いた姿を考えるのはつらいこと。しかし、親が元気なうちに老老介護に直面した際の対処法を考えておくことで、みんなが安心できるのではないでしょうか。

とかく我々の親世代は、他人の世話になりたくない、という考え方をもっているもの。しかし、それでは夫婦共倒れになってしまう可能性があることを強く訴え、行政のサービスやケア、さらにはプロのサポートをしっかりと利用することが遠距離介護をスムーズに行うポイントと言えます。

近隣に親族がいる場合は、もしものときの援助を依頼する。親の交友関係を把握して、親に何かあったときのために親の友人と連携をとっておくなど、周りに手助けを求められる場合は、遠慮せずに求めることも大切です。

また、介護にはいくらかのお金がかかります。介護費用はどうするのか、ということも決めておいた方がのちのちのトラブルにならなくて済みます。何かが起きてから後悔するのでは遅すぎます。両親の意向を聞きつつ、できるだけストレスや負担が少ない介護方法を考えておくことが老老介護及び遠距離介護を成功させるためのポイントなのではないでしょうか。

さらに、夫や妻の協力を仰ぐことも大切。「まだまだ元気だから、大丈夫」ではなく、「両親が元気なうちが話し合えるチャンス」だと思うようにしましょう。

子どもができる親孝行

いくら事前に話し合いをして、対策を練っていても、いざ介護に直面したらさまざまな問題が浮上するでしょう。そんなときには、「親が一番望んでいることは何か」「自分が最もストレスなく解決できる方法はないのか」を考えましょう。

介護は、子どもができる最後の親孝行かもしれません。両親と介護する側にとっての最善策を見つけられるといいですね。

大中 千景