先日、登園時間になって次男が「幼稚園に行きたくない」と言い出し、時間をかけてやっと着た制服も下着も靴下も全て脱ぎ捨て、別室へと逃げていきました。7歳長男、3歳次男、1歳長女のいる我が家。その日は暑い中、高熱の出ている長女も一緒に車で幼稚園へ送っていく日でした。

登園時間が迫っており、長女も愚図っていてずっと抱っこなため、「早く着替えさせて送らないと」と焦る筆者。怒りやら疲れやら、様々な感情が入り混じる中で「同じ状況でも長男のときは怒っていた」ことを思い出しました。

「怒らず共感を」と言われても…余裕がないと無理

幼稚園に行きたくなかった記憶は筆者にもあるので、登園渋りをする気持ちはわかります。育児書などでは泣いてイヤイヤされたら「子どもの気持ちに共感をすること」を勧めています。心に余裕があれば子どもを抱きしめたり、「寂しいよね」と共感したりできます。しかし焦りや疲れが少しでも顔を出せば、「早く行くよ!」と言ってしまうのです。

この日は「長男のときは急かしたり怒ったけれど、今日は怒らないでいてみよう」と思い立ち、一切怒らないことを決めました。長女には泣かれましたが少しの間待っててもらい、泣いて怒る次男を抱っこしたり頭を撫でながら、「行きたくないんだね、寂しいよね」と共感しつつ着替えをしました。

その後「行きたくない」とは口では言いながらも、自分の足で玄関を出て車に乗り、次男は無事登園していきました。

「怒る方が物理的に楽」と思っていたけれど…

「怒らずに共感」で無事登園できたことで、改めて今回の件を振り返りました。物理的に考えれば、「怒った方が時間も手間もかからず楽だ」と考える方が多いでしょう。厳密にいえば、怒ればよけい子どもが泣くこともあるので、時間はそこまで大差ないことも。ただし、手間はかかります。

今回怒らないことで、「怒らなくても子どもが納得してくれた!」と少し自信がつきました。その日は長男に怒りそうな場面もあったのですが、「まずは怒らないで対応しよう」と実践したことで、小さな自信がまたつきました。良い連鎖が生まれ、その日は精神的に楽になりました。

もちろん子どもは日によってグズり方が異なるので、上手くいかないこともあります。ただ「怒らないスタートで育児を」と考えていると、手間がかかるときは手こずっても、1日を通してみれば精神的に楽なのです。

怒った後に続く悪循環

怒ることが減って気付いたのが、「怒ることでどれだけの神経、労力、体力を使っていたんだろう」ということです。怒ること自体、心身ともに疲弊しますよね。怒ると体にも美容にも悪いと言われますがその通り。たとえ子どもが言うことを聞いても、怒ればその場の雰囲気は悪く、「怒ってしまった」という罪悪感も残ります。

とはいえ、また子どもが何かをすれば、怒ってしまいます。怒ることに「慣れる」のですね。怒ることに慣れると、少しのことでもイライラしたり、言葉遣いが荒くなることもあるでしょう。時にはエスカレートし、大きな声を出すことも。そうすればまた子どもを萎縮させ、罪悪感も増します。

怒って対応した自分の育児に、自信もなくなります。どこか卑屈になったり、自分を責めることもあるでしょう。怒った後に引きずる「後味の悪さ、罪悪感、自信喪失」と、怒ることに慣れてしまうことを考えると、「怒った方が楽」とはいえないと思うのです。

精神的負担に目を向けてみる

筆者は全く怒らないことを勧めているわけではありません。人間ですから、怒ることは当たり前の感情表現です。人間がコミュニケーションをとる上では怒ることもあると知ることも、子どもにとっては一つの学びでしょう。

ただ日常的に怒る状況が続くのは、親子共に辛くなってしまいます。怒ることの精神的な負担は、目に見えにくいので見逃されがちですが大きなものです。精神的な負担に目を向けてみると、また子どもへの対応を見直してみようと考えさせられるでしょう。

宮野 茉莉子