日銀短観を受けて2016年4月1日のTOPIXは大幅な下落に

2016年4月1日の午前8時50分に日本銀行は、3月の全国企業短期経済観測調査(以下、短観)を発表しました。

業況判断指数(DI)は、大企業製造業がプラス6(前回12月調査はプラス12)、大企業非製造業がプラス22(同プラス25)といずれも2015年12月の前回調査から低下しており、景況感の悪化が確認できます。また、大企業全産業の2017年3月期の経常利益計画は、前年度比▲2.0%減と減益予想でした。

さらに、その2017年3月期の想定為替レート(大企業製造業)が1ドル=117円46銭と、現状水準よりもかなり円安前提であるため、さらなる下振れも意識せざるを得ない内容でした。

こうしたことから、4月1日のTOPIXは前日比▲3.4%下落と大幅安で引けました。

ミクロの視点から気になったポイントは?

短観は日銀の金融政策(マクロ政策)を判断するための統計調査ですが、企業業績(ミクロ)を考えるための情報も多く含まれています。ミクロの視点から今回の短観で気になったポイントは以下の3点です。

第1は、設備投資(含む土地、除くソフトウェア)に関する見通しの弱さです。2017年3月期予想は、大企業の全産業が▲0.9%減、中堅企業や中小企業を含めた全規模合計では▲4.8%減でした。中国景気の減速影響などから設備投資の弱さは既に周知の事実ですが、こうした予想は、ファナック(6954)や三菱重工(7011)などの設備投資関連企業にとっては、改めてネガティブに受け止められることは避けられないでしょう。

とはいえ、期初の予想は過度に慎重に出される傾向があることには留意したいと思います。実際、1年前の2015年3月短観でも2016年3月期予想は大企業で▲1.2%減、全規模合計で▲5.0%減でしたが、その後、それぞれ+9.8%増、+8.0%増に上方修正されています。

第2は、ソフトウェア投資の意外な堅調さです。2017年3月期予想は、大企業の全産業が+0.5%増、中堅企業や中小企業を含めた全規模合計では+1.5%増とプラス成長見通しでした。このため、NTTデータ(9613)や野村総合研究所(4307)などのIT投資関連企業の業績については、相対的な安心感を持つことができます。

第3は、雇用の先行きの不足(タイト感)が続いていることです。雇用人員判断見通しのDI(「過剰」-「不足」)は大企業では▲10ポイント、全規模合計では▲20ポイントでした。「雇用は堅調」と捉えることは可能ですが、建設・土木業や飲食などのサービス業から見た場合は、人手不足が業績回復のボトルネックになるリスクが残っていることになるため、手放しでは喜ぶことはできません。

一方、リクルートホールディングス(6098)やアウトソーシング(2427)などの人材派遣業にとっては明るい材料と受け止めることができるでしょう。

以上のように短観をミクロの視点から見てみると、マイナス材料が多いことは事実ですが、全面安になるほどの悪材料でもない印象です。「森を見て木を見ず」と「木を見て森を見ず」の両方を持ち合わせる柔軟さが、今のような局面では必要なのかもしれません。

【2016年4月4日 投信1編集部】

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LIMO編集部