投資信託の基準価額の決まり方

投信1編集部から投資信託初心者に伝えたい3つのポイント

  • 投資信託の基準価額は、場が引けた後にファンドで保有する資産価値を計算して算出する。

  • ストップ安やストップ高になる銘柄がファンドに含まれている場合には、基準価額の算出が難しくなることも。

  • ETFはリアルタイムで取引価格の分かるファンド。

基準価額は株価と同じか?

投資信託を購入しようと思ったけれど、その価格はいくらのなのか。国内の金融資産に投資をする投資信託の場合は、申込み当日の基準価額となります。つまり、場中に投資信託の購入注文を出すと、場が引けるまで基準価額が分からないことになります。まるで、お会計するまでいくら食べたかわからない高級鮨、とは言いませんが、それと似た状況と言えるかもしれません。

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投資信託を初めて購入した投資信託入門者の相場晴子(アイバ・ハルコ)さんと大学時代の同級生で運用会社に勤めるファンドマネージャーの投信博士(トウシン・ヒロシ)さんが、最近有名な清澄白河のカフェで基準価額について話をしています。早速、聞き耳を立ててみましょう。

基準価額が決まるのは1日1回

相場:ねぇ、博士、投資信託の基準価額は株式の株価みたいなものかしら。

投信:概ねそうだといえるね。

相場:概ね、というからには違う点もあるのかしら?

投信:あるねぇ。

相場:もったいぶらないで教えてよ。

投信:株価は、取引されている時間中であれば、時々刻々と変わるものだよね。投資信託はどうだと思う?

相場:あら、投資信託は違うのかしら。

投信:投資信託の基準価額は、場が引けた後にファンドで保有する資産価値を計算して、基準価額を算出する。実は、この作業は結構大変なんだ。資産価額が上下するということもあるけど、資金の流出入もあるからね。投資信託の基準価額を計算する作業は「計理(ごんべんけいり)」ともよばれている。バックオフィスと呼ばれる裏方の人たちは、どのような仕事をしているか外からは見えにくいからわからないけど、それはもう大変(笑)。

基準価額を計算する際のイレギュラーなケースとは

相場:でも、そんな計算は機械で簡単に計算できないのかしら。金融機関はITへの投資も相当の規模で行っているでしょう?

投信:そう思うでしょ(笑)。ところが実際はそうはいかない。結構アナログな作業が多い。ちょっと極端なケースだけど、簡単な事例を紹介しよう。

相場:なにかしら。教えて。

投信:例えば、ファンドで保有している銘柄が業績見通しの下方修正を行ったとする。その下方修正水準は株式市場が全く想定しておらず、数日間ストップ安が続いたとしよう。ストップ安の中でも、引け後は値幅制限の下限値で価格がつき、比例配分が行われる。ところが、その翌日も、翌々日もというように何日もストップ安が続いたらどうだろうか。

相場:ストップ安ということだから、そのストップ安の銘柄を多くの人は売りたくても売れていない状況なわけよね。

投信:そうだね。売りたくても売れない状況にあるストップ安の銘柄に関して、値幅制限の価格をベースに反映した基準価額で、多くの投資家に対して売買することは公正なのか?という問題が出てくるんだ。

投資信託の受益者を公平に扱うためには

相場:あら、仕方ないんじゃないの。何がとりたてて問題なのかしら?

投信:ストップ安が今日を含めて連日続くと予想するとしよう。ストップ安の銘柄に関して、いったんは値幅制限の価格はつくよね。でも、そのストップ安が今後も続くと予想されれば、その銘柄の本当の株価はもっと安いかもしれない。であるとすると、今日の値幅制限の価格は企業の実態を表した適切な株価ではないかもしれないという懸念が出てくることになる。そうなれば、実態よりも高い基準価額で購入しなければならない投資家も出てくるであろうし、実態よりも高い値段で売却できる投資家も出てきてしまうことになる。

相場:じゃあ、どうするのよ。

投信:こういう時は、投信協会(一般社団法人 投資信託協会)のウエブサイトの説明を見てみよう。

“直近の最終相場で評価することが適当でない場合は、過去の事例を参考にして評価を行います。“

相場:過去の事例って、色々あるわよね。

投信:そうだね(笑)。

公正価格はこうして計算される

相場:実際問題、どうするのかしら?

投信:ストップ安やストップ高の場合には、金融機関によって呼び方は異なるだろうけど、「フェアバリュー・コミッティー(公正価格評価委員会)」なる組織が存在して、いくらが適正株価かを算出し、そこで議論された価格を活用することとなる。

相場:でも、過去の事例をもとにしてとかいうけど、会社ごとに、そして直面している状況も異なるからフェアバリュー(適正価格)がいくらかというのは確実には言い切れないわよね。

投信:そういう場合は、その企業を担当している証券アナリストに適正株価をヒアリングするケースもある。投資信託の運用会社としては、外部に対していかに公正に基準価額を算出したかの根拠を求められる可能性があるからね。

相場:証券アナリストも大変な職業ね。

投信:株価評価というのは、ある意味経験を積んだ証券アナリストの強みといえるね。

リアルタイムで価格が分かる投資信託はあるのか

相場:ところで、時価が分かって取引できるファンドはないのかしら。

投信:あるよ。

相場:はじめにそれを教えてよ。

投信:いや、聞かれなかったんで。

相場:早く教えてよ。

投信:ETFといって、上場している投資信託とも言えるかな。株価に該当する取引価格はリアルタイムで変動するので、自分がいくらで購入したかは当然分かる。株式と同様に、指値注文や成行注文を出すことも可能だよ。

相場:投資信託とETFの違いについてもっと教えてよ。

投信:それはまた次の機会に、ETFをじっくり学んでみよう。

登場人物

相場晴子(アイバ・ハルコ)。国内の大手生命保険会社の本社で勤務するOL。40代後半。未婚。慶早大学・文学部卒。最近、少し貯金も貯まってきたのでオンライン証券で口座を開設して、初めて投資信託を購入。外貨建ての銀行預金を除くと初めての投資。購入したはじめての投資信託は日本株のアクティブ運用の投資信託。でも、実は自分でどういった金融商品に投資をしたいかは十分に理解していない。

投信博士(トウシン・ヒロシ)。相場晴子の大学時代の同級生。慶早大学・経済学部卒。現在は、資産運用会社に勤務。大学卒業後、企業を調査する証券アナリスト、シンクタンクに出向しエコノミストとしてマクロ分析を経験した後、現在は株式のファンドマネージャー。趣味は、スマホゲームと釣り、サッカー観戦。

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投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。