投資家が無視できない、日本株を取り巻く3つの不安なデータ

この記事の読みどころ

日銀が買い支えた日本の株式市場。

大口電力消費は2014年半ばよりマイナス成長を続けています。

集積回路の在庫日数も低下傾向で、将来需要の見通しの悪さが影響していると見られます。

はじめに

今回は、日本株を運用されている個人投資家向けに、日本経済のファンダメンタルズや株式市場の状況を示すいくつかのデータに基づく読み筋を共有したいと思います。

ハロウィーン緩和以降の日銀のETFやREITの買い傾向

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日本の株式市場を投資家別の売買動向で語る上で、外国人投資家とともに見逃すことができないのが、今や日本銀行です。2012年12月に第2次安倍内閣がスタートし、2013年3月に黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任しています。その黒田日銀総裁が就任して以降、継続的にまとまった金額のETF購入が行われています。

2013年3月以降、1,000億円近い購入が行われることも珍しくなくなりました。やはり特筆すべきは、通称“ハロウィーン緩和”と呼ばれる金融緩和が行われた2014年10月以降の日銀の動きです。1か月で2,000億円を超える購入も珍しくなくなり、ギリシャや中国経済への懸念が生じた2015年6月には4,000億円を超えています。

黒田日銀総裁が誕生して以降、日銀はETFとJ-REITに約4兆9,000億円もの買付を行っています。

電力消費は経済活動のバロメーター

それでは、この日本株の上昇はファンダメンタルズをともなった上昇と言えるのでしょうか。日本の経済活動が活発かどうかを確認するためには、東京電力および電力10社の大口電力需要の前年同月比を示したデータを確認するのが便利です。

そのデータによれば、東京電力では2014年4月から、全国電力10社では2014年6月から大口電力需要は前年同期比マイナス成長なっています。

一方、株式市場はというと、TOPIXを見ると、電力需要とは全く反対の動きをしており、じりじりと上昇する展開となっています。

日銀が国内のファンダメンタルズの弱さを確認しつつ、それを隠すようにして株式市場の盛り上がりを演出したのではと見えてしまうのは気のせいでしょうか。これが官製相場と言われる原因かもしれませんね。

半導体の在庫循環も確認しておきたい

電力需要だけでは心もとないので、もう少しミクロのデータも見ておきましょう。経済産業省が発表する生産動態統計における集積回路のデータの在庫日数を加工すると便利です。

半導体(集積回路)の在庫循環の特徴は以下の通りです。

  • 在庫日数は通常18から35日の間で推移する
  • 年末、特に毎年12月は中国の春節などの需要に向けて在庫を積み上げる傾向が強い
  • 在庫日数が20日を下回る状況は、将来の見通しが立ちにくく在庫を積み上げない場合も多い

現在の在庫日数は2015年7月のデータでほぼ20日であり、半導体関連企業が将来の見通しが良くないとの前提で在庫を積み上げていないと考えることができます。

2015年も例年通りだとすれば、年末にかけて中国の春節需要に向け在庫を積み上げてくる可能性は高いですが、じりじりと在庫日数が下がる傾向は好ましくないと見ています。

こうした状況はリーマンショックが起きる2007年後半から2008年前半の状況に似ています。杞憂に終わればよいと思いますが、嫌な感じはします。

在庫日数に関しては、良い在庫日数の低下(足元需要の強さ)と悪い在庫日数の低下(将来需要見通しの悪さ)の2種類がありますが、在庫日数の足元の下落トレンドが続いているのを見る限りでは、後者の気がしてなりません。

まとめ

アベノミクスの始動以降、TOPIXは堅調に推移してきましたが、日本経済のファンダメンタルズを見る限りでは、非常に心もとないデータが多く見られます。

2015年10月の日銀金融政策決定会合で日銀のアナウンスメントやその行動が株式市場全体の期待値に達しない場合には、株式市場が大きく崩れる可能性もあります。2016年にかけては、日本株全体に強気になるというよりは、個別銘柄の選考に、より専念したほうが良いと思います。

注:本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。

【2015年10月13日 投信1編集部】

■参考記事■

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投信1編集部

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