シリコンとシリコーンの違いは何?―身近なモノの化学講義(2)

この記事の読みどころ

シリコンとシリコーンは似たような名前ですが、同じケイ素という原料から出発する似て非なる材料で、両方とも最先端の応用分野を担っています。

シリコンは、半導体の基板材料やシリコン系太陽電池パネルなどに用途が限定されています。

一方、最近シリコーンコーティングという言葉が良く見られるように、シリコーンは日常生活に密着しています。

シリコン、シリコーンの世界的大手メーカー・信越化学工業に教えられた「違い」

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筆者がまだ証券アナリストとして駆け出しの頃、シリコンとシリコーン両方の製品を事業化していた信越化学工業でまずアドバイスされたのは、「この2つの違いを理解してください」ということでした。

両者の原料は地球上で一番資源量が多いとされる二酸化ケイ素(SiO₂)で、この化学名以外にも、シリカ、石英、水晶などいろいろな呼ばれ方があります。いずれも同じ成分で、ケイ素原子と酸素が化学反応してでき上がるものです。

シリコン

ケイ素原子が酸素と結合してできた安定化合物の二酸化ケイ素(SiO₂)から、酸素を剥がしてケイ素だけにしたものが金属ケイ素、別名シリコンです。

シリコーン

二酸化ケイ素(SiO₂)を還元して金属ケイ素にした後にメチルアルコール(メタノール)などの有機化合物を結合させた特殊な化合物で、無機と有機の特性を併せ持つものです。

(注)有機化合物とは、炭素(C)と水素(H)からなる化学物質で、ガソリン、エチレン、ポリエチレン等が一連の有機化合物の例。無機は炭素原子を持ちません。

すなわち、シリコーンが化学物質なのに対して、シリコンは金属の一種です。名前が似ていても、物質としてはジャンルが異なるものであることがお分かりいただけたでしょうか。

シリコンがなければ半導体産業は成り立たない

スマホ、自動車、白物家電など、様々な製品の頭脳として半導体が組み込まれていますが、特殊なパワー半導体の一部を除く全ての半導体はシリコンウエハーを基盤に生産されています。

みなさんもニュースなどでご覧になったことがあるかもしれませんが、鏡のような円盤状の薄い板がシリコンウエハーと呼ばれるものです。二酸化ケイ素(SiO₂)100%のシリコンの塊(多結晶シリコン)を、るつぼで溶かして単結晶を作りながら引き上げて製造されます。

最先端の半導体シリコンウエハーは直径が300mm(12インチ)で、日本の信越半導体(信越化学工業の100%子会社)やSUMCO、ドイツのシルトロニックの3社で世界市場の約3分の2を占めています。次世代は450mm(18インチ)の登場が待たれますが、半導体メーカーの設備投資額が巨額になると目されているので、もう少し先になりそうです。

日常生活の様々な場面で使われているシリコーン

他方、シリコーンは製品数も用途も無数にあり、日常生活に密着しています。シリコーンはゴム、オイル、合成樹脂(プラスチック)の3つの形態に分類されます。熱に強く、無機成分があるので化学的に安定しています。

昔からの用途では、整形手術における埋め込み剤があります。また、家庭のキッチンでなじみがあるものとして、電子レンジで野菜などを蒸すときに使うゴム状の容器があります。さらに、シャンプー用枝毛コートなどのトイレタリー分野、車の艶出しコートなどの自動車分野など、用途は無限と言っていいかもしれません。変わったところでは信越ポリマーが売り出した、シリコーンゴムでできた落としても割れないコップ・グラス「shupua」が注目を集めています。(参考: 「shupuaとは」

化学製品の中でもユニークで競争力があるケイ素化学分野

長く化学セクターを見てきた経験から、筆者は日本が世界に誇れるユニークで競争力のあるジャンルとして、このケイ素化学分野に注目しています。シリコーンでは信越化学工業、東レ、ダイソー(10月1日から大阪ソーダに社名変更)など、半導体シリコンウエハーでは先に述べた信越半導体やSUMCOなどの企業が注目されます。

【2015年9月24日 石原 耕一】

■参考記事■

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石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。