2015年内に外貨建てMMFを利益確定する予定の方、2016年も無理はしないで―教えて篠田さん(第3回)

2016年から金融所得課税の一体化が始まり、公社債投資信託を含む公社債等を保有する投資家にとっては、大きな影響が出るケースも想定されます。

今回は、この課税方法の変更に伴い、2015年内に対処しておきたいことと、2016年のアクションについて、楽天証券経済研究所のファンドアナリスト、篠田尚子さんにお聞きしました。

公社債投信で含み益が出ている場合、2015年中に売却して利益確定を

――2016年から金融所得課税の一体化が始まります。投資信託についての注意点を教えてください。

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まず、金融所得課税の一体化の対象となる投資信託は、株式を一切組み入れず、債券のみに投資を行う「公社債投資信託」と呼ばれるタイプのものです。

多くの方になじみがあると思われるMMF(日々決算型ファンド)や、「公社債投信○月号」のようにファンド名がついた追加型のタイプが公社債投信の代表例です。

債券のみに投資を行っているからといって、そのファンドが「公社債投資信託」であるとは限りません。目論見書の「課税関係」の項目に「株式投資信託」と記載があるファンドは、今回の税制変更の対象外ですのでご注意ください。

金融一体課税では、上記の公社債投信の課税体系が上場株式や株式投資信託と一体化されます。

現在は原則非課税の譲渡益について、20.315%の申告分離課税が課せられるようになると同時に、上場株式等の譲渡損益や配当等との損益通算ができるようになります。

さらに証券会社等が口座内の売買損益を計算し、申告・納税手続きをサポートする「特定口座」での管理も可能になります。

保有する公社債投信で含み益が出ている場合は2015年中に売却し、利益を確定することで非課税の恩恵を受けることができますが、含み損が出ている場合は来年以降に売却を検討した方が損益通算ができるので、税制面では「得」と言えるでしょう。

外貨建てMMFを保有している投資家は特に要注意

――特に影響が出そうな投資信託はどんなものでしょうか。

公社債投信は約款上、債券以外の資産に投資できず、商品設計の自由度が低いため、昔に比べると特に追加型は本数自体が減っています。

こうした点を踏まえると、影響がありそうなのは外貨建てを含むMMFに投資をしている方です。

外貨建てMMFは米ドル、ユーロ、豪ドルなど様々な通貨が展開されていますが、特に米ドルやユーロ建のMMFで為替差益が出ている場合は今年中に売却し、非課税のメリットを享受した方が良いでしょう。

2016年も無理は禁物。「負けない運用」に徹するのが吉

――2015年内に利益確定で浮いた資金があるとすると、篠田さんは新年からどんなものに再投資したいですか? いくつか例を挙げていただけると助かります。

外貨で始められる金融商品は限られているため、さらなる円安進行が考えられるのであれば、今年中に利益確定をした後、来年以降再び外貨建てMMFを買い付けても良いと思います。

しかし、前述の通り、現在は株式投資信託の方が圧倒的に種類が豊富なので、公社債投信に限定せず、広い視野で投資信託を選んでいただきたいと思います。

まだまだ不安定な相場環境が続くと思われる中で1つご提案したいのは、資産を「減らさない」ことに注力したファンドです。

これらのファンドは、株式や債券など複数資産に分散投資を行うだけでなく、ロング・ショートなど運用上の戦略も積極的に取り入れることで、ポートフォリオ全体のリスクを調整します。

相場の変動に左右されない、「負けない」運用を目指すファンドは、実際に今年8~9月の世界的な株式市場の下落局面でも持ちこたえることができました。

「負けない」運用に主眼を置いているため、相場好転時の獲得リターンにやや物足りなさを感じる可能性はありますが、安心して「放っておける」タイプのファンドとして選択肢に入れておきたいところです。

「放っておける」タイプのファンドの例

ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド (ピクテ)

トレンド・アロケーション・オープン (三菱UFJ国際)

クルーズコントロール (DIAM)

GARSファンド(三井住友トラスト)

――外貨建てMMFに投資していた資金ですから、急に大きなリスクを取るよりは、「負けない運用」に徹するのは確かになじみそうですね。今日はありがとうございました。

【2015年11月17日 篠田 尚子 / 投信1編集部】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>資産運用の始め方に迷ったらとりあえずバランス型投資信託

>>債券型投資信託の注意点―毎月分配型を見極めるポイント

篠田 尚子
  • 篠田 尚子
  • 楽天証券経済研究所
  • ファンドアナリスト

慶應義塾大学法学部卒業後、国内銀行にて個人向け資産運用相談業務を経験。
2006年よりロイター・ジャパン(現トムソン・ロイター・マーケッツ)傘下の投信評価機関リッパーにて投資信託のデータ分析、評価、市場調査を担当した後、2013年11月楽天証券経済研究所入所。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。