NISA口座では100万円の枠を使いきることを目的にしてはいけない

この記事の読みどころ

制度開始2年目のNISA(少額投資非課税制度)は、金融機関にとってはまだまだ旬なテーマです。

NISAの利用状況についての統計から分かることがありました。

NISA口座を使うことはあくまで手段です。「NISA口座の枠が余っているから、年内のうちに投資しよう」という、目的と手段をはき違えてしまうことがないようにしましょう。

制度開始2年目のNISAはまだまだ旬なテーマである

11月になって来年の声が聞こえてくると、経済系の新聞社や雑誌社の主催でセミナーやシンポジウムが開催されます。開催の案内を見ていると、今年はNISA関連をテーマにしているところが多いようです。

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NISAは、ご存じの通り、年間100万円の投資までは、その収益(値上がり益、配当金、分配金)に関して、最長5年の間、非課税とする制度です。2014年から始まった制度で、今年が2年目になります。

1人1口座に限られ、比較的中長期の資金を囲い込めそうだということで、各金融機関がこぞって口座を獲得しようとしています。

2016年からは、年間の上限が120万円にまで引き上げられます。さらに、0~19歳を対象として、ジュニアNISA(年間の上限が80万円)の制度が始まることから、まだまだNISAの話題が続くように思われます。

NISAの利用状況の統計は示唆に富んでいる

すでにNISA口座で投資をしている人も、まだ口座を開設していない人も、「ほかの人たちはどうしているの?」というのは気になるところではないでしょうか。

そこで、NISAの利用状況に関する統計を見てみました。金融庁と日本証券業協会が定期的に統計を公表しています。

統計より・その1: 口座の約半分は60~70歳代のもの

NISA口座数は、2015年6月末で921万口座です。うち、証券会社が約60%(557万口座)、銀行・信託銀行が約40%となります。年代別で最も多いのが60歳代、次が70歳代で、この2つの世代で口座数全体の47%を占めます。

ただ、時間が経つにつれて20~30歳代の構成比も上昇しているので、若い世代にはこれから少しずつ広まっていくということでしょう。

統計より・その2: 投資対象の3分の2は投資信託

NISA口座で2015年1~6月に買い付けられた金額の約3分の2が投資信託です。証券会社での口座が60%を占めているので、投資対象は上場株式が多いと思いきや、まったく逆でした。

興味深いのは、2014年の統計では20~40歳代の方が50歳代以上よりも、株式に投資している割合が高いということです。

統計より・その3: 約半分が非稼働口座

NISA口座の約半分は、「口座は作ったけれどまったく投資していない」という非稼働口座です。2014年の口座の稼働率は約45%でしたし、証券業協会の統計でも2015年6月時点での稼働率は約50%にとどまっています。

統計より・その4: 年末に向けての投資余力

2015年1~6月に投資された1口座あたりの金額は、全体で24万円です。世代別では、最も高いのは60歳代の28万円で、20歳代では約15万円となっています。

この数字は全体の約半分を占める非稼働口座を含めてのものなので、1口座あたり金額を2倍すれば、稼働する1口座あたりの投資金額に近くなります。

つまり、稼働口座だけを対象にすると、2015年の前半で投資された1口座あたりの金額は、大体50万円程度ということになりそうです。

年間100万円が上限なので、年末に向けて、まだまだ投資余力が残されているというところでしょうか。

参考:「NISA口座の開設・利用状況調査(平成27年6月末)」および「NISA口座の開設・利用状況調査(平成26年12月末)」(金融庁)、「NISA口座開設・利用状況調査結果(平成27年6月末)」(日本証券業協会)

資産運用の要は「目的」と「目標」を明確にすること

年末に向けて投資余力が残っているわけですから、12月にでもなれば、「せっかく税金が免除される枠があるのに、使わないともったいない」という声が聞こえてくるかもしれません。

一見正しいように聞こえますが、それはあくまで、「NISA口座の枠に関係なく、資産運用をする予定がある場合」に限ってのことです。

個人が運用を行う際には、以下のように、「目的」と「目標」を明確にしておくべきだと考えています。

目的:

何のために投資をするのかということです。たとえば「子どもの大学の学費を用意する」といったようなものです。

目標:

目的を達成するために必要になる金額から逆算して、どのくらいのペースで増やそうとしているのか、ということです。「この手元の100万円を5年間、年5%ずつ増やす」といったものが目標になります。

NISA口座を使うことはあくまで手段であって、目的ではない

目的と目標が明確になって初めて、「何にどれだけ投資をするか」という、手段の話が有効になります。

NISA口座は、税金という「リターンを押し下げる要因」を取り除く手段に過ぎません。「NISA口座の枠が余っているから、年内のうちに投資する」というのでは、目的と手段をはき違えてしまうことになりかねません。

NISA口座は、あくまでも収益に対する税金が免除されるものです。損失が出る場合は、何のメリットもありません。NISA口座での損失は他の口座の利益と通算できないことは、むしろデメリットとも言えます。

目的と目標が明確に定まらないうちに、年末のあわただしい雰囲気に流されて投資をしてしまうと、損失につながる可能性が高くなってしまいます。

その点を踏まえた上であれば、税を考慮したベースでの投資リターンを高めるために、今年のNISA口座の投資枠を大いに活用すべきです。

最後に1点、まだNISA口座を開設されていないという方は、申し込みから開設まで1か月程度かかりますので、口座開設の申し込みはお急ぎになられることをお勧めいたします。

【2015年11月20日 藤野 敬太】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>ネット証券会社徹底比較:株も投資信託も気になるあなたへ

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。