セミナーで聞いた注目ポイント

2015年の市場の動きは1998年のロシアショックに似ています。この経験則に従うと株式市場が先に底入れし、しばらくたって商品市場が回復するとのシナリオがあり得るようです。

世界的に国債の利回りが低く運用難です。とはいえ、株式だけではリスクコントロールの余地が限られます。長期でリスクを押さえながら着実に資産形成をするには、投資のタイミングの分散と、株式や商品、あるいはオルタナティブ投資へとリスクを分散するのが望ましいとの見方が示されました。

米国では2015年12月に利上げが行われそうです。しかし株価と企業の稼ぐ力からみて、株価が大幅に調整する可能性は限定的と言えるとのことです。

マネックス証券とピクテ投信投資顧問の共同イベントに参加

マネックス証券と210年の歴史を持つピクテ投信投資顧問が、共同のイベントを2015年11月24日に東京で開催。投信1編集部も参加してきました。

当日は以下の3部構成です。

第1部:ピクテ投信投資顧問の荻野社長講演~「今、お伝えしたい チャイナショックを踏まえた、これからの資産運用」

第2部:マネックス証券の松本会長とピクテの荻野社長が会場およびオンラインでの参加者からの質問に回答

第3部:スイスのピクテ・アセット・マネジメントでバランス運用チームのヘッドを務めるエリック・ロセ氏がライブで会場参加者とQ&A

運用目線、アナリスト目線で興味を引いたポイントをお伝えしたいと思います。

2015年夏のチャイナショックの市場の動きは1998年のロシアショックに似ている

初めにプレゼンに立った荻野氏よると、2015年の世界の様々な市場の動きは1998年8月のロシアショック時に似ているということです。萩野氏のコメントをもとに、ポイントをまとめます。

1998年8月、ロシアの中央銀行は対外債務の支払いを90日間停止するという発表を行い、世界の市場にショックが走りました。1998年10月には有力ヘッジファンドであったロングターム・キャピタル・マネジメントが破綻しました。

一方、2015年8月には中国の中央銀行が3日連続で人民元相場を引下げ、市場にショックが走りました。そして2015年9月末にスイスの資源大手グレンコア社の経営懸念が市場に広まりました。

この2つの局面を重ねて今後の展開を占うと、株式は新興国も含めてほどなくショックを乗り越え上昇に転じ、原油などの商品はさらに時間をかけて底入れるシナリオも想定されるとのことです。

グラフで確認しましょう。赤が2015年、グレーがロシアショック時です。まずは世界株式です。

次に新興国株式です。

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最後に原油です。

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債券の利回りが低下したため新しい発想で資産形成を考える時が来た

上記のシナリオを背景に、萩野氏は新興国も含めた世界の株式や資源関連への投資機会に言及しました。

もう1つ興味深かったのは、従来は国債と株式を組み合わせることでリスクを抑制しながらリターンを追求できたが、現在ではそれが難しいという指摘です。なぜなら、債券の利回りがきわめて低く、また株式が下落する時にその下落を緩和する機能が働かなくなってきたからだということです。

荻野氏注目の投資戦略

債券投資ではリターンが出にくい環境で、どのような投資をすればいいのでしょうか。荻野氏のプレゼンテーションを筆者なりにまとめると、次のようになります。

1. 手元の資産をできるだけ10年以上運用する長期投資に振り向ける。5年以下の資産は年率2-3%のリターンを狙うマルチアセット運用が数少ない選択肢。1年以下の資産は現金

2. 長期投資では内外の株式や不動産などに投資する。商品や(絶対値のリターンを追求するような)オルタナティブ運用も投資先として組み入れ分散を図る

3. 「世界経済は長期的に成長を続ける」という考え方が重要。このメリットを取るために、時間分散をしながら10年単位の長期投資をし、かつ広く資産分散をおこなうことが大切

12月に予想される米国の利上げが株式市場に与える影響は限定的になりそう

荻野氏によれば、12月に米国の利上げが行われたとして、その影響は小さいだろうとのことでした。

金利が十分低いことから1回の利上げがあってもまだまだ低金利であること、そして企業の稼ぐ力がしっかりしていて株価は過剰に割高ではないからだということです。

上記の見方を裏付ける考え方として紹介された、株価のピークの見極め方に関する考察は興味深いものでした。

萩野氏は米国株を例に、「短期金利と米国10年国債利回りと米国株の益利回りが同じくらいになった時に米国株がピークをつけた傾向」があることを指摘。

その上で、現在の状況については、米国株の益回りは約6%、短期金利はゼロに近い水準であるため、少し金利が上がっても企業業績がしっかりしていればこの差が極端に小さくなることはない、従って株式の相対的な魅力は変わらない、との見方を示しています。

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外国人ファンドマネージャーにも日本株は引き続き魅力的に映る

プログラムの最後では、長期分散投資の考え方を取り入れ、チャイナショックの影響を最小限にとどめた実績のある「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド 愛称:クアトロ」を運用するエリック・ロセ氏がライブビデオでスイスから参加しました。

ロセ氏は「金融緩和が続くこと、円安が進み企業を潤すこと、外国人が日本株を買い増す可能性があること」などを理由に、日本株に対して強気の見方を示しています。特に中小型株に魅力があるとのことでした。

今回のセミナーは、運用会社の国内トップと海外の運用担当者の話を同時に聞ける、なかなか貴重なイベントでした。

LIMO編集部