豊洲は職・住・遊・学一体の街

キャナリーゼという言葉をご存じでしょうか。高層タワーマンションが立ち並ぶ東京の豊洲地区の住人のことです。もともとは埋め立て地であり、運河(canal)が多い土地柄に由来するものです(余談ですが、豊洲から出勤するサラリーマンは“キャナリーマン”と呼ばれているようです)。

高層タワーマンションに加え、大型ショッピングセンターである「アーバンドック ららぽーと」があることから、住宅地、商業地としてのイメージが強い豊洲ですが、この地域には上場企業の本社が意外に多くあります。

具体的には、IHI(7013)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、日本ユニシス(8056)、SCSK(9719)、NTTデータ(9613)などです。

もともと豊洲にはIHIの造船所があり、現在とは異なり工業地帯でした。IHIは、2002年に豊洲地区にある同社の企業不動産を有効活用する再開発に着手し、生産・研究設備を横浜へ移転。その後、2006年に大手町から豊洲に本社を移しています。

当初から再開発の基本ポリシーが「職・住・遊・学一体の街づくり」であったため、高層マンション、ショッピングセンターに加え、オフィスビルや大学(芝浦工業大学豊洲キャンパス、2006年開設)などが併存しているのです。

IHIにとって不動産事業は成長原資

この豊洲を代表する企業であるIHIは、1853年、ペリー来航の年に「石川島造船所」として創業された老舗企業です。

造船事業からスタートしましたが、現在の事業セグメントは、資源・エネルギー(ボイラー、原動機プラント)、社会基盤・海洋(橋梁、不動産販売)、産業システム・汎用機械(ターボチャージャ)、航空・宇宙・防衛(航空エンジン、ロケットシステム)と多岐にわたります。

豊洲の不動産事業については、上記の通り社会基盤・海洋セグメントに含まれ、2015年3月期の賃貸収入の実績は93億円でした。

同社では不動産事業の考え方として「開発することで資産価値向上が見込まれる豊洲・砂町地区を中心に資産価値向上を目指し、創出したキャッシュは成長する事業に優先的に投下し、必要な場合は一部売却等を行う」と2016年3月期上期の決算説明会でコメントしています。

このため、豊洲地区の再開発事業の成否は、IHIの中長期の成長性を考えるうえで無視できない事業であると捉えられます。

2016年には豊洲市場も開設、鉄道路線延伸の可能性も

2016年11月には、現在の築地市場は豊洲新市場に移転する予定です。

また、東京都は有楽町線の延伸(豊洲~住吉)や、ゆりかもめの延伸(豊洲~勝どき)を検討中です。東京オリンピックまでに実現するかは現時点では不透明ですが、着工が決まれば、注目されるきっかけになることは間違いないでしょう。

筆者は“キャナリーマン”ではないですが、豊洲近隣に住んでいるため、本社を豊洲地区に移転する上場企業がさらに増えていくのかなどを、これからも注視していきたいと思います。

【2016年1月27日 投信1編集部】

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LIMO編集部