愛国心旺盛なディアスポラ(出稼ぎ労働者)

昨今は移民問題に関するニュースが多く取り沙汰されていますが、出稼ぎ労働者の多くは真面目で愛国心旺盛。世界では、約2.32億の人々が祖国を離れて海外で生活・労働していると言われており、日本にも多くの外国人が働きにきています。これらの人々はディアスポラ(diaspora)と呼ばれています。

前回は新興国の中流階級層の増加に伴う、新興国拠点のクラウドファンディングの発展の可能性について紹介しました。今回は、ディアスポラがなぜクラウドファンディング業界において注目されているかについてお伝えします。

ディアスポラが、自国や家族宛てに送金する総額は年間で合計5,800億ドル(約70兆円)に上ります。これは彼らが年間に1人当たり約2,500ドル(約30万円)を自国や家族に送金しているということになります。これを機会と捉え、「祖国や出身地の発展と成長を応援したい」というディアスポラをターゲットにしたクラウドファンディングが増えています。

例えば、現在アフリカのディアスポラが本国に送金する際は約12%の銀行手数料がかかります。しかし、より安価に自国のビジネスに投資できる機会があればどうでしょう。銀行を通じた送金よりもクラウドファンディングによる祖国への貢献を選ぶディアスポラは少なくないとの見解も見られます。現にクラウドファンディングとディアスポラの送金は相関関係にあるとの分析がされています。

開発途上国のクラウドファンディングとディアスポラ送金の関係

政府や国際ドナーの注目度も高いディアスポラ

政府や国際ドナーはこの可能性に期待を寄せています。Homestirngsというクラウドファンディングプラットフォームは、ディアスポラを中心とした投資家のためのファンディングツールです。ここでは、ディアスポラは、ディアスポラ債を購入し、彼らの祖国の事業に投資することができます。

例えば、Homestringsでは、未だ資金不足が著しいマケドニアの中小企業セクターの事業に多くの投資が集まっており、マケドニアの起業促進、事業拡大、これに伴う雇用創出に貢献しています。Homestringsでの投資には、米国国際開発庁(USAID)による2千万ドル(約24億円)の信用保証が導入されています。

各国政府も、自国の発展のためにも、海外に居住するディアスポラがより容易かつ安価に祖国に投資ができる手段として、クラウドファンディングは有効だと考えています。

米国への出稼ぎ労働者の多いメキシコでは、ディアスポラが自国のディアスポラ債を2ドル購入すると政府がそれに1ドルを追加し、合計3ドルがメキシコのコミュニティの開発に費やされるという「3×1プロジェクト」をこれまでに実施してきました。このモデルは他国でも模範とされはじめています。

この3×1プロジェクトのようなモデルは、クラウドファンディング上での運用も可能であることから、今後政府がディアスポラの送金とクラウドファンディングを組み合わせる構想に乗り出すことも考えられます。

クラウドファンディングは、投資家と被投資者の間の距離を縮め、よりフェイス・ツー・フェイスに近いやりとりを生むことから、情報の非対称性を薄める効果があります。このために、クラウドファンディングは、ディアスポラによる本国への貢献を促進するものと考えられています。

日本にも、日本を拠点とする外国人ディアスポラが200万人存在します(法務省)。彼らの送金先には、日本人の興味を引く画期的なビジネスアイディア、魅力的な投資機会があるかもしれません。

出所・参考:AlliedCrowds (2015) Developing World Crowdfunding Diaspora Crowdfunding

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