名古屋大須商店街に馴染む外国人観光客:コメ兵で見たインバウンド消費の現場

名古屋・大須商店街(写真提供:著者、以下同)

いろいろな顔を持つ大須商店街

名古屋にある大須(おおす)商店街をご存知でしょうか。名古屋駅からも繁華街の栄(さかえ)からも近い、約1,200店が軒を並べる有数の商店街です。

江戸時代に大須観音が移転してきて以来の門前町であり(参考:大須の由来)、第7代尾張藩主の徳川宗春公の文化推奨によって盛り場として発展しました(第8代将軍徳川吉宗公の倹約令に対抗したとの説もあります)。大正時代以降は劇場や演舞場も設けられるなど、戦前の名古屋で随一の繁華街となります。

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戦時中は名古屋大空襲で焼き尽くされ、戦後は名古屋の中心が栄(さかえ)に移ってしまうなど、すたれた時期がありました。それでも、1970年代には電気街として発展を遂げ、東京の秋葉原や大阪の日本橋と並ぶ、日本三大電気街のひとつと言われるまでに復活しました。

今でこそ、大型家電量販店の名古屋駅前への進出によって、電気街としては頭打ちの感は否めませんが、電気街の延長線上でオタク文化の醸成地にもなっていきました。「お帰りなさいませ ご主人様」のフレーズを最初に使ったのは、大須のメイドカフェだと言われています(諸説あり)。

東京で言えば、秋葉原(または池袋)、浅草、人形町を合わせたようなところと言えば良いでしょうか。門前町、盛り場、電気街、オタク文化の街・・・と、いろいろな顔を持ち合わせている商店街です。大須商店街公式ホームページでも、「ごった煮」の雰囲気と表現しています。

大須観音の近くは門前町の雰囲気

さて、大須商店街の奥深そうな懐へ、大須観音側から入っていきます。

大須商店街入り口

さすが門前町だけあって、すぐに目につくのが、和菓子のお店です。「青柳家本店」や「大須ういろ」など、名古屋名物のういろうで有名なお店や、女子フィギュアスケートの浅田真央選手が愛用する「朝日軒」というせんべい屋が軒を並べています。

大須商店街のすぐそばに、名古屋スポーツセンターがあります。通称、「大須のスケートリンク」。浅田真央選手のほか、古くは伊藤みどりさんや、若手では宇野昌麿選手など、多くの有名選手を輩出してきたので、「フィギュアスケート界の聖地」とも言われています。

浅田選手は練習の後に、お気に入りの「朝日軒」の「やさいかすてら」をよく食べていたそうです。

朝日軒のやさいかすてら

多国籍化する飲食店

商店街をさらに奥へ進みます。

訪れたこの日は成人の日で、多くの人でごった返していました。外国人も多いという印象はありましたが、集団旅行客はほとんど見かけませんでした。個人またはファミリーでの少人数の旅行客か、または、日本に在住している人たちかもしれません。

商店街を歩いていると、何となくですが、アジア料理系の香りを感じました。それもそのはず、トルコのファーストフードであるケパブの店、水たばこも吸えるトルコ料理のレストラン、さらには、ブラジル料理店によく遭遇します。

商店街を訪れる人だけでなく、商店街を構成するお店もまた、多国籍化が進んでいるようです。

大須商店街にあるブラジル料理店

中古品販売大手のコメ兵の本拠地

この大須商店街の中に本店を構える上場会社に、中古品販売のコメ兵(2780 東証二部)があります。

コメ兵のルーツは愛知県半田市の米屋です。その2代目の石原大二氏は、事業資金を集めるために、妻が嫁入り時に持参した着物などを行商したことをきっかけに、家々をまわって古着を集めて行商して歩いたところ、面白いように売れたそうです。

その後、終戦間もない、物資不足で衣料への需要が高い時代、古着の行商の成功体験を踏まえ、1947年に大須で約5坪の古着屋「米兵商店」を開業しました。これが後に、中古品販売の大手企業となるコメ兵の前身です(参考:コメ兵の歩み)。

コメ兵の本拠地である大須には、販売の4店舗(本館、カメラ・楽器館、きもの館、USED MARKET)と買取センター1店舗があります。案内図を見ると、「KOMEHYO 本館」のようにアルファベット表記になっているのは、外国人旅行客の増加を受けて、2013年4月以降、店舗名表記を全店「KOMEHYO」へと変更したからだそうです。

コメ兵の案内看板

本館は7フロアあり、宝石・貴金属、時計、ブランド品、衣料を取り扱っています。エントランスから各フロアの内装まで、百貨店の雰囲気をうまく出しています。衣料などは、サイズがそろっていないことを除けば、特に意識しないと中古品とは思えないほどです。

コメ兵の時計フロアにて

コメ兵本館

今回は、本館の時計フロアを見てみました。私は腕時計のことは詳しくありませんが、メンズの販売価格帯は20~30万円あたりが多いような印象を受けました(もちろん、上を見れば、200~300万円の時計も多くあります)。

20~30万円の販売価格帯が多いことと関係しているかもしれませんが、ブランドとしては、Rolexが多い感じもしました。

訪れた成人の日の午後は、グループ客が押し寄せるような状況はなかったものの、それなりに来客があったように感じられました(定点観測ができるわけではないので、このような場合では、店員・スタッフが忙しそうにしているかどうかを一つの基準にしています)。

また、中国語での接客の会話も複数聞こえてきましたが、いずれも1人での来店のようでした。爆買いという印象はまったくなく、じっくりとお目当てのものがあるかどうか探しているという感じです。

コメ兵は決して訪日観光客依存ではない

コメ兵の2015年7-9月期の決算説明会資料によると、インバウンド売上高は、全体の売上の約15%を占めています。決して低くはないものの、訪日観光客に依存しきっているというほどでもありません。

確かに、店舗を訪れた時は、訪日観光客だらけという状況ではありませんでした。訪日観光客動向よりも、名古屋の景気動向の方が重要なファクターであるようです。

国別では、中国53.6%、フィリピン9.9%、タイ9.6%となっています。15年3月期は、中国46.1%、タイ14.8%、フィリピン6.9%でしたから、理由は分かりませんが、意外にもフィリピンが構成比を急速に伸ばしている状況です。

また、商品別では、時計47.6%、宝石・貴金属28.6%、ブランドバッグ19.7%となっていて、コメ兵に関しては、時計の販売動向である程度インバウンド消費の雰囲気が分かるように思います。あと、構成比が3.2%にとどまる衣料ですが、やはり新品が好まれているのではないかと考えられます。

なお、毎月公表されている月次売上高を見ると、2015年12月は前年同期比100.1%とかろうじて前年を上回った水準です。

2014年12月のクリスマス・年末商戦の売上高が高水準だったことを考えれば、健闘したと言えなくもないですが、重要月の伸び率が低下傾向にあることは要注意です。実際、2015年7月の月次売上高の伸び率が低下したあたりから、株価は低下傾向にあります。

※参考:コメ兵2016年3月期 第2四半期決算説明会資料

大須商店街にて感じたこと

訪日観光客の爆買いとは関係なく、大須商店街に海外の人が馴染んでいるという印象を強く持ちました。今回、訪日観光客の動向を確認したいと思い訪れてみましたが、大須商店街が異文化を受け入れるマインドを持ち合わせている様子を垣間見ることができたように思います。

【2016年2月3日 藤野 敬太】

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藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。