円高でも株価堅調なハイテク企業、日東電工の強さの秘密

投資家はどこに注目しているのか

厳しい事業環境にも関わらず株価は堅調

日東電工(6988)の株価が堅調です。大型連休前の4月28日に発表された2016年3月期決算では、営業利益が前期比▲4.1%の減益、2017年3月期の営業利益予測は▲12.1%減益の900億円だったにも関わらずです。

実際、同社の決算発表があった4月28日から5月16日まで、日経平均株価が▲1.2%下落している中、日東電工の株価は終値ベースで+15.9%上昇しています。

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同社はハイテク関連企業の中でも為替感応度はかなり高い部類に入ります。しかも、前期(2016年3月期)で業績が悪かったQ4(1~3月)に続き、今期(2017年3月期)Q1(4~6月)も同様な状況が続いているようです。ちなみに今期の会社予想の前提になっている為替レートは110円/ドルです。

このような事業環境でも株価が堅調なのは、いったいなぜなのでしょうか。

創業100周年に向けて明確な事業ポートフォリオ変革路線を打ち出す

同社は、高﨑秀雄社長のもと、創業100周年に当る2018年度に売上高9,100億円(今期予想7,700億円)、営業利益1,300億円(同900億円)というアグレッシブな中期経営計画「Nitto-2018」を打ち出しています。

これは筆者の見方ですが、同社はある意味、先を読み込んで迅速に事業ポートフォリオを組み替える遺伝子を持っていると思われます。

現に1990年代には液晶ディスプレーの高成長を睨み、パネルの肝である偏向フィルムで世界トップの地位を築き、オプトロニクス事業で高収益を上げています。これからどのように経営の舵を切るのか注視していきたいと思います。

有機ELディスプレーにどう対応するか

しかし、今や液晶ディスプレーの主導権が中国に移っています。加えて、スマートフォンの世界トップ企業が2018年モデルから液晶ではなく、有機EL(OLED)を標準装備すると発表しています。

液晶ディスプレーでは同社が得意とする偏向フィルムを2枚使用するのに対して、有機ELディスプレーでは1枚しか使用しません。しかし、同社の経営陣に動揺の気配は感じられません。

それは、収縮しにくく、フレキシブルに折り曲げ可能な世界一薄い新型偏向フィルム(コーティングタイプ)が、有機ELディスプレーに有利に働くと踏んでいるからです。加えて、同社の得意なITOフィルム、反射防止フィルム、金属蒸着によるフォースセンサーなどの組み合わせで勝算ありと考えているようです。

事業ポートフォリオの中でライフサイエンスが伸び始める

自動車、エレクトロニクスなどの分野に、幅広く事業基盤を持っているイメージの強い日東電工ですが、ライフサイエンス、中でも、創薬分野に積極的な姿勢を見せています。

同社の事業セグメントのひとつであるメディカル・メンブレンの営業利益は、2015年3月期に24億円でしたが、2016年3月期には前期比4.6倍の112億円に膨れ上がりました。その理由は、米国で買収した核酸医薬品の受託生産会社の業績が急拡大したからに他なりません。

また、国内では北海道医科大学と共同で肝硬変、肺繊維症の治療薬を開発中ですが、これは同社の有するDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)という標的療法による画期的な新薬です。

肝硬変患者は世界600万人とも言われており、米国食品医薬品局もこの新薬をファスト・トラック(優先承認審査制度)に認定しています。今後は、2016年秋にもフェーズⅡbに移行し、2018年頃にフェーズⅢに入るタイミングで大手製薬メーカーとの提携も視野に入る模様です。

キャッシュの使い道は、設備投資と研究開発が最優先

同社の高﨑社長は常日頃、海外投資家からキャッシュの使途を尋ねられると、優先順位を次のように答えています。

(1)設備投資・研究開発
(2)安定配当(配当性向25~30%)
(3)M&A
(4)自社株取得の順である。

2016年3月期決算における同社の自己資本比率は74.4%(実績)という高さにも関わらず、自己資本利益率(ROE)は13.3%、営業利益率も同12.9%と化学産業の中では異色の高収益企業です。

他社に先行する研究開発とそれを実現する設備投資のタイミングが同社の強み、真骨頂と言えます。今後も、こうした点に注目していきたいと思います。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。