なぜソニー株は業績予想発表後に買われたのか―3つの理由

純利益は減益予想でも垣間見えた復活の兆し

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分かりやすかったソニーの業績見通し説明会

2016年5月24日、ソニー(6758)は2017年3月期の連結業績予想を発表しました。熊本地震の影響で、4月28日の決算発表時点では公表を見送っていたものです。

会見は質疑応答を含め約30分でしたが、受け答えは明瞭でとても分かりやすいものでした。ソニーのIRページには、会見の動画に加え、前回の決算からはスピーチ原稿も添付されていて、忙しい個人投資家の方でも短時間で内容を確認できます。ぜひ、ご覧になってみてください。

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ちなみに、“分かりやすさ”という表現はやや主観的過ぎるので少し補足しますが、筆者の基準では会見の動画が質疑応答まで開示されているかを1つの判断基準にしています。

悪い例の代表格は東芝です。同社の場合、動画でアップされているのはプレゼンテーションのみで、質疑応答は割愛されています。これでは、一方的なプレゼンテーションだけでは理解できない細かいニュアンスまで汲み取ることは困難です。

業績予想が好感された3つの理由


今回、新たに公表されたソニーの2017年3月期業績予想は、売上高が前年同期比▲4%減、営業利益が同+2%増、当社株主に帰属する当期純利益(以下、純利益)が同▲46%減と、どちらかというと見栄えは良くないものでした。しかし、発表翌日の5月25日の同社株は前日比+6.5%高となり、日経平均の+1.6%高を大幅にアウトパフォームしています。この理由として筆者が考えたのは以下の3点です。

第1は、純利益は減益予想であるものの、その背景として震災の影響や税率の一時的な上昇などの理由が丁寧に説明されていたことです。

震災の影響は、デジカメとデバイスを中心に営業利益で▲1,150億円の減益要因と説明されました。このため、震災の影響がなければ、今期の営業利益は+41%増という大幅増益の見込みだった試算ができ、それが投資家に安心感を与えたと推測することができます。

第2は、震災の影響込みでもエレクトロニクス5事業合計の営業利益が2年連続で黒字になる見通しであったことです。

今回の予想では、エレクトロニクス合計の営業利益は1,520億円(前年同期比+25%増)とされましたが、震災影響を除くと2.2倍の大幅増益となり、営業利益率も5%強となります。こうした予想が示されたことにより、事業構造改革の効果がようやく業績にはっきりと現れてきたことを実感した投資家も少なくなかったのではないかと考えられます。

第3の理由は、ゲームの好調が再確認できたことです。

今期の最大の増益セグメントはモバイルコミュニケーション(スマホ)ですが、増益の主因はリストラ効果です。これに対して、ゲームはPS4が利益回収期に入ってきたことが大幅増益の要因です。今年度のPS4の販売台数は2,000万台と、2003年3月期にPS2が記録した2,252万台に迫る台数にまで成長が見込まれています。また、今年10月に発売予定のバーチャルリアリティ(VR)システムの新製品にも期待が高まっています。

今後の注目点

最も注目したいのは、今年度に2期連続で営業赤字が予想されているデバイス部門の今後の回復見通しです。会社側によると、被災したデジカメ用画像センサーを生産する熊本工場では、5月21日からウエハー投入が開始され、8月にはフル稼働に復帰する見通しです。

また、直接は被災しなかったスマホ用画像センサー事業についても、昨年夏の供給不足で失った顧客からの受注回復に成功しており、その効果が今年度下期には現れてくることが示唆されています。よって、過度な懸念は不要とは考えられるものの、これまで大規模な設備投資を行ってきたことや競争激化のリスクも残るため、今後の動向を注意深く見守りたいと思います。

ちなみに、ソニーでは6月29日に経営方針説明会およびIRデーを開催する予定です。こうした機会を利用して、同社の経営改革の進捗や震災からの立ち直りの状況などを、今後も精査していきたいと思います。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。