アナリストは投資対象のどこを見るのか

企業の将来を知る第一歩は過去のビジネスストーリーを知ること

この記事の読みどころ

  • 証券業界にいるアナリストやファンドマネージャーは、投資対象となる企業のどこを見ているのでしょうか。
  • 外部から企業を見るにあたり、定量的な視点と定性的な視点の両方を欠かすわけにはいきません。アナリストはとかく、財務分析などの定量的な視点ばかりという印象もありますが、数字の裏にあるものが何かという定性的な分析の方が大切かもしれません。
  • 投資対象の企業の将来を知るには、その企業の将来あるべき姿と、それに近づくための道筋の理解が必要です。「将来」に対する見方が正しいかどうかの確度を高めるためには「現在」を理解することが大切であり、そのためにも、企業の過去のビジネスストーリー=ヒストリーに意識を向けてみることが最初の一歩になります。
続きを読む

企業調査を行うアナリストとファンドマネージャー

証券業界には、アナリストと呼ばれる人たちがいます。証券会社や機関投資家といった所属の違いや、誰に情報提供するかの違いなどはありますが、一言で言えば、「投資判断を下す人(投資家)に対し、投資対象となる企業(事業会社)についての情報を提供して、投資行動を促す」ことが仕事となります。

ファンドマネージャーと呼ばれる人たちもいます。顧客から資金を預かって運用をする人たちです。顧客の望む収益を上げるべく、日々多くの投資判断をしています。そのために、社内外のアナリストから得られる情報も活用しますし、ファンドマネージャー自身でも企業調査を行います。

アナリストやファンドマネージャーが行う企業調査には、決算説明会や会社説明会に参加するという方法がありますが、より詳しく調査したい時には、企業のマネジメントの方々と直接お会いして調査を行います。経験年数にもよりますが、延べ数で言えば、1人のアナリストが数百、数千社の面談をしているかと思います。

それでは、彼らは、投資対象となる企業の何を見ているのでしょうか。

外部から企業をどう見るか

先日、「外部から企業をどう見るか」というお題で、ある勉強会で講師をさせていただく機会がありました。私はアナリストとファンドマネージャーの両方を経験してきましたが、どちらのポジションであっても、「企業を見る時には、定量的な視点と定性的な視点の両方を欠かさずに企業を見ています」とお話しました。

定量的な視点とは、財務分析やコーポレートファイナンス面での分析などのことです。一方、定性的な視点とは、「経営の質はどうなのか」、「経営者、マネジメントは事業環境や金融環境をどう見ているのか」、ということです。

アナリストはひたすら数字を分析する人?

その時に、勉強会の参加者から、以下のコメントをいただきました。

「アナリストって、ひたすら数字を分析する人だと思っていました・・・」

「アナリスト」を直訳すると、「分析する人」ですし、有価証券報告書や決算短信など、企業が公表する財務・会計面での数字を多く扱っているので、そのような印象を持つのは当然です。決算発表シーズンになると、1日で10社くらいの財務諸表を一気に確認することもありますから、量も半端ありません。

財務分析をすると、成長率や利益率、財務の健全性など、多くのことが分かります。時系列での推移を見ることもできますし、他の企業とも比較することができます。ただ、それだけではなく、どうしてその成長率で伸びてきたのか、どうしてこのビジネスモデルでこの利益率が実現できているのかといった、数字の背景にも想いを巡らせることが大切だと考えています。

そのためにも、定量的な分析だけではなく、定性的な分析が必要となってきます。むしろ、定性的な分析の方が重要かもしれません。

定性的な視点とは理想像と戦略への理解

各企業(とその経営者)は、「〇年後はこういう企業になっているべきだ」という将来像を描いています。一方、現在の姿があり、将来像と現在の姿の間にはギャップがあります。このギャップを埋めるための道筋として、各企業は戦略をつくり、実行していきます。

株式に投資するということは、その企業の将来に期待するということです。理想的な言い方をすれば、企業が描く将来像に合意できるかどうか、また、あるべき将来像に向けての戦略が理に適っているかを判断して、その企業の株式に投資するかどうかを決めるものです。

「将来」を知るのは、過去のストーリーを知るところから始まる

そうは言っても、「その企業がどんな理想を描いているかをどうやって知るか・・・」とか、「戦略が理に適っているかどうかと判断しようにもどうすれば・・・」ということになるかと思います。また、戦略は理に適っていても、実際に成功するかどうかの結果は、やってみないと分からない部分も残ります。

「過去」の蓄積の上に「現在」があり、その延長線上に「将来」があります。そして、「現在」とは、「過去」から見た「将来」です。何だか禅問答のようになってしまいますが、「将来」を知るためには「現在」を知らないと始まりませんし、そのためにも「過去」を探るという作業が必要になります。

どこまで意識をするかはともかく、企業を知る上では、その企業にどのような歴史があるのか、という点は非常に重要です。アナリストとしてだけでなく、当事者でない人が外から企業を知ろうとする時は、ぜひ、その企業の過去のビジネスストーリー=ヒストリーを意識してみることをお勧めします。

そのための手段として、企業のウェブサイトの沿革をチェックする、経営者の書いた書籍にあたる、社史を見る、新聞検索をする、実際に話を聞く、など多くの手段があります。アナリストの仕事は、こうした作業の積み重ねでもあります。

 

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。