投資に役立つ情報とは? 台風報道の「情」と「報」から考える

資産運用や投資判断の精度を上げるのに必要な「情報」への接し方とは?

この記事の読みどころ

  • 今年は台風の当たり年なのか、8月までにいくつもの台風が日本列島を襲いました。自然と台風報道に接する機会が多くなりますが、NHKと民放とでは、台風報道のスタイルに違いがあることが見えてきました。
  • 同じ台風報道でも、伝えるスタイルが違うだけで、視聴者が受け取る内容が違ってきます。
  • 「情報」という字は「情」と「報」に分かれますが、その2つが揃って有用な「情報」となります。資産運用での意思決定や投資判断に必要な情報に接する際も、こうした考え方を念頭に置いておけば、意思決定や投資判断の精度は上がっていきます。
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今年は台風の当たり年?

今年は台風の当たり年になるのでしょうか。8月は途切れることなく、台風が日本列島を襲ったように感じます。

8月に台風が上陸した数は過去最多タイの4つとなり、これは1962年以来のことだそうです。このうち3つの台風(7号、11号、9号)が北海道に上陸しました。1年で3つの台風が北海道に上陸したのは観測史上初めてのことで、それが1週間以内に起きたわけですから、どれだけ大変なことかが分かります。

また、迷走していた台風10号は、東北に直接上陸しましたが、それも観測史上初めてのことです。北海道や岩手では記録的大雨をもたらし、氾濫や堤防の決壊のほか、残念ながら人的被害も出てしまいました。

被害に遭われた方にはお悔やみ、お見舞いを申し上げるとともに、一刻も早く日常の生活を取り戻せることを祈っております。

台風報道のスタイルの違い

これだけ多くの台風が来ると、自ずと、台風に関する報道を目にする機会が増えます。各局の報道を見ているうちに、NHKと民放とでは、報道のスタイルが違うということに気づきました。

NHKの台風報道では事実を正確に伝えることを重視

NHKの報道からは、事実を正確に伝えようという印象を強く受けます。台風の進路にあたる地域すべてについてまんべんなく伝えるという役目があるからでしょうか、「〇〇地方に暴風警報が出ています」、「〇〇地区に避難指示が出ています」といったように、冷静なトーンで淡々と伝えられていきます。

画面に映し出される映像も、海や街中の駅前の様子を、遠くからのカメラで映し出したものが多いように思います。馴染みの薄い街の映像だと、あまり記憶に残るものではありません。

民放の台風報道では現場の大変な様子を伝えることを重視

一方、民放の報道では、事実そのものよりも、現場の大変な様子を伝えることに重きを置いているように感じます。そのため、レポーターが荒れた海の波打ち際で叫ぶように実況していたり、あふれ出た水に膝下あたりまで足を浸しながら、テンション高く様子を伝えたりする、臨場感ある映像が必ず出てきます。

全身ずぶ濡れになって「体を張っている」レポーターが伝えようとしているのは、強風がいかに激しいか、あふれ出る水の勢いがどれだけ強いかといった台風の威力の大きさであり、起きていることがどれだけ大変かということのように見受けられます。

伝え方の違いが生むもの

NHKと民放のどちらのスタイルが良い、悪いということはありません。単にスタイルが違うというだけです。ここでお伝えしたいことは、「同じ報道対象であっても、伝え方が変われば、視聴者が受け取る内容が違ってくる」ということです。

NHKの報道からは、次の行動をどうするかの判断のために必要な「報せ(しらせ)」が、民放の報道からは、どれだけ大変なことが起きているかといった、「情」に訴えるものが、それぞれ伝わってきます。「情報」とは良く言ったもので、両方がそろって「情報」なのではないか、とも思えます。

資産運用や投資でも「情」と「報」が揃って有用な「情報」となる

資産運用の意思決定や投資に必要な情報についても、同じことが言えそうです。

一例として、2016年6月に行われたEU離脱を巡る英国の国民投票を取り上げてみます。

EU離脱を巡る国民投票の投票日は6月24日と決まっていました。その日に向けて「離脱賛成が何%か、反対が何%か」という世論調査の数字が連日のように伝わっていました。その数字の推移を見て分かることは、「いつまでたっても賛成と反対が拮抗している」という事実であり、「報」の内容です。

一方、報道番組や経済番組でのコメンテーターの話の多くは、「たぶん残留ではないか」という予測、または、「もし離脱となったら、これだけ大変な影響が出る」というような、その時点での事実というよりも観測に基づくものだったように思います。「離脱なんてことになったら大変だ・・・」という、「情」の性格が強い内容です。

この「情」と「報」を合わせると、世論調査の数字では拮抗が続いていて、どちらの結果になってもおかしくない中で、残留と思っている人が多そうだというギャップが浮かび上がってきます。こうした時、「EU残留のはず」と思い込まず、少なくともEU離脱シナリオが十分ありうることを念頭に置いておくだけでも、その後の意思決定や投資行動の精度は上がるはずです。

今後、資産運用を取り巻く環境として、米国FOMCによる政策金利引き上げ開始のタイミングと、今後の引き上げ幅や米国大統領選の行方が気になる時期となります。多くの報道に接することになるかと思いますが、何が「情」で、何が「報」なのかを見極めながら、乗り越えていきたいものです。

 

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。