「申(さる)騒ぐ」の格言どおり、2016年は波乱の1年

今日(2016年12月30日)は大納会です。大納会に年初来高値を更新するという期待が高まっていましたが、結果、日経平均株価の終値は19,114円でした。

このところの活況で、「2016年は株が急上昇した」というイメージがあるかもしれません。2015年の大納会の日経平均株価を覚えているでしょうか。実は19,033円で、年末値としては19年ぶりの高値でした。「今とそんなに変わらない」という印象を受けます。2015年が悪く、2016年がよかったというわけではないのです。

2016年は株価が乱高下した1年でした。まず、年末年始の原油安や中国経済の先行き不安を受けて、大発会(1月4日)から6日連続の下落から始まりました。さらに、6月24日に英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票で、離脱派が多数を占めることが確実な情勢になったと伝わると、年初来最安値の14,864円まで下落しました。円高も進み、何度も1ドル=99円台に突入しました。

しかし、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利すると、一転して「トランプ相場」となり、年末にかけて年初来高値を更新し続けました。2016年は申(さる)年で、相場格言では「騒ぐ年」とされます。株価の変動が大きいという意味ですが、まさに、想定外のできごとが多く起こった波乱の年でした。

2017年も引き続き、先行きの予想が難しい展開になりそう

来年は酉(とり)年です。2017年はどのような年になるでしょうか。相場の格言では、十二支にちなんで以下のように言われています。

申酉(さるとり)騒ぐ
戌(いぬ)笑い
亥(い)固まる
子(ね)繁栄
丑(うし)つまずき
寅(とら)千里を走り
卯(う)跳ねる
辰巳(たつみ)天井
午(うま)尻下がり
未(ひつじ)辛抱

格言によると、来年も「騒ぐ」年ということになります。株価もまた乱高下するということでしょうか。

まずは1月20日に米大統領に就任するトランプ氏の政策に注目したいところです。欧州では2017年に、オランダ総選挙、フランス大統領選・総選挙、ドイツ総選挙などが相次いで行われます。ポピュリズム(大衆迎合主義)が世界的に広がる中、その結果が気になります。

相場の格言の中にいる、魚、猫、牛、熊、豚・・・

ちなみに、相場の格言には生き物を例にしたものがいくつかあります。大納会に近づくと使われるのが「掉尾の一振(とうびのいっしん)」という言葉です。「掉尾(とうび)」(ちょうびとも言います)とは、捕らえられた魚が最後の力を振り絞って尾を振る様子です。株価が年末にかけて上昇することを「掉尾の一振」と言います。

日本の十二支には猫は入っていません。相場の格言も猫にまつわるものは見当たらないのですが、実は、有名な格言「頭と尻尾はくれてやれ(底値で買って天井で売ることを狙うと失敗する)」は、「頭と尻尾は(猫に)くれてやれ」という意味だという説もあります。

海外の相場格言にも生き物がいくつか登場します。chicken(鶏)、dog(犬)、cat(猫)などです。

よく知られているのは、bull(牛)、bear(熊)です。bull(ブル)は、雄牛が角を下から上へ突き上げる仕草から相場が上昇していること、bear(ベア)は熊が前足を振り下ろす仕草、あるいは背中を丸めている姿から相場が下落していることを表す言葉として使われます。ブル、ベアは格言だけでなく、「ブル型ファンド」、「ベア型ファンド」など、投資信託の分類名にも使われています。

「Bulls make money. Bears make money. Hogs (Pigsとも) get slaughtered.」という格言もあります。直訳は「ブルは儲ける、ベアも儲ける、ホッグ(豚)は肉になる」です。上昇相場でも下落相場でも儲けるチャンスはあるが、欲張りすぎると失敗するという意味です。

新しい年も、こうした格言の戒めを忘れずに臨みたいものです。

 

下原 一晃