ミドル世代の海外移住、働き方とビザの選択肢とは?

取得のハードルが低いのはマレーシアの長期滞在ビザMM2H

「海外移住」といえば、リタイア後に豊富な金融資産を使って優雅な海外生活を楽しむ一部の日本人の話で、現役世代には無理と思っていませんか。

あるいは、特殊技能を活かして海外で永住している日本人(たとえば日本料理人、盆栽職人、作家/ライター等)をイメージしていませんか。しかし、平均的な現役世代の方々でも、自らの意思によって海外移住することは決して不可能ではありません。

平均的な日本人が海外で働くための選択肢

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まず、平均的な現役世代の日本人が海外で働くには、①日本の勤務先(または転職先)の海外駐在員となる、②海外企業(海外日系企業のローカル採用を含む)に就職する、③海外で起業する、という3つの選択肢があります。ご想像の通り、それぞれの報酬とリスクは大きく異なります。

経営者の方でしたら、自社の海外現地法人または海外本社を設立して、その代表取締役/CEO/マネージングディレクター等に就任する、という手があります。

一方、自営業者や専門家の方でしたら、とりあえず海外長期滞在ビザや永住権を取得し、その国を生活拠点としつつ業務請負等を続ける、という手もあります。

海外生活には避けて通れないビザ問題

当然ですが、海外で生活・仕事するには何かしらのビザが必要になります。海外滞在の法的根拠ですので、適切に準備しておくべきです。

ちなみに、世の中にはビザが不要な短期間だけ勤務させてビザ不要期間が切れるたびに出入国を繰り返させるブラック企業がありますが、そうした職務体制は問題外ですので、くれぐれもご注意ください。

たとえば、移住先として人気が高いシンガポールですと、まず有名なのはGIP(Global Investment Program)を活用した永住権があります。

この取得には、企業家としての経験が3年以上、経営している会社の直近の売上高が年間5,000万シンガポールドル(日本円で約40億円)以上、最低投資金額250万シンガポールドル(日本円で約2億円)等、申請条件は平均的な日本人にはかなり難しいものです。

では、その他に何があるかというと、以下2つの選択肢に絞られます。

  1. 就労ビザEP(Employment Pass):現地企業(含む日系企業)に就職するか、あるいは、経営者の方は現地法人を設立し、その法人からEPを申請します。
  2. アントレ・パス:シンガポールで起業するためのビザです。EP申請時に必要な大学卒業等の条件はありませんが、毎年のパス更新時にはシンガポール人の雇用が義務付けられています。ただ、更新は年々厳しくなっていますので、用意周到な事業計画やビジネスモデルを持たない安易な「起業ごっこ」では難しいでしょう。

なお、以前シンガポールにあった長期滞在ビザ(Long Term Visit Pass、5年間)は、現在、運用されていないようです。

ただ、そもそもこのビザの適格条件は、45歳以上、最低50万シンガポールドル((日本円約4,000万円)の住居用の不動産をシンガポールに所有、最低40万シンガポールドル(日本円約3,200万円)の預金をシンガポール金融機関に預ける等、若干厳しいものです。

海外ノマドやフリーランサーが活用できる長期滞在ビザ

自営業者/専門家/ライター/クリエーターの方ですと、海外長期滞在ビザを取得し、その国を生活拠点としつつ、クロスボーダーでノマド/フリーランサーを続けることも考えられます。

ただ、日本国内で保有する資格で稼いでいる方、たとえば、税理士、会計士、弁護士、弁理士等の専門家の方々は、海外では無資格になり稼げるとは限りませんので、海外で「稼げる力」を再定義することが必要になるでしょう。

このビザの場合、ビザ取得国内では就労・就職できませんので、海外出張ベースあるいはインターネットベースで業務を行うこととなります。

最新事情を見渡しますと、この長期滞在ビザの取得・維持は必ずしも楽ではありません。一般に取得・維持条件(保有する金融資産規模、最低月収、現地通貨建て強制預金)はハードルが高く、しかも年々厳しくなっているようです。

長期滞在ビザといっても、毎年ビザ更新が必要な国が多く(タイ、フィリピン、インドネシア、イギリス、イタリア、フランス等)、毎年更新できるか若干不安が残ります。

取得のハードルが低いマレーシアの長期滞在ビザ

そんな中、マレーシアにはMM2Hという長期滞在ビザ(10年間)があります。これは、日本では”リタイアメントビザ”として知られていますが、50歳未満でも取得可能です。長期滞在ビザの取得・維持コストが安く、10年間という長期であり、かつ年間滞在日数ノルマもなく自由度が高いものです。

私自身の体験では、海外移住先の国を検討する際、まず、グローバルに仕事をするのに利便性の高いシンガポールを考えたのですが、やはり永住権や長期滞在ビザの条件(最低預金額、最低投資額)のハードルが高く、いったん諦めました。

というのは、シンガポールに住みたいというわけではなく、チャンギ空港を利用できればよいことに気付いたのです。国境の橋(Johor-Singapore Causeway)を渡れば、ジョホールバル市(マレーシア)がありますので、マレーシアに決めました。

実際、ジョホールバル市からチャンギ空港まで、深刻な交通渋滞の時間帯を避ければ自家用車で1時間程です。

悪質なサイトにはくれぐれもご用心を

マレーシアのMM2Hの詳細を知りたい方は、マレーシア政府の公式サイト(英語)をご覧ください。諸条件(所得、金融資産)に合えばビザ申請手続きは誰にでも可能です。

なお、GoogleでMM2Hを検索しますと、英語もできず海外事情に不慣れな日本人を騙すような業者(不動産投資、母子留学、リタイアメント支援等)のサイトや、そこに誘き寄せるブログ等も混在しているようですので、ご注意ください。

ちなみに、MM2H取得者は約3万件(2016年6月末までの累計)で、国別では1位中国:7,234件、2位日本:3,993件、3位バングラデシュ:3,293件、4位英国:2,304件、5位イラン:1,325件、6位シンガポール:1,217件となっています。

リタイアメントビザとして日本のシニア層に人気が高いのでしょう。マレーシアでは日本から受け取る年金の非課税、物価の安さ、温暖な気候等が人気の要因なのかもしれません。

ただし、悪質なサイトではマレーシア生活はまるで楽園かのような誇張された表現もしばしば見受けられますので、くれぐれもご注意ください。

 

大場 由幸

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大場 由幸

新潟大学法学部卒業、フィンランドAalto大学(元Helsinki School of Economics)Executive MBA取得。
専門は新興国における中小企業金融、中堅・中小企業のアジア戦略・財務。
中小企業金融公庫(神戸支店、宇都宮支店、本店国際デスク)、在ベトナム日本国大使館 専門調査員、UFJ総合研究所 国際本部チーフコンサルタント、東京中小企業投資育成 アジアデスク統括マネジャー、クロスボーダー・ジャパン(株)代表取締役社長を経て、2012年12月、マレーシア(ジョホールバル市)へ。現在、新興アジア諸国にて地場中堅・中小企業/起業家向け金融支援プロジェクト、戦略コンサルティング等に従事。