「お金の話」は子どもと家族のためになる

金融リテラシーを上げるために家庭でできること

皆さんは、社会人になる前くらいまでの若い頃、お金にまつわる話に興味を持ったことはありますか。また、その興味を持ったきっかけを覚えていますか。

祖母の話が株式に興味を持つきっかけに

私の家では、母方の祖母が株式投資をしていました。小学生から中学生の頃にかけて、母と祖母の家に遊びに行くと、いつも祖母と母が経済の話や銘柄の話をするので、それをよくかたわらで聞いていたものです。

当時、インターネットは存在せず、売買の注文方法は証券会社の店頭か、電話でするしかありませんでした。電話での注文が主だった祖母は、母に「営業の人がこのようなことを言って〇〇という銘柄をすすめてきたけど、どう思う?」とよく聞いていました。

続きを読む

かたわらで聞いていただけとは言え、繰り返し話を聞いていると、次第に興味が湧いてくるものです。「株式というものがあって売買できるらしい」とか、「新聞のあるページに書かれている数字の羅列は株価というものらしい」等々、いつの間にか話が分かるようになりました。

そんな私に祖母は、「株式市場から、世の中の動きが見えてくるよ」といったようなことを教えてくれたのを今でもよく覚えています。

中学生だった1987年、「ブラックマンデー」と呼ばれる世界的な大暴落が起きました。祖母と母が「この先どうなるのか」と話をしているその雰囲気から、何かただならぬことが起きている感じがした私は、親にせがんでニューズウィークの特集号を買ってもらい、何度も読んでは、何が起きているのかを知ろうとしていました。

大人になって、仕事として日本株の運用に携わったのは、子どもの頃のこうした経験が影響していたかもしれないと感じています。子どもの頃の経験は、思っている以上に、その後の考え方に影響を与えるものです。

日本では金融リテラシー教育を受ける機会が少ない

日本は人々の金融リテラシーが高くない国だと言われています。2016年に金融広報中央委員会によって行われた「金融リテラシー調査」という、25,000人を対象に金融に関する選択問題を回答してもらうという調査があります。

この調査では、欧米に比べて金融知識に関する正答率は低めで、望ましい行動を選択する回答者の割合もドイツや英国より低めであるという結果が出ています。

この調査で注目したいのは、「金融リテラシー教育は必要と考えている」人が62.3%いて、その中で「実際に金融リテラシー教育を受けた経験がある人は8.3%しかいない」という点です。

また、金融リテラシー教育を、学校で受ける機会がなかった人の割合は73.9%、家庭で受ける機会がなかった人の割合は60.4%とされています。総じて、金融リテラシーを向上させる機会が少ないと言えそうです。

子どもとお金にまつわる話をする

税金や社会保険料に差が出る! 資産運用のコツは夫婦円満?」でもお伝えしましたが、お金にまつわることをオープンに話ができる夫婦は、資産運用がうまくいく可能性が高まるように思っています。

そう考えるのには、いくつか理由があります。普段からお金の話ができていれば、独断で高リスクな金融商品に資金を投じてしまうことが少なくなり、失敗する可能性は低くなります。

また、何かに投資をしていた時に一時的に市場が荒れた場合でも、心理的に持ちこたえられ、正しい判断ができる確率が上がります。夫婦間のコミュニケーションがしっかりなされていれば、資産運用の目標を見失うことも少なくなります。

金融リテラシーを向上させる機会をつくるためには、この考え方の延長で、夫婦だけでなく子どもともお金にまつわる話を積極的にしてみると良いのではないでしょうか。

話のレベルは「金融リテラシー・マップ」を参考にする

そうは言っても、具体的に子どもと何をどのように話したら良いか分からないかもしれません。子どもの年齢によるところもあって一概には言えませんが、参考になるのは金融経済教育推進会議の「金融リテラシー・マップ」です。

この中で、例えば家計管理の分野では以下のように書かれています。

  • 小学生(中学年)には「必要なものと欲しいものを区別できるようにする」
  • 中学生には「家計の収入・支出について理解を深める」
  • 高校生には「自分のために支払われている費用を知り、家計全体を意識しながら選択や意思決定ができるようにする」

ご興味ある方はぜひ原資料を見ていただきたいのですが、お金にまつわる話について、どのくらい込み入った話をするべきかを知る目安になるかと思います。

親の仕事のことを子どもに話すだけでも十分に役に立つ

それでも、「子どもにお金の話を直接するのはどうも気が引ける」と思われる方は、ぜひ、お父さんとお母さんの仕事のことを話題にしてみてください。

昔は「子どもは親の背中を見て育つ」と言われていましたが、職場と家が別の場所にあることが多くなった今は、仕事をしている親の背中を見る機会が少なくなりました。その分、親の仕事のことを話題にすることは大事なことです。

親の仕事について子どもに話すことは、家庭のコミュニケーションが活性化する、親の仕事へのモチベーションも高まる、子どもの将来の職業選択の考え方の参考になる、さらには金融リテラシー向上の一助になるという、一石で何鳥にもなることだと思います。

藤野 敬太

PR

藤野 敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。