東芝の窮地で改めて注目される原発事業。原子力の功罪とは?

スリーマイル島原発事故から38年、頻発する原子力事故

一連の東芝問題で改めて関心が高まる原発事業

昨今、その行方が最も注目されている企業は東芝(6502)でしょう。事の発端は、2年前に明らかとなった不正会計問題ですが、それに拍車をかけたのが昨年末以降に顕在化した原子力発電事業の巨額損失問題です。今思い返すと、2年前の不正会計事件の背景にも、原発事業における減損処理などがあったものと推測されます。

いずれにせよ、一連の東芝問題が深刻化する中で、改めて原発事業に対する関心と懸念が高まっていると言えます。

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3月28日は世界初の「原発事故」が発生した日

原発事業の詳細は省略しますが、一連の東芝問題とは別に、原発の安全性が益々重要視されていることは確かです。

ところで、3月28日は世界で初の原発事故が発生した日でもあります。1979年のこの日、米国ペンシルベニア州で起きた「スリーマイル島原子力発電所事故」が、炉心融解(メルトダウン)を伴う世界初の原発事故と認定されています。なお、スリーマイル島原発には1号機、2号機がありましたが、事故を起こしたのは2号機のみです。

実は、それまでも世界各地で“原発事故”と呼ばれる事態は数多く起きていましたが、幸いにも炉心融解には至りませんでした。しかし、このスリーマイル島原発事故で、人々が恐れていた炉心融解が現実となったのです。

なお、スリーマイル島原発事故以前にも、たとえば研究用の原子炉や、原子力潜水艦などで相応の放射能汚染を起こした大きな「原子力事故」は幾度か報告されています。しかし、「原子力発電所」の原子炉で炉心融解が起きたという点において、当該事故が世界初の原発事故として認識されていると見ていいでしょう。

炉心融解(メルトダウン)を伴う原発事故は過去に3件発生

世界の歴史上、炉心融解を伴う原発事故はスリーマイル島原発事故の他に、チェルノブイリ原発事故(1986年)、福島第一原発事故(2011年)の3回しかありません。

ちなみに、チェルノブイリ原発事故後の1992年に制定されたINES(国際原子力事象評価尺度)に基づくレベル1~7で判断すると、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故が最上位のレベル7(深刻な事故)とされ、スリーマイル島原発事故はレベル5(事業所外へリスクを伴う事故)とされています。

米国ではスリーマイル島原発事故は忌まわしき記憶

このレベル判断によれば、スリーマイル島原発事故は、チェルノブイリや福島第一よりも深刻度は低くなっています。しかし、米国では今でも、シニア層を中心とした多くの人々に鮮烈な記憶として残っていると考えられ、3月28日は各地で反原発運動も行われているようです。

遠く極東の地で起きたレベル7の事故よりも、自国で起きた世界初のメルトダウン事故の方が米国では重大な事故と捉えられているのかもしれません。

今も稼働するスリーマイル島原発1号機

米国では、スリーマイル島原発事故後、反原発運動が急速に高まりました。実際に、事故後は原発の新設延期を余儀なくされていますが、いつの間にか反原発運動も下火となったのが実情です。現在、米国には約100基の原発がありますが(廃炉や稼働直前も含む)、そのうち約3分の1は、スリーマイル島事故の後で稼働、および新規設置されたものです。

“残念ながら”という表現が適切なのかどうかわかりませんが、米国での反原発運動は下火になり、原発を必要とする経済産業界が主導権を握っていると言えるかもしれません。実は、スリーマイル島事故後、事故を起こした2号機は廃炉となりましたが、隣接する1号機は現在でも稼働しています。

これを日本にあてはめると、事故を起こした福島第一原発の近くにある福島第二原発が稼働していることになります。今の日本ではちょっと考えられないことです。

頻発する原子力事故、日本でも直近40年間で15件

前述した通り、メルトダウンを伴う「原発事故」は3件しか、いや、既に3件も発生していますが、原子力発電所以外も含めた「原子力事故」は、それ以上の頻度で起きています。前掲したINESのレベル4以下の原子力事故で見ても、日本だけで17件発生しており、そのうち15件は直近40年間に起きているのです(注:筆者調べ)。

ちなみに、福島第一原発事故に次ぐ深刻な事故は、1999年9月に起きた「東海村JCO臨界事故」で、これが唯一のレベル4に該当します。覚えている人も多いのではないでしょうか。

原子力に関する安全性で一定の評価がある日本でもこのような状況ですから、世界ではもっと頻繁に原子力事故は起きています。有名な原子力事故としては、旧ソ連の原子力潜水艦爆発事故(1985年)、ブラジルのゴイアニア市で発生した放射能汚染事故(1987年)などがあります。

スリーマイル島原発事故発生の日に改めて原子力の功罪を考える

原発を含めて、原子力エネルギーは今や人々の生活に必要不可欠という見方があります。これが正しいかどうかは別として、産業界を中心に大きく原子力に依存していることも事実です。そして、人類滅亡の危機に繋がるかもしれない危険性と表裏一体の関係にあるとも言えます。

38年前にスリーマイル島原発事故が起きた日に、改めて原子力の功罪について考えてみるのもいいのではないでしょうか。なお、現在、世界中では約435基の原発が稼働しています(停止中を含む)。

投信1編集部

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投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。