美術品の価値はなぜ「謎」なのか、その換金性とは何か?

美術品には2つの側面がある

Adriano Castelli / Shutterstock.com

このコラムで美術品投資について執筆したところ(『問い合わせ急増の美術品投資とは何か?』)、美術品の換金性への疑問に関するコメントがありました。そこで、今回はこの点について説明したいと思います。

美術品に換金性はあるのか?

投資として美術品を購入する際の重要なポイントの1つとして、上記の記事で換金性のある美術品を購入するべきだと述べました。実は美術品には、換金性のある美術品とない美術品、あるいは換金性があっても換金しにくい美術品があります。

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「美術品には換金性があるのか?」という質問に対しては、換金性がある美術品はある、と回答できます。

美術品以外の投資資産である株式や金などには、当然ながら換金性があります。日々市場の取引指標が示されており、明確に換金レートを知ることができます。一方で、美術品の場合、それらの指標を一般に見ることができません。指標自体存在していないからです。その事実が、美術品への換金への疑問につながっているのかもしれません。

それでは不動産の場合はどうでしょうか? 不動産の場合、一般に換金性があることが知られています。しかし、不動産も美術品同様に指標は示されていません。所有する、あるいは購入したい不動産の相場を知るために、私たちは公示価格や直近の取引事例を参照しておおよその値ごろ感をつかみます。

実は、美術品でも、アートオークションでの取引事例などを参照した値ごろ感、つまり相場が存在しています。結局、不動産や美術品は、株式や金などとは異なり、均質のものを取引するわけではないので、平均化された指標を作れないのです。しかし、類似取引事例という、均質ではないものの、近似値的な意味での相場が、取引に際し参照されているわけです。

美術品には2つの側面がある

さて、美術品を換金性で見た場合、不動産よりも理解を困難にさせるのが機能性という側面です。土地や家屋、そしてマンションなどの不動産物件の場合、それ自体が実物として存在し利用することができます。そして、その不動産的価値により相場が形成されています。

一方で美術品の場合、たとえば絵画の場合、誰が描こうと出来上がった作品は美術作品です。絵画は、鑑賞することが現実的な利用になりますが、その価値については、基本的には、その絵が好きか嫌いかという個人的な嗜好に基づきます。この絵画に係る本質こそが、美術品の価値についての謎を深めるポイントなのです。

そこで考えてほしいのは、美術品には「アート」と「資産」という2つの側面があるという事実です。美術品という言葉も「美術(アート)」+「品(もの)」という2つの異なる言葉によりできています。「アート」は「美」に対する個人的な嗜好として、そして「資産」は換金性のある実物資産として考えます。

この場では、個人の嗜好に左右される「アート」を除外し、美術品の「資産」としての側面について考えてみたいと思います。その側面から見ると、ほとんど不動産と同じような性格が見えてきます。

代表的な換金の場であるアートオークション

美術品の主要な換金の場の1つとして知られるのがオークションです。オークションといっても、この場合、専門のアートオークションのことを指します。アートオークションには世界的に有名なクリスティーズやサザビーズなどがあります。日本でも、シンワアートオークションや毎日オークションなどがあります。

そこではエキスパートと呼ばれる専門家が、作品の査定を行い、換金性の有無や、落札予想価格などを設定します。一方でヤフオクなどは美術の専門家を介していませんので、換金性の有無や作品のバリューなどには信用を置くことができません。

そうした専門のアートオークションで美術品が売買され、換金されているのです。オークション市場には様々な種類の作品が出品され、それらの取引事例は一般に公表されています。そのデータから、調べたい作品銘柄の相場を参照できるのです。

美術品の1次マーケットと2次マーケットとは?

ところで、すべての美術品がオークションで取引されるわけではありません。オンマーケットの作品とも呼ばれ、美術品2次市場で不特定多数の誰かが購入する可能性が高い作品しか取り扱われません。美術品2次市場というのは、美術品の転売市場のことです。

美術品は、最初は作家のアトリエで制作されます。その後作品は作家の取り扱い画廊で展示販売され、最初の購入者の手に渡ります。そうした市場のことを美術品1次市場と呼びます。その後、その購入者が作品を転売するときの市場のことを美術品2次市場といいます。

美術品1次市場では、その作品に換金性がなくても、誰かがたまたまその作品を気に入れば、販売されます。よって、画廊主などは作家のプロモーションなど販売のために大きな投資をします。

しかし2次市場では、リセールマーケットとして、原則としてその作品の金銭的な価値の裏付けにより取引されています。その2次市場である専門のアートオークションで一般に取引されている美術品には換金性があるわけで、そこで取り扱われる美術品を資産と呼ぶことができるのです。

つまり、作品の換金性の有無を調べる一番わかりやすい方法は、オークションカタログなど、オークションのデータを参照してみることです。そこに作家の名前が掲載されていれば、とりあえずは換金性がある作品だとわかります。その際、美術年鑑の情報は、2次市場で売買されていない作家の名前も掲載されていることもありますので確認が必要です。

加藤 淳

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加藤 淳
  • 加藤 淳
  • 株式会社アート・コンサルティング・ファーム
  • 代表取締役

アートコンサルタント、京都造形芸術大学大学院 芸術研究科(通信教育)教授、軽井沢千住博美術館キュレトリアルディレクター、フォーエバー現代美術館副館長。
1988年フジテレビギャラリー入社。2002年同社退職後、日本で初めてのアートコンサルティングファームを設立。アートに関する専門知識を顧客目線に立ち多面的に助言提供することで、誰もが公平に参加が可能な美術品市場作りをサポートしている。顧客のブレーンとして、アートアセットマネジメントや美術展キュレーション等のコンサルティングサービスを提供している。
著書「アートコンサルタントが教える「新美術品投資」 」(セルバ出版)。