ロボット版アンドロイドOSは日本から生まれる

誰でも産業用ロボが作れる時代が来る?

写真提供:電子デバイス産業新聞

投信1編集部によるこの記事の注目点

  • 国際ロボット連盟(IFR)の試算では、2018年に世界の産業用ロボットの稼働台数が約230万台に達し、09年の2.3倍に拡大すると見られています。
  • 産業用ロボット市場に新規参入が少ないのは、ロボットの製造にはハードとソフトの高度な擦り合わせが要求されるなど技術的なハードルが高く、高精度で制御するロボットコントローラーが開発できない点にあります。
  • MUJINのロボットコントローラーは、機種や軸数、機械構造などを問わず様々なロボットに使用でき、ロボットを自ら考えて動く知能的なロボットにできる世界で唯一の製品です。
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産業用ロボットの市場が拡大している。市場規模はここ数年2桁成長を続けており、国際ロボット連盟(IFR)の試算では2018年に世界の産業用ロボットの稼働台数が約230万台に達し、09年の2.3倍に拡大すると見られている。日本でも17年におけるロボット(日本ロボット工業会会員33社ベース)の生産額として前年比7%増の7500億円を見込んでいる。

こういった拡大する市場には本来、多くの企業が新規参入してくる。しかし、産業用ロボット市場は新規参入が少ない分野としても知られている。その理由は、ロボットの製造にハードとソフトの高度な擦り合わせが要求され、技術的なハードルが高いこと。新興メーカーでもサーボモーターや減速機といった部品を購入すれば大手メーカーと同じ見た目のロボットを作製できるが、それを高精度で制御するロボットコントローラーが開発できない点にある。つまりロボットの「体」は作れるが、それを動かす「脳」が作れないというわけだ。

ロボットが普及している分野は限定的

産業用ロボットで強みを持つ日本や欧州の産業用ロボットメーカーは、そのコントロール技術によって優位性を築いてきた。しかし、その状況が市場の拡大を阻んできたという見方もある。

実際、ロボットメーカーは、制御に独自のオペレーションシステムをそれぞれ採用しており汎用性が低い。そのため現在の産業用ロボットは決して使い勝手が良いものではなく、導入へのハードルが高い製品となっている。その結果、自動車や電機・電子工場以外への拡大は限定的で、人手不足が深刻化する中小企業などでの活用も進んでいない。

しかし今後、この状況が覆される可能性が出てきている。産業用ロボット開発のハードルを下げる取り組みが増えているためだ。例えば、ソフトウエア開発などを手がける(株)豆蔵(東京都新宿区)は、東京農工大学と共同で産業用ロボットアームの開発期間を短縮する設計手法を3月に実用化した。実機の代わりにコンピューター上にロボットアームのモデルを作成し、解析とフィードバックを繰り返すことで設計を最適化。そこで得られた設計結果から実機試作を行うことで、ロボットの開発期間を大幅に短縮することができるというものだ。

このほか、海外では3Dプリンターで製造したパーツに、ArduinoやRaspberry Piといったマイコンボードを組み合わせ、簡易な6軸ロボットを開発するベンチャーなども出てきている。

そして現在、こういった産業用ロボット開発に関する取り組みにおいて、もっとも注目を集めているのが、産業用ロボットコントローラーベンチャーの(株)MUJIN(東京都墨田区)である。

MUJINの注目度が向上

MUJINのロボットコントローラーは機種や軸数、機械構造などを問わず様々なロボットに使用でき、ロボットを自ら考えて動く知能的なロボットにできる世界で唯一の製品。その技術を発展させるかたちで、ばら積みされたワークをロボットが自ら考えてピッキングできる技術などを開発し、多くの製造・物流現場で導入が進んでいる。

そして現在、内製・外販用に多軸ロボットを作りたい新規ロボットメーカー向けに、基本のロボットコントローラー自体を開発ならびにOEM供給する「ティーチワーカー」を展開している。

一般的に新たなロボット制御システムを構築するには2~10年といった期間を要するが、MUJINの技術を用いることで、動作させるだけなら数週間で可能だという。現在、このティーチワーカーによるカスタムロボットコントローラー事業は個別対応だが、17年内に標準化された製品が発売される予定だ。

つまり、多軸の産業用ロボットを開発したいメーカーは、部材を購入し、ロボットを組み上げ、MUJINのロボットコントローラーを搭載することで、高性能な産業用ロボット開発が可能となる。かつ、ばら積みされたワークをロボットが自ら考えてピッキングできる世界唯一の技術も付帯され、すでに国内外の企業から強い引き合いを得ているという。

MUJINの技術に国内外の企業が注目

産業用ロボットも「スマホ」に?

現在の産業用ロボット市場は「携帯電話でいうと、まだガラケーの段階」(ロボット業界関係者)とも言われている。周知のとおり、携帯電話市場はガラケーからスマートフォン(スマホ)に移り変わる過程において、アンドロイドOSの登場でソフト面での開発コスト・難易度が大幅に下がった。そしてハードウエアを開発しアンドロイドOSを搭載すれば誰でもスマホが開発できる環境が整備されたことで、多くの企業が新規参入し、市場が一気に拡大した。

そして産業用ロボットにも同じような兆候が見え始めており、誰でもロボットメーカーになれる時代がすぐそこまで来ている。もちろん高度なソリューションが必要とされる場面では、既存の産業用ロボットメーカーにまだまだ優位性があり、すぐにシェアが大きく変わるということはないだろう。

むしろ拡大するロボットの需要に対して、供給できるメーカーの数が少ないのが現在の産業用ロボット業界である。MUJINのような技術の普及により、産業用ロボット分野への新規参入企業が増加し、導入分野の拡大ならびに市場の活発化が進むことで、IFRの予測を超える市場拡大が起こる可能性も十分にあり得るだろう。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 浮島哲志

投信1編集部からのコメント

ロボットコントローラーは、日本としてはぜひとも競争優位を確立し、イニシアティブを取っておきたい領域です。モーターなどのアクチュエーターでは利益を得ることができても、コントローラーを始めソフトウェアのような付加価値の大きな領域で事業が展開できないのはさみしいものがあります。現時点ではハードウェアに強みのある日本企業が多い中、そのポジションを基盤にコントローラーでも世界標準となるようなプラットフォーム戦略を取って行くべきでしょう。

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