iDeCo市場はどこまで大きくなるのか

非課税限度額の低さが市場拡大の足かせに?

個人型確定拠出年金、10年後で6兆円の市場規模

2017年1月から個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の加入対象範囲が拡大しました。これまで対象ではなかった公務員と第3号被保険者、いわゆる専業主婦または主夫の皆さんを合計すると潜在的には1300万人前後が新たに対象に加わったことになります。

また、これまで制度上は加入できたものの、認知が進んでおらず参加していなかった1700万人程度の自営業者でも加入が進むかもしれません。ちなみに今回の制度改正で、60歳未満で働く人のほとんどが企業型または個人型の確定拠出年金(DC)に加入できることになり、現役世代の大切な老後資産形成手段になったといえます。

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ところで、フィデリティ投信では、アンケート調査をもとに算出した加入希望者と月額加入金額を使って、今後のiDeCoの市場規模を推計してみました。その結果は下のグラフの通り、10年後の2026年に市場規模は6兆円強となりました。意外に小さいものだと思います。

そのうち一番大きい市場になると推計したのが公務員市場で2兆2200億円、全体の37%を占めます。参加希望者が多いだろうと見込み、公務員約440万人のうちの4割程度が加入するのではないかと推計しました。ただ、非課税上限が年間14.4万円ですので、この水準の低さが市場規模拡大の重石となります。

専業主婦または主夫の市場規模は1兆2100億円、市場全体の20%と推計しています。対象者数は930万人強と大きいのですが、アンケート調査では加入意向者は21%にとどまり、また加入金額も年間で6万円程度と答えていることから、市場規模の推計値は公務員市場の半分程度になります。

海外を参考にすると100兆円規模に育ってもおかしくない

導入2年程度で1000万口座を達成し、年間3兆円規模の資金流入があるNISA(少額投資非課税制度)と比べると、「iDeCoはあまり期待できない」といった意見も聞かれます。

iDeCoは、そもそも個人金融資産の6割以上を保有するといわれる60歳以上が加入対象者ではないことから、NISAと直接比べることができないものです。また、拠出額が所得控除の対象になるなどNISAに比べて税優遇が手厚いことから加入意向者は多いはずなのに、非課税上限額が低いことが足かせになっている点も見逃せません。

もし、こうした点が見直され、よりいっそうiDeCoの使い勝手が良くなれば、かなり大きな市場規模に達する可能性もあるように思われます。

たとえば、アメリカでは確定拠出年金の市場規模は6.3兆ドル、個人金融資産の9.1%(2014年データ)に達します。日本でも同じように個人金融資産1700兆円の1割弱まで市場規模が拡大すれば、個人型と企業型を合わせた確定拠出年金(DC)の市場規模は100兆円台に乗ってもおかしくありません。

現状での市場規模予測は小さいものの、その潜在成長力はかなり大きいものと思われます。iDeCoの認知度向上と将来の制度設計改善を十分に視野に入れておきたいところです。

個人型確定拠出年金の市場規模予測

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、第3号被保険者の退職準備状況、2016年8月

フィデリティ退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

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野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照