乳がんに立ち向かう大手医療機器メーカー、OECD最低レベルの検診率向上へ

日本人の乳がん検診率は30%台

投信1編集部による本記事の注目点

  • 過去20年間の日本人の乳がん罹患率、死亡率、働き盛りの年齢層(40~59歳)での罹患率は、いずれも2倍超へと急増しています。
  • 乳がん検診の受診率は、欧米の70~80%に対し、日本人は30%台と、OECD加盟30カ国で最低レベルです。
  • 日本人を含むアジア人では高濃度乳腺が8割に達しますが、マンモグラフィーのX線では高濃度乳腺により乳房全体の撮像が白色となり、同じく白く写るがんが疑われるしこりと重なって読影が困難となっています。
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過去20年間の日本人の乳がん罹患率、死亡率、働き盛りの年齢層(40~59歳)での罹患率は、いずれも2倍超へと急増しているが、乳がん検診の受診率は、欧米の70~80%に対し、日本人は30%台と、OECD加盟30カ国で最低レベルである。GEヘルスケア、シーメンス、日立製作所といった大手医療機器メーカーが様々な活動や研究開発を進めている。

低い検診率に加え、日本人を含むアジア人は高濃度乳腺が8割にも達し、マンモグラフィーのX線では高濃度乳腺により乳房全体の撮像が白色となり、同じく白く写るがんが疑われるしこりと重なって読影が困難となる。ちなみに高濃度乳腺の認知度は、2015年7月のGEヘルスケアの調査では、米国の48%を筆頭に、各国は30%超、日本はわずか1%である。

GEヘルスケア・ジャパン(株)(東京都日野市)とメットライフ生命保険は、協業を通じて日本の女性を応援するため、低い乳がん検診率および高濃度乳腺の認知度という現状に対し、女性や全国約2000の乳がん検診実施医療機関を対象に、一昨年から検診啓発活動を開始した。

超音波診断は施行者依存性の解消を

乳がん診療ガイドライン2015では、50歳以上または40歳代に対してのマンモグラフィー検診は、推奨グレードがAからBへと引き下げられた。これは、過去30年間にわたるマンモグラフィーの検診データで、治療不要の非湿潤がんの発見率が上がった(過剰診断)が、進行性のがんの発見率はほとんど変化がないことが背景にある。

米国では、高濃度乳腺の女性に対しマンモグラフィーの乳腺濃度を知らせる法律を制定する州が相次ぎ、超音波診断に対する保険料の法律を制定する州も増えている。日本ではマンモグラフィーで陽性の場合、次の検査で超音波を受けるが、厚生労働省では、がん戦略研究J-STARTにおいて、乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験を行っている。

国内の乳がん治療で有名な、さがらブレストピアヘルスケアグループ乳腺科部長、NPO法人乳がん画像診断ネットワーク理事長の戸﨑光宏氏は、GEヘルスケア・ジャパン主催のセミナーで、超音波を乳がん検診に用いる際の課題として、施行者(検査技師など)依存性の少ない「乳腺自動超音波装置」を挙げた。台湾の旧U-System社が開発し、シーメンスが販売した1代目の「ABVS」、その後GEヘルスケアがU-System社を買収し販売する2代目の「ABUS」の、困難な精度管理を自動化するアイデアに期待を寄せている。

さらに戸崎氏は、マンモグラフィーの新技術トモシンセシス(3D)について、報酬の上乗せはないものの、海外のデータが良いため(国内データは無い)、14年のC1グレードからいずれBグレードとなるとの見通しを示した。

シーメンスは相良病院と連携協定

シーメンス・ジャパン(株)(東京都品川区)は、(社医)博愛会 相良病院(鹿児島市)と、乳がんをはじめとする女性医療に対して、早期発見、診断、治療、アフターケアまでを網羅する最適な製品・包括的なソリューションを提供するパートナーシップの基本協定を15年4月に締結した。

シーメンスは、磁気共鳴診断装置、X線CT装置、分子イメージング、画像診断ITソリューション/PACS、アクセサリーやオプションサービス、血管撮影装置、一般X線撮影装置/X線透視撮影装置、超音波画像診断装置、マンモグラフィー装置、検体検査/診断薬に及ぶ包括的なポートフォリオを誇る。これを相良病院の新病院に活用し、この新病院で創り上げられる女性医療におけるロールモデルを『国内外すべての女性の健康増進に役立つ』と考え、グローバル市場に展開する。

日立が画期的な乳がん計測技術を開発

(株)日立製作所(東京都千代田区)は5月24日、簡便・無痛・高精度な乳がん検診を実現する超音波計測技術を開発したと発表した。4月からは北海道大学と実用化に向けた共同研究を開始しており、20年までに製品化のめどをつける。

日本人の乳がんの特徴として45~49歳をピークに、35~54歳までの患者が多く、また、この10年で倍増している。

マンモグラフィーは、高年層に高感度で、微小石灰化の可視化が可能であるが、若年層では低感度で、微量のX線被曝、圧迫痛を伴う。超音波エコーはこの課題を解決するが、精度が検査者に依存する、悪性と良性の区別が困難、腫瘍の検出補助機能なし、微小石灰化の可視化が困難という課題がある。

日立は、この両機種の診断・検査を1台で可能とするマルチモード超音波CTを開発した。受診者は、水を満たした検査容器に乳房を入れるだけで、痛みも伴わない。マルチモード超音波CTは、360℃の方向から超音波を照射・取得、上下動させて自動スキャンすることで、腫瘍の構造・硬さ、腫瘍表面の粗さ、腫瘍の粘性、微小石灰化の可視化が可能である。検査者の熟練度も不要で、短時間での検査が実現する。日立では、これ1つで乳がん検査が完了する簡便さで、乳がん検診を身近なものにし、受診率の向上に貢献したいとしている。

電子デバイス産業新聞 大阪支局長 倉知良次

投信1編集部からのコメント

働き方改革の中での女性の役割を考える際、女性の健康をさらに担保するのは必須となるでしょう。乳がんに対する日本のスタンスの見直しの必要性もありますが、当記事はGE、シーメンス、日立などの医療機器メーカーの現在の開発や対応状況がよくわかる内容となっています。

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