この記事の読みどころ

  • 東京新聞(7月25日朝刊)に、トヨタ自動車(7203)が2022年にも全固体電池を搭載した電気自動車(EV)を国内販売するという記事が掲載されました。トヨタ自動車では、それに先立つ2019年には現在のリチウムイオン電池を搭載したEVを中国で生産販売するようです。
  • 全固体電池はリチウムイオン電池の電解質を固体化し電解液を使わない構造で、大容量化および充電時間や安全面で大きなメリットがあります。実用化されればEV普及への大きな推進力になり得るので、非常に期待を持たれています。
  • 2020年代に実用化が期待される全固体電池に続き、さらに性能アップが見込まれる金属空気電池が2030年代に実用化されるとの見方が有力です。

電気自動車(EV)が世界的拡大へ

中国や欧州の自動車市場では、2016年以降、エコカーの代表とも言うべき電気自動車(以下、EV)、プラグイン・ハイブリッド(以下、PHV)への関心が急速に高まっています。

欧米の大手自動車メーカーを中心にEV、PHV拡大戦略ともいうべきアナウンスが相次いぎ、これに呼応するかのように、中国政府を始めドイツ、フランス、米国10州などで普及拡大への具体的アクションが始まっている状況です。

EVの動力はモーターですが、動力源としてはリチウムイオン電池が現時点では最も有力視されています。リチウムイオン電池は、電解液(電解質を含む)、正極、負極、セパレーターの4つの部材から構成されており、數十分の充電で航続距離は300~400キロメートルといったところです。

このリチウムイオン電池による航続距離を2~3倍に伸ばすことができると期待されているのが全固体電池なのです。

EV、PHVで出遅れる日本勢

7月25日付け東京新聞朝刊に、「エコカー競争 優位目指す」というタイトルで、トヨタ自動車が全固体電池を搭載したEVを2022年に国内販売するという記事が掲載されましたが、現在、このタイプの電池は世界を見ても実用化されていません。

全固体電池はリチウムイオン電池の構造と似ていますが、液体の電解液がなく電解質がセラミックのような固体になっているのが特徴です。また、セパレーターが不要となり、液漏れや異常発火のリスクも少なく、航続距離や充電面でもはるかに優れたものになります。

記事で取り上げられたトヨタ自動車は、2008年に「電池研究部」を立ち上げ、一貫して全固体電池の開発を続けてきています。2016年12月には「EV事業企画室」が設置されており、両部署の協力体制でいよいよ全固体電池搭載EVの投入に取り組むということなのでしょうか。

これまで、日産自動車(7201)を除く日本の大手自動車メーカーは、EVやPHVなどのエコカー戦略で出遅れていると言われてきました。ハイブリッド(HV)、燃料電池車(FCV)では先行したものの、HVが米国、中国でエコカーに認定されなかったことがその背景にあります。

トヨタ自動車としてもエコカー戦略で後れを取ることによる経営的ダメージを十分認識しているはずで、この記事通りに世界に先駆けて全固体電池を使ったEVを発売できれば、このハンディキャップを一気に乗り越える可能性が高まると思われます。

次世代電池の開発状況