大阪人は定期が嫌い? 大阪市営地下鉄の定期利用率が低い理由とは?

大阪市営地下鉄を除く大都市路線の定期券比率は48%超え

会社に通勤・通学している多くの方が、毎朝、満員電車に揺られて通勤していることと思います。そして、通勤・通学に使う切符はもちろん「通勤定期券、通学定期券」。これが一般的な考え方でしょう。

実際、国土交通省が発表している「平成26年度鉄道統計年報」のデータから、路線別の定期比率を計算してみると、東京、名古屋の大都市圏では、定期(通勤・通学両方)の利用比率は60%を超えている路線が約半数、空港専用線や観光主体の路線を除いては、全ての路線で48%以上の定期が利用されています。

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つまり、この数字から大都市圏の鉄道利用者の半分以上は通勤・通学客が占めていることがわかります。

ところが、大都市圏の中でも大阪市営地下鉄だけは様子が異なります。大阪の大動脈路線である御堂筋線でも、定期利用の比率が、わずか34.4%しかないのです。

大阪人は、なぜ、定期を利用しないのでしょうか?

47.5%あった定期比率が33.1%まで減少した理由とは?

大阪市が毎年発表している「大阪市営交通機関の運輸状況」の表を年度別に眺めているとおもしろいことに気づきます。

平成19(2007)年度には、大阪市営地下鉄全体で47.5%あった定期の利用比率が、平成27(2015)年度には、33.1%まで減少したのです。

これは、交通ICカード「PiTaPa(ピタパ)」のサービス「マイスタイル」が、平成20(2008)年3月1日から開始になった影響が大きいです。

平成20年度は、マイスタイル元年で、地下鉄利用者の認知度もまだ上がっていない時期にも関わらず、定期利用の比率は、前年度の47.5%から43.9%まで減少します。その後もずるずると下がり続け、平成27年度には、33.1%まで下がります。

他の大阪圏の私鉄のほとんどで定期の利用率が50%を超える中、異常に少ない数値と言えるでしょう。

通勤・通学客の多くが定期券から「PiTaPaマイスタイル」に乗り換えた理由とは?

通常の定期券は、購入した2つの駅の区間内であれば、何度でも乗車できます。たとえば、私が住んでいる最寄駅、地下鉄御堂筋線・昭和町駅から梅田駅の定期券ならば、その区間内である天王寺駅からなんば駅なども追加料金無しで利用できます。ただし、購入した区間を超えて利用した場合は、乗り越し料金を支払わなければなりません。

対して、マイスタイルでは、登録すると1ヶ月の支払額に上限が設定され、事前に登録した2つの登録駅のいずれかで乗車、または下車した場合には追加料金無しで乗車できます。

つまり、昭和町駅と梅田駅を登録した場合は、昭和町駅か梅田駅で乗車または下車すれば、マイスタイルの範囲内になるのです。

*特例で梅田駅は東梅田駅、西梅田駅と同駅扱いをしますので、梅田駅を登録駅にした場合は、東梅田駅、西梅田駅も同時に登録駅となります。

「定期券の方が、使いやすいし得なのではないか?」と思うかもしれませんが、マイスタイルの凄さは、2つの登録駅から選択した区間の”両方に含まれる駅”がマイスタイルの対象になるということです。

たとえば昭和町駅と梅田駅(3区)を登録駅にした場合であれば、昭和町駅から3区の駅と梅田駅から3区の駅の両方に含まれる駅(図の緑の駅の範囲)が「対象駅」として全てマイスタイルの範囲になるのです。

マイスタイルのシミュレーション例(登録駅を昭和町駅と梅田駅にした場合) 出所:大阪市交通局ホームページ

通常の通勤で利用する昭和町駅~梅田駅はもちろんのこと、定期券では範囲にならない、昭和町駅~鶴見緑地駅、梅田駅~森ノ宮駅などもマイスタイルの適用範囲となります。

もし、登録駅以外で乗車と下車をしたいという場合も、面倒ではありますが、登録駅で途中下車すれば、マイスタイルの適用範囲となるので、活用範囲はかなり広がります。

しかも料金は、3区の場合、月に最大でも9,410円(6ヶ月定期券の6分の1の料金)になります。万が一、夏休みなどで利用日数が減った場合も、乗った分だけの支払いになりますし、乗車した料金分はPiTaPa割引料金で利用できるので、損をすることが無い仕組みになっています。

最大限に利用しても6ヶ月定期券の1ヶ月分と同額で、利用範囲は定期券より広いとなれば、定期券からマイスタイルへの置き換えが進むのも納得がいきます。

定期券からマイスタイルにすると損する場合もある?

登録駅で乗車するか下車することがほとんどの方は、迷わずマイスタイルを選ぶと良いでしょう。一方で、マイスタイルの煩わしい点は、登録駅で乗車か下車しないと、マイスタイル料金にならない、つまり、支払い上限の対象とならないことです。

2つの登録駅以外の駅同士で乗り降りする機会が多い場合、たとえば、私の場合だと、天王寺駅~なんば駅、梅田駅~なんば駅などの利用が多いのですが、その場合は、定期券を購入した方がマイスタイルよりお得になることもありますので注意しましょう。

というのも、定期券では区間内の各駅での乗り降りも定期券運賃の対象となりますが、マイスタイルにはその概念がありません。つまり、マイスタイルの登録駅以外で乗り降りすると、その区間の料金がそのまま発生します。

先ほどの例で言えば、昭和町駅と梅田駅を登録駅にしたマイスタイルで、その区間内の天王寺駅~なんば駅を乗車すると、登録駅間にはありますが、対象駅同士の乗り降りになるので、マイスタイル適用外となり、定期券では請求されない運賃がかかってしまうのです(通常のPiTaPa運賃になります)。もちろん、天王寺駅から一旦、昭和町駅に戻って、なんば駅に行けば、登録駅と対象駅で乗車、下車をすることになるのでマイスタイル適用となりますが面倒ですよね。

このように、登録駅のいずれも通らない利用が多い場合は損をしてしまう可能性があります。ただし、この点に注意すれば、マイスタイルは大阪市営地下鉄の通勤利用者にとっては、すごくお得な仕組みになるのです。

定期 vs.マイスタイル vs.プレミアム

さらに、大阪市交通局は、2016年6月1日に、PiTaPaプレミアムという新サービスを投入しました。これは、1つの登録駅を中心としたエリア内の駅であれば、乗り降りが自由になる画期的なサービスです。

マイスタイル同様、利用が少ない月の料金は、乗った分だけの支払いになりますが、上限額はマイスタイルよりも若干高めになります。

たとえば、心斎橋駅を登録駅にして、中エリア3区相当を選択すると、月の上限額は10,760円とマイスタイル(3区)より1,350円高くなりますが、御堂筋線であれば、その上限額で、昭和町駅から西中島南方駅間の乗り降りが自由になります。

プレミアムのシミュレーション例(心斎橋駅を登録駅にした場合) 出所:大阪市交通局ホームページ

このように、大阪市営地下鉄で通勤する場合は、3種類の乗車券から自分にとって最適なものを選ぶとことになります。

【定期券がオススメな方】
乗降駅だけでなく、その2つの駅間での乗り降りも多いという方は、迷わず定期券にしましょう。梅田駅、なんば駅、心斎橋駅、天王寺駅など主要な駅が揃っている御堂筋線沿線に住まいと職場がある場合は、定期券がお得なことが多いです。

【PiTaPaマイスタイルがオススメな方】
地下鉄の利用が、ほとんど住まいの最寄駅という場合は、マイスタイルがオススメです。2つの登録駅での利用がほとんどの場合は、マイスタイルの料金だけで十分となります。

【PiTaPaプレミアムがオススメな方】
プレミアムのエリア内を地下鉄に乗って営業する機会の多い方は、プレミアムがお得になる場合があります。目安としては、マイスタイルの登録駅以外の乗り降りが月に10回以上あり、かつ、マイスタイル内の乗り降りがほとんど、という場合がそうです。

大阪市営地下鉄で通勤している方は、一度、月の地下鉄の乗り降りを記録してみると良いでしょう。そうすることで、自分にピッタリのプランが見つかります。

「知らない」は損のはじまり

大阪市営地下鉄の通勤・通学に使う割引の仕組みの数々、いかがでしたでしょうか?

交通ICカード「PiTaPa」を普及させるために始まったマイスタイルですが、その思惑通り、PiTaPaマイスタイル利用者は増加しました。

その結果、通勤・通学に使う定期券では、関東圏などに比べると大阪市営地下鉄では使われていないという実態があります。実は、私の子供たちが地下鉄を使って通学しているのですが、私がチェックしていないと、マイスタイルを使わずに、通学定期券を購入している始末。「知らない」ことがどれだけ損をしているか、身をもって体験しました。

大阪市交通局のホームページではシミュレーションもできます。ご利用の方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

参考サイト:

>>大阪市交通局「利用額割引シミュレーション」

>>大阪市交通局「利用額割引 マイスタイル(学生)、フリースタイル(学生)を登録されるお客さまへ」

中嶋 茂夫

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中嶋 茂夫

鉄道ジャーナリスト

1967年生まれ。大阪市出身。京都工芸繊維大学繊維学部高分子学科卒業後、ニューヨークのファンション工科大学(Fashion Institue of Technology)Apparel Production Management学科卒業。

2010年「山手線と東海道新幹線では、どちらが儲かっているのか?(洋泉社)」の発刊をきっかけに、「鉄道ジャーナリスト」としての活動を開始。地域観光の活性化を応援するため、豪華クルーズトレインやグルメ列車、観光列車に実際に乗車して、それぞれの列車の魅力を積極的に伝えている。