葬儀の平均費用は約140万円。葬式は贅沢品なのか

お盆も過ぎ夏も終盤。お彼岸を迎えようかという季節になりました。「終活」という言葉も生まれましたが、今回は葬儀について経済産業省や厚生労働省など各種統計・データをもとに見ていきたいと思います。

統計から見える葬儀平均費用は約140万円

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によれば、葬儀業の2016年の売上高は5,996億円で、その前提となる取扱件数は42万件となっています。売上高を取扱件数で割ると(ここでは葬儀の平均費用と定義)142.6万円。生前にどのような貯蓄をしているかや互助会への参加有無などにもよりますが、葬儀にも相応の費用が必要となってくるのが分かります。

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この葬儀費用の高さも「終活」が注目される背景といえそうですが、葬儀費用の動向についてはどうでしょうか。生花を葬儀などに提供しているビューティ花壇(3041)の2016年6月期の決算資料にその動向が指摘されています。この資料によれば、100万から200万円が葬儀費用のボリュームゾーンであることがわかります。また「50万円未満の低額クラスが増加、200~400万円のやや高額クラスが減少」した一方で「100~200万円の中間クラスは大きな変動なし」とされています。葬儀費用が140万円というのを目にすると準備が必要だなとお考えの方も多いかと思いますが、統計的には平均的な水準といえます。

とはいえ、経済産業省の同資料の過去データを2000年から遡ると、そのピークは2006年の152.1万円。10年後の2016年が142.6万円であることを考えれば、10年で約6%もその費用は減少していることとなります。ビューティ花壇の決算資料で指摘されていたような低額の葬儀のボリュームが増加しつつあるという費用構成の変化が影響しているのでしょうか。

年間の死亡者数は約129万人

では、近年の死者数はどのように推移しているのでしょうか。

厚生労働省の「人口動態統計」をみると、2015年の死亡数は約129万人。その数は年ごとに増加傾向にあります。長期的に見ても、20年前の1995年に92.2万人、10年前の2005年に108.4万人であったことを考えれば、高齢者層の増加とともに、その数が増えていることが分かります。

今後、過去データのトレンドと人口動態を考慮するならば、火葬場や斎場は公共及び民間も含めて施設などの対応が必要となってくるでしょう。

ただ、葬儀関連施設が必要だという認識があったとしても、その立地選定などにも議論は多そうです。というのも、年間葬儀取扱件数の都道府県別の内訳をみますと、約10%を占める東京都が第1位。次いで多いのが大阪府の7%、第3位が愛知県の5%と続きます。それ以降は、第4位が神奈川県、第5位が埼玉県と、関東地方の県が続きます。都心の場合、住宅地やその密集地では場所の確保に困難さが付きまとうことがあるでしょう。

葬儀産業の動向

今後の死亡数が増加していくことを考えれば葬儀のニーズが増加していくことは想像しやすい一方、葬儀業界は中小から零細企業を含めて統合や再編が進んでいない業界といえます。

葬儀の業界最大手でいえば、公益社を基盤とする燦ホールディングス(9628)の2017年3月期の売上高は187億円、営業利益は20億円。冒頭の産業規模などと比較するとトップ企業とは言え、業界の寡占状態はほとんど進んでいないともいえるでしょう。

また、葬儀業界には、燦HD(さんホールディングス)以外にも、ティア(2485)、平安レイサービス(2344)などの既に上場している葬儀社や互助会系に加え、これまでには阪急阪神東宝グループといった電鉄系、小売系ではイオンの参入などもありました。異業種からも注目されている産業ともいえます。

異業種からの参入があるのは、葬儀と日常との接点をどうとらえるのかといった要素もありそうです。

たとえば、「いい葬儀」などのライフエンディング向けメディアを運営する鎌倉新書(6184)は葬儀社と一般ユーザーを結びつける役割をしています。就活する当事者を含め、突然に葬儀をしなければならなくなった近親者が、誰に頼めばよいのかわからない、どうしたらよいかわからないといったときに、ネットで検索するユーザーと葬儀社などを結びつける役割を果たしているといえます。

まとめにかえて

高齢化社会の進展にともない、すでに議論されている医療費などの増加と財源負担の議論とともに、国民の「終活」がどう円滑に進めることができるのかのインフラ準備もますます必要となってきそうです。

※企業名のあとのカッコ内の数字は銘柄(証券)コードです。

投信1編集部

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