日本では昔から季節と植物が暮らしの中で深い関わりを持ってきました。七草がゆで知られる「春の七草」と同様に、秋にはしっとりと落ち着いた雰囲気の「秋の七草」があります。

秋の七草は可憐な花が咲く植物が多く、園芸種として改良されたものは庭に植えて育てることも可能です。

今回は秋の七草について、その由来や七草の魅力を紹介します。

秋の七草とは?

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秋の七草とは、ハギ・キキョウ・クズ・フジバカマ・オミナエシ・ススキ・ナデシコの7品種。春の七草のように食用ではなく主に観賞用として、またそのいくつかは薬草として利用されていました。

秋の野山に咲く山野草で、ナチュラルな草姿や優しい色合いが秋の風情タップリ。暑い夏を乗り越えて疲れが出始めた体や心を、穏やかに癒やしてくれます。

秋の七草の由来

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秋の七草は万葉集にある2つの和歌を基にしています。詠み手は奈良時代初期に活躍した歌人として名高い山上憶良(やまのうえのおくら)。

「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり)かき数(かぞ)ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花(おばな) 葛花(くずはな) 撫子(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお)の花」

最初の句は秋の野に咲いている草花は7種類あったこと、次の句は7つの花の名前を挙げています。朝貌(あさがお)はさまざまな説がありますが、よく似ているキキョウではないかというのが通説です。

日本の秋を彩る秋の七草

〈秋の七草その1〉ハギ

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7~10月にかけて、赤紫やピンク、白の小花を咲かせるハギ。茎を長く伸ばしてしだれながら、風に揺れる様子が優雅です。

根に共生している根粒菌が養分を作り出すので、やせ地でも旺盛に生育します。※参考価格:400~600円前後(3号ポット苗)

〈秋の七草その2〉キキョウ

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キキョウは星形に咲く青紫の花が涼やか。凛として美しい花は家紋のモチーフとしてもよく使われています。

風船のように丸くふくらむツボミもキュートです。ピンクや白の花が咲く園芸種も出回っています。※参考価格:400~700円前後(3号ポット苗)

〈秋の七草その3〉クズ

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マメ科のツル性植物で美しい穂花が魅力のクズ。でんぷんを多く含む根を粉にして、とろりとした食感を味わう「葛湯」で有名な植物です。

また「葛根湯」という風邪薬もクズから作られています。放置すると数メートルまで伸びるので、剪定しながら育てましょう。※参考価格:500~1000円(3号ポット苗)