2024年にはじまる「新NISA」。

年間投資枠も拡大し、非課税保有期間も無期限化、そして口座開設期間の恒久化と、これまでの一般NISAやつみたてNISAと比較しても格段に使いやすさとメリットが拡大しました。

そうした背景もあり多くの人が注目をしている新NISAですが、まだ口座開設もしていない人は急いだほうがいいのかと迷っている方もいるのではないでしょうか。

今回は、資産形成で新NISAに興味はあるけれども、今、あせってはじめる必要はないと考えるTさんに話を聞きました。

Tさんは愛知県の専門商社で勤務する44歳です。年収は600万円程度で独身です。独り身なので、老後のことも考え、資産形成をはじめています。

1. Tさんの資産ポートフォリオはどうなっているのか

現在の資産運用をしているポートフォリオは、勤務先の企業型確定拠出年金で米国株のアクティブファンドに掛け金の100%を振り向けているほか、ドル建の債券を中心に運用をしているドル建終身保険、また世界株式のアクティブファンドで運用をしている変額保険が中心です。

預貯金に関しては、あまり意識して貯めてきてはいません。

どちらかといえば、投資を通じて外貨建て資産を中心に資産を積み上げているとのこと。

2. Tさんはなぜ企業型確定拠出はインデックスファンドに投資をしないのか

企業型確定拠出年金やiDeCoではインデックスファンドのラインナップが多い中で、なぜTさんはインデックスファンドを購入しないのでしょうか。

「インデックスファンドの信託報酬が安いのは知っています。ただ、自分は資産運用の重要性に気づいたのが遅かったので、リスクを取ってでも60歳の定年までに大きく増やしたいと考えています」

「企業型確定拠出年金の運用額自体はそれほど大きくないのでリスクをとってもいいと思っています。投資信託の基準価額がゼロになることはないでしょうからね」

「世界株の投資信託というのも選択肢にありますが、運用金額の少なさからそこは地域分散せずにリスクを取って米国株に集中投資をしています」

3. Tさんは資産運用を急ぐのに、なぜ保険を買うのか

資産形成を急ぐのであれば、なぜ保険を買うのかと疑問に思われるかもしれません。

それこそ、つみたてNISAなどで投資信託への投資額を増やす方がよかったのではないかと聞いてみました。

理由は2つあるといいます。

3.1 ドル建て終身保険は債券投資

「はじめの理由は、資産のポートフォリオを分散したかったからです。運用するにあたって、株式の投資信託ばかりだと、それこそ株式だけになってしまいますから。ドル建終身保険は債券を保険会社が運用してくれるので、自分で米国債などを購入できなくても結果として債券運用していることになります。金利が高い時に購入できたのとおりからの円安で予定していた以上に円建てで考えると資産が大きくなりました」

3.2 独身なので、万が一の時に家族に迷惑をかけたくない

「もう一つの理由は、比較的若いときに自分に万が一のことがあったときに、自分は独身なので親や兄弟といった家族にお金を残せますし、それで葬儀もできますからね」

4. Tさんはなぜ新NISAを急いで始めようとしていない3つの理由

これまでのNISAと違って、新たにメリットが増えた新NISA。

Tさんはなぜあせってはじめようとしていないのかについて聞いてみました。

「つみたて投資の重要性は理解しています。企業型確定拠出年金の掛け金や自分でも変額保険の保険料を毎月支払っていますから、それはわかっています。ただ、いろいろと引っかかるポイントがあります。」

新NISAをすぐに始めない理由が3つあるといいます。

4.1 新NISAを急いで始めない理由:その1

「資産形成は自分の給与からつみたてている投資なので、私の場合には、企業型確定拠出年金のマッチング拠出を増やすのか、新NISAでつみたて投資をするのかの選択肢があります。所得税控除の効果などを考えると、企業型確定拠出年金の方が現金の流出が防げるので、確実な運用ともいえます。一方、新NISAの場合には、利益を確定してはじめてメリットがありますからね。簿価に対して低い値段で売っても意味がないですから、そこは運用してみてはじめて結果が出るということですよね。私からすると不確実ですね。」

4.2 新NISAを急いで始めない理由:その2

「新NISAの場合には、これまでのNISAと違って、口座開設期間が恒久化されたので、そもそも焦る必要はないと思います。つみたて投資枠もつみたて投資が前提となっているので、老後も運用するということも考えると、いつ始めてもいいわけです。ただ、個人的には成長投資枠に興味があります。インデックスファンドを買うだけなら企業型確定拠出年金でマッチングの枠いっぱいまで投資して税メリットを受けつつ、企業型確定拠出年金で買えないような金融商品を成長投資枠で購入しますよ。ただ、成長投資枠で何に投資をしてよいかはわかりませんが」

4.3 新NISAを急いで始めない理由:その3

「新NISAが盛り上がっているのは、利益が出ることが前提になっているからだと思うんですよね。もちろん、インデックスファンドの長期投資をしていると超過収益を得られてきたというのは認識しているのですが、不慮の出来事で急遽お金がいるとなったときに、たまたま株式市場が低迷していて、含み損になっていたら新NISAの意味がないですよね。預貯金に余裕のある方であれば、新NISAを触らなくてもいいかと思うのですが、自分の場合は、新NISA以外の手段が欲しいなと思ってしまいます。私の場合はそれが保険なんです。保険が嫌いな人が多いのは知っていますが、自分の目的にはあっているかなと思います」

みなさんには、Tさんの意見はどのように感じたのでしょうか。

LIMO編集部