3.  長期加入者特例の対象者とは

長期加入者特例は、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給を受けている人のうち、厚生年金の被保険者期間が44年以上ある方が対象です。

ただし、以下の方は対象外になります。

  • 日本年金機構の管理する厚生年金保険、公務員共済組合、私学共済等を合計して44年以上になる場合
  • 厚生年金保険に加入して被保険者となっている場合

特に、1つの年金で44年以上の要件をクリアする必要がある点には注意が必要です。

複数の被保険者期間を合計することはできません。また、現在も厚生年金の被保険者である場合は対象外となるため注意しましょう。

男性の場合、すでに報酬比例部分の支給開始年齢は64歳となり、いずれ廃止されます。女性は2030年度を予定されているため、要件にあてはまれば上乗せの金額が受け取れるということになります。

4. 厚生年金はみんないくら受け取っている?

やはり、年金は多いに越したことがないでしょう。そこで気になるのはみんなの平均受給額です。

厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、厚生年金の平均月額を見ていきましょう。

厚生年金の平均月額

厚生年金の男女別の平均月額がわかるグラフ

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1  厚生年金の平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:14万3973円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万4878円

※国民年金部分を含む

全体は14万3973円でしたが、男女で月約6万円の差が見られます。

実際には、下記の通り個人差があるのが現状です。

4.2 【厚生年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)

  • 1万円未満:6万1358人
  • 1万円以上~2万円未満:1万5728人
  • 2万円以上~3万円未満:5万4921人
  • 3万円以上~4万円未満:9万5172人
  • 4万円以上~5万円未満:10万2402人
  • 5万円以上~6万円未満:15万2773人
  • 6万円以上~7万円未満:41万1749人
  • 7万円以上~8万円未満:68万7473人
  • 8万円以上~9万円未満:92万8511人
  • 9万円以上~10万円未満:112万3972人
  • 10万円以上~11万円未満:112万7493人
  • 11万円以上~12万円未満:103万4254人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5662人
  • 13万円以上~14万円未満:92万5503人
  • 14万円以上~15万円未満:95万3156人
  • 15万円以上~16万円未満:99万4044人
  • 16万円以上~17万円未満:104万730人
  • 17万円以上~18万円未満:105万8410人
  • 18万円以上~19万円未満:101万554人
  • 19万円以上~20万円未満:90万9998人
  • 20万円以上~21万円未満:75万9086人
  • 21万円以上~22万円未満:56万9206人
  • 22万円以上~23万円未満:38万3582人
  • 23万円以上~24万円未満:25万3529人
  • 24万円以上~25万円未満:16万6281人
  • 25万円以上~26万円未満:10万2291人
  • 26万円以上~27万円未満:5万9766人
  • 27万円以上~28万円未満:3万3463人
  • 28万円以上~29万円未満:1万5793人
  • 29万円以上~30万円未満:7351人
  • 30万円以上~:1万2490人

※国民年金部分を含む

5. 「国民年金(基礎年金)のみ」では月額平均でいくらか

中には、厚生年金に加入していない人もいるでしょう。最後に国民年金の平均月額も見ておきます。

国民年金の平均月額

国民年金の男女別の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

5.1 国民年金(老齢基礎年金)の受給額

〈全体〉平均年金月額:5万6316円

  • 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万4426円

5.2 【国民年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)

  • 1万円未満:6万5660人
  • 1万円以上~2万円未満:27万4330人
  • 2万円以上~3万円未満:88万1065人
  • 3万円以上~4万円未満:266万1520人
  • 4万円以上~5万円未満:465万5774人
  • 5万円以上~6万円未満:824万6178人
  • 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
  • 7万円以上~:178万3609人

国民年金のみでは5万6316円となりました。厚生年金に加入していない自営業の方などは、保険料が低い変わりに受給額も低い傾向にあります。

iDeCoや国民年金基金、個人年金保険などで備えている方が多いでしょう。

6. 年金に頼らない老後計画を

厚生年金の制度は非常に複雑で、将来どれほどの年金を受給できるかわかりにくいかもしれません。

ただし、自身で将来の年金がどれくらいもらうことが出来るのかを把握しておくことは非常に大事なことです。ねんきん定期便やねんきんネット等で目安額がわかりますが、年金事務所等で個別に相談すると、長期加入者特例や加給年金等の上乗せ部分も知ることができるでしょう。

実際に受け取ることが出来る金額などがわかれば、将来の必要なお金が見えてきて、もしかしたら日々の貯蓄や年金だけでは不足することも考えられますね。

その場合は、年金や貯蓄以外にも老後の資産形成の準備が必要になってきます。早い段階で将来のことを考えておけば、慌てることも少なくなるのではないでしょうか。

コツコツ貯蓄していたものを、今年から開始した新NISAを活用して運用していくのもよいでしょう。ただし、運用に関しては預貯金と異なり元本割れのリスクもあります。まずはご自身で情報収集を行い自分に合った運用方法を探してみてはいかがでしょうか。

参考資料

奥田 楓也